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“未来のくらしを創造する研究所“の正体とは? “次世代”をデザインするパナソニック「FUTURE LIFE FACTORY」の存在理由【Behind the Product #23】

必ずしも「商品を生み出すことがゴール」ではない

 日々、さまざまな製品を生み出しているパナソニックには、「FUTURE LIFE FACTORY(以下、FLF)」という“謎の開発チーム”が存在します。

東京・神宮前にある「FUTURE LIFE FACTORY」のラボ
東京・神宮前にある「FUTURE LIFE FACTORY」のラボ

 ホームページによると、FLFは「未来のくらしにおける新たな軸を未来実装するデザインスタジオ」とのこと。果たしてどんな部署なのでしょう? 実際にラボへと潜入してみました。

 パナソニックの“謎の開発チーム”であるFLFのラボは、東京都渋谷区の神宮前にあります。パナソニックという大企業が展開するデザイン本部のチームだけに、大きなビルの中かと思いきや、意外にも小さなビルの地下1階にありました。

 ラボの中は、未知のプロダクツであふれていました。なかでも目を惹いたのが、レトロなデザインのレコードプレーヤー。FLFのチームリーダーである中田裕士さんによると

「これは元々、弊社の記念館にある倉庫でレコードプレーヤー部分だけが欠損した状態で眠っていました。それを再生したというか改造したのです」

 よく見ると、確かにプレーヤーには「SUPER PHONIC STEREO SYSTEM」という文字と、往年のナショナルのロゴがいっしょに記されています。ラボの空間に満ちている不思議な音律の音楽は、このプレーヤー「リミックス」が奏でているようです。

「レコード盤と同等サイズの丸い紙に絵を描き、それを載せると、描かれた絵によって異なる音を奏でる仕組みになっています。本来は、レコード針がある場所に内蔵したカラーセンサーが絵の色を読み取り、一定のアルゴリズムに従って音へと変換して音楽を奏でるようになっています」(中田さん)

 過去にFLFが開催したワークショップでは、子どもたちから大人気だったといいます。楽譜を読めなくても、紙に色を塗るだけでそれが音楽になるのですから、人気を集めるのもうなずけます。自らが描いた絵がどんな音楽になるのか? 子どもであればなおさらワクワクするはずです。

 さまざまなプロダクトをチェックしながらラボの中を進んでいくと、無数の小さなプラスチック製パネルが上下に動く、ブラインドのようなものがありました。

「こちらは、熱に反応して自動で開閉するルーバーです。ひとつひとつのパネルを形状記憶合金製のヒンジで留めています。ヒンジが温められるとU字型に戻ろうとするためパネルが閉じ、逆に冷えるとパネルの自重で開いていくという仕組みになっています」(中田さん)

 ラボ内の展示では、背後に置かれた細長いヒーターが温める方向を変えながら動いていましたが、例えば、屋外や日中の窓際に置けば、季節によっては太陽の光でもゆっくりと閉じたり開いたりを繰り返すので、見た目にも飽きることなく楽しめそうです。

 また“温められると閉じ、冷めると開く”という流れも、「何℃になるとパカッと開く」といった厳密に決められたものはなく、さらに、上下左右のパネルどうしが規則正しく動くわけでもありません。それぞれのパネルが勝手に動く“不均一性”が、見ていてどこか心地よく感じます。

「人間が本能的に感じる心地よさを工業的な手段で再現する、というコンセプトで取り組んだプロジェクトのひとつで、テーマはまさに“Ununiformity(不均一性)”と“陰”としています。

 電源を使わず自然とシンクロしながら、音もなくいつの間にか動いている……。次世代の家電がこういった心地よいものになったら面白いのではないか? という発想からつくってみたプロトタイプです」(中田さん)

 表現するのは難しいですが、確かに見ていて心地よく感じるルーバーです。もし、この仕組みを窓やエアコンのルーバーなどに実装し、暑くなったら開いたり、風向きが変わったりすると、さらに心地よく感じられるのではないかと思います。

無数のパネルがゆっくりと、ランダムに閉じたり開いたりしている雰囲気が心地よい「Ununiformity」
無数のパネルがゆっくりと、ランダムに閉じたり開いたりしている雰囲気が心地よい「Ununiformity」

 これは、そうした家電の開発を念頭に取り組まれたプロジェクトなのでしょうか?

「FLFは、必ずしも商品化をゴールに見据えて活動しているわけではありませんが、プロジェクトに取り組む過程で得られた知見は、常に製品を開発している部署へフィードバックしています。

 こうした新しい表現方法も、『製品に実装できそうな“いい仕組み”が思いついたら、ぜひ使ってみたい』といった評価を、製品の開発現場からはいただいています」(中田さん)

Next開発現場とは異なる環境だからこそ生まれるユニークな発想
Gallery 【画像】「えっ!…」これがパナソニックの“謎の開発チーム”「FUTURE LIFE FACTORY」と未知のプロダクツです(15枚)
「カチッ」と日常をオフに。至福の時を刻む、マインドフルネス

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