「ダイハツ製SUV」にBMWエンジンを積んだ“珍車”が北米のオークションに登場! 日独伊の合作「フリークライマー」はいくらで落札された?
ダイハツとBMWとベルトーネ……奇妙な組み合わせから生まれた小型SUV
日独伊の三国同盟と聞くと何やら不穏な響きがありますが、そんなクルマがかつて存在していたのをご存じでしょうか?

ダイハツ「ロッキー」の前身である「ラガー」をベースに、BMW製のエンジン搭載。内外装と“改造”はイタリアのカロッツェリアであるベルトーネが手がけた、世にも奇妙な組み合わせのコンパクト・クロスカントリーSUVであるベルトーネ「フリークライマー」がそれです。
「フリークライマー」の生産がスタートしたのは1989年のこと。当時のベルトーネではちょうど、フィアット「X1/9」の受託生産が終了した頃でした。
工場稼働率を維持するための苦肉の策だったのか、クロカンSUV人気を予見していたのか、はたまた、1980年代にダイハツ「ロッキー」のパリ・ダカール・ラリー参戦車がチラホラあったことから選ばれたのか……今となっては知る由もありませんが、当時としても斬新なモデルであったことは誰が見ても明らかです。
ダイハツ「ラガー」のプラットフォームは、上部に鋼製ボディを備える鋼製ラダーフレームシャシーで構成されており、これらはずべて「フリークライマー」にも引き継がれました。
足回りは前後リジッドアクスルの4輪リーフスプリング仕様で、フロントにはベンチレーテッド式ディスクブレーキ、リアにはドラムブレーキを備えていました。
BMW製のエンジンは、2.4リッターの直6ディーゼルターボ、もしくは、2リッターと2.7リッターの直6ガソリンエンジンを選ぶことができました。
そこに組み合わされるトランスミッションは5速MTのみの設定。トランスファーに2速の副変速機を内蔵するパートタイム式4輪駆動は「ラガー」ゆずりのメカでした。
エクステリアはベルトーネの腕の見せどころだったはずですが、4灯式ヘッドライト、新調されたフロントグリルを備えている程度で、ボディパネルへの板金加工は施されていません。
インテリアはヘッドレスト一体型の本革シートがおごられているほか、ダッシュボードにはヴェリア製の電圧計とアナログ時計を追加。もちろん内外装には、ベルトーネのエンブレムが配されています。
なお、「フリークライマー」と「フリークライマーII」と2世代にわたって製造されましたが、後者はダイハツ「フェローザ」(F300型)をベースにしていました。
「フリークライマー」はおよそ2800台が製造されたようですが、現在も生き残っている車両はごくわずかなようで、なかでも今回、オークションに出品されたアメリカへと渡った個体は、ごくわずかだったようです。
●ベルトーネならなんでも投機対象というわけじゃない!?
そんな「フリークライマー」が、アメリカの自動車オークションサイトであるBring A Trailer」に出品されていました。1990年式のディーゼルエンジン搭載モデルで、走行距離はわずか2万4000kmとオドメーターには表示されている個体です。
内外装は35年落ち相応にヤレており、エアコンは「冷風が出ない」と車両解説に記されていました。出品された車両には、ボッシュ製の燃料ポンプやディーゼルエンジンのスペアパーツも付属していたそうです。
27件の入札があり、結果的に9100ドル(約131万円)で落札に至りました。アメリカはDIYが盛んですから“プロジェクトカー”として落札されたのでしょう。
名カロッツェリアのベルトーネが手がけたモデルというブランド価値もあるはずですが、今回の「フリークライマー」は思いのほか安価で落札されました。
日独伊の三国同盟により誕生した珍車はまだ投機対象になっていないという事実に、中古車愛好家の筆者はちょっとだけ安堵したのでした。
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