オフロード性能を重視した車体づくり

　先ごろ上陸したBMW「R 12 G／S」は、かつてパリ・ダカールなどのラリーで活躍したマシン「R 80 G／S」をオマージュしたレトロデザインが目を惹くアドベンチャーバイク。クルーザーバイクの「R12」をベースとしていますが、本格的なオフロード性能が与えられているのが特徴です。

　フレームは「R12」で採用されたワンピース構造のスチールチューブラーですが、オフロード走行に対応させるべく、ステアリングヘッドを高く前方に位置する形状に改めています。

　ホイール径は、フロントがオフロードバイクと同じ21インチ。リアホイールはスタンダードモデルが17インチ、今回試乗した「エンデューロパッケージ」を装備した「R 12 G／S スポーツ」はBMWで唯一の18インチを採用しています。

　オフロードでの走破性で重要となる最低地上高は、スタンダードで240mm。「エンデューロパッケージ」装着車はリアホイールの大径化によって255mmを確保しています。

　アンダーガードのほかエンジンガードも装備しているので、大きめの石の転がる林道などでも安心して走れそうです。

　その分、シート高は高め。スタンダードモデルは860mm、「エンデューロパッケージ」装着車では875mmで、小柄なライダーにはちょっとハードルが高いかもしれません。

●林道を走って走破性の高さを実感

　今回は、舗装路のワインディングロードに加えて、せっかくなので未舗装の林道にも持ち込んでみました。それなりに大きな石も転がる、いわゆる“ガレた”林道で、ツーリング先で出合う路面としては荒れた方に分類されるでしょう。

　875mmというシート高はまたがる際にはやはり高く感じますが、乗ってしまうと思っていたほど足つき性は悪くありません。アドベンチャーバイクとしては車体やシートが細く絞り込まれていることが効いているようです。

　車体のバランスも良好で、229kgというヘビー級ですが、片足で支えることも不安は感じませんでした。

　ワインディングでのハンドリングは軽快。これはクランクが車体に対して横向きに回転していることによって、車体をバンクさせる際にエンジンの回転慣性が抵抗にならないことが大きいと思われます。コーナーは軽快だけど、それ以外の場面では安定感が高いという絶妙の乗り味です。

　1169ccという大排気量の2気筒エンジンは、振動が少なく、それでいて鼓動感は伝わってくる絶妙なフィーリングです。

　109馬力という最高出力は必要にして十分で、峠の上り坂でもアクセルを軽く開けるだけでグイグイと登って行く力強さを感じます。

　未舗装の林道でも、ワインディングで感じた安定感と軽快感が両立したフィーリングを実感しました。荒れた路面でもハンドルを取られるような挙動がありません。この抜群の安定感は、フロント21インチ、リア18インチのタイヤがもたらしてくれるものでしょう。

　それでいて、コーナーや障害物を避ける際のハンドリングは軽快で、230kg近いヘビー級であることを忘れてしまうほど。シート高はありますが、不安を感じず林道を走れたのは、この安定感と軽快な動きを両立した車体のおかげといえます。

　BMWのアドベンチャーバイクは「GS」シリーズが人気を獲得していますが、「R 12 G／S」はレトロなデザインで、同シリーズとはまた異なる雰囲気に仕上がっています。

「GS」シリーズは大陸を横断するような長距離ツーリングを視野に入れたモデルが多いのに対し、「R 12 G／S」は日本国内でのツーリングに適している乗り味。

　オフロードでの確かな走破性も持ち合わせているので、出かけた先の林道で“冒険”を楽しんでみるのもいいかもしれません。

●製品仕様
・価格（消費税込）：245万1000円～（スポーツは254万5000円〜）
・サイズ：全長2250×全幅860×全高1256mm
・ホイールベース：1580mm
・シート高：860mm（スポーツは875mm）
・重量：229kg
・エンジン：空油冷水平対向2気筒DOHC4バルブ
・総排気量：1169cc
・最高出力：109ps／7000rpm
・最大トルク：115Nm／6500rpm