ポルシェ創業者がデザインした「“RR”レイアウトのメルセデス・ベンツ」があった!? 生産台数1507台の超希少車「170H」がオランダで販売中
ポルシェ創業者がデザインした軽量小型車
“RR”車という、リアにエンジンを搭載した後輪駆動車といえば、フォルクスワーゲン“ビートル”やポルシェ「911」、日野「コンテッサ」、スバル「サンバー」などが思い浮ぶことでしょう。

そんな“RR”車が、実はメルセデス・ベンツにも存在していたというのは、あまり知られていません。しかもそのモデル、ポルシェの創業者であるフェルディナント・ポルシェの影響によって誕生したものといわれています。
かつてダイムラー・ベンツ社で主任エンジニアを務めていたフェルディナント・ポルシェ。同社在籍中、彼はさまざまな車両を設計し、特にレーシングカーの世界で大きな成功を収めていました。なかでもメルセデス・ベンツ「SSK」は、最も成功した例といえるでしょう。
それと同じ時期に、フェルディナント・ポルシェは一般大衆が手の届く小型軽量車の構想を温めていたようです。しかし、フェルディナント・ポルシェの提案を受けたダイムラー・ベンツの取締役会は同意することなく、やがて彼は1929年に会社を去ることになりました。
フェルディナント・ポルシェはダイムラー・ベンツを退社する前、彼が理想としていた大衆車のプロトタイプ開発に取り組んでいました。そして、彼の退社後、ダイムラー・ベンツの取締役会は心変わりをしたようで、彼のデザインを掘り起こし、ダイムラー・ベンツの新チーフエンジニアとなったハンス・ニーベルに引き継いでいます。
そうした経緯の末に誕生したのが、メルセデス・ベンツ「130H」。1934年にデビューしたモデルですが、実際のところ“道半ば”での市場投入となったようです。
ハンドリングはメルセデス・ベンツに期待するほど良好ではなく、メルセデス・ベンツの多く顧客にとっては予想以上にコンパクトで、4気筒エンジンがリアに配置されていることによるアンバランスな重心位置も問題だったといわれています。
●フェラーリの限定車に匹敵する生産台数で希少価値は高い!?
次に市場へ投入されたのは、後輪駆動の小型車であるメルセデス・ベンツ「170H」。「130H」の後継モデルで、1935年から1939年にかけて生産されました。
出力向上、ハンドリング改善、スタイリング更新、空力性能の改良など、当時としては先進的なエンジニアリングを特徴とし、4輪独立懸架サスペンションとオーバードライブつきの4速セミオートマチックトランスミッションを採用。後輪駆動の「170H」は、同じく38psを発生する1697ccの直列4気筒エンジンを搭載した前輪駆動車「170V」と並行して販売されました。
なお「170H」のモデル名にある“H”とは、ドイツ語で“後部エンジン”を意味するHeckmotorの頭文字からとられたもの。前輪駆動車「170V」のモデル名に含まれる“V”とは、ドイツ語で“前部エンジン”を意味するVorderseite motorに由来しているのだとか。
そんな「170H」は、当時としては高性能な燃費性能13km/L以上、最高速度116km/hを誇ると謳われていましたが、高価格な上に、メルセデス・ベンツの顧客が従来型の前輪駆動車のスタイリングを好んだことから販売は伸び悩んだそうです。
ちなみに「170H」は、1935年から1939年の間にわずか1507台が製造されたにすぎません。フェラーリ「F40」とほぼ同じ台数ですね。
現在ではほぼ忘れられた存在であり、第二次世界大戦を生き延びた良好な個体を見つけることは簡単ではないはずの「170H」ですが、先ごろオランダで販売されている個体を発見しました。
1937年式の「170H」は、レッドのボディにブラックのフェンダー、クロームのアクセント、ホワイトウォールタイヤ、そして特徴的なセンターヘッドライトを備えています。レストア済みで、各種証明書類とスペアパーツも付属しています。
6万4900ユーロ(約1036万円)というプライスタグは、自動車史の貴重な一片を所有する稀有な機会と考えれば安いかもしれません。今、1000万円で買えるメルセデス・ベンツよりも圧倒的に個性的ですしね。将来的には、今以上に評価される日が来るかもしれません。
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