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「55万円のランタン」の理由は“狂気の加工精度”――もはや家電ではない? バルミューダ「Sailing Lantern」の本質とは【家電で読み解く新時代|Case.21】

55万円という“価格のロジック”

 このプロダクトの価格は、ブランド料ではなく工程の密度と思想の重さが理由だ。

・削り出しステンレスと鏡面仕上げ
・18Kメッキの装飾
・切削研磨された光学ガラス
・防水・防塩害・耐紫外線設計
・宝飾レベルの外観検査と精度管理
・スケールメリットの効かない少量生産
・分解・再組立・バッテリー交換可能な構造

 これらの全てが、価格の裏付けとなる。この製品の立ち位置を明確に、社長の寺尾玄氏の想いを代弁するように島田氏は言う。

「このモノづくりは家電のレベルを超えています。50年、100年とアンティークとして残るものを作るぐらいの体験でした」。

 量産品でありながら、一点ものの工芸品のような存在。時間とともに価値を高める設計思想は、これまでの家電にはなかった方向性だ。

1.5kgの重量を支えるためベルト部分やボタンの素材も耐久性を意識している。
1.5kgの重量を支えるためベルト部分やボタンの素材も耐久性を意識している。

“モノ”で語る時代へ

 Sailing Lanternは、有名デザイナーの名を冠するために生まれたプロダクトではない。部品ひとつひとつ、工程ひとつひとつ、思想そのもので語る製品だ。

 金属とガラスの面をつなぎ、光の揺らぎを制御し、過酷な海風にも耐える構造をつくり上げる──この積み重ねこそが、55万円という価格を正当化している。

 かつて日本のモノづくりが世界を席巻した時代には、「語らずとも伝わる完成度」があった。Sailing Lanternは、その記憶を現代に呼び戻す存在といえる。

「僕らが作りたかったのは、空間を照らす“光”ではなく、時間を照らす“灯り”なんです」。

 “物語”ではなく、“モノ”で語る時代へ。このランタンは、その象徴のひとつになるかもしれない。

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滝田勝紀
滝田勝紀
VAGUE家電統括プロデューサー
モノ雑誌の編集に15年以上携わり『デジモノステーション』編集長を歴任。現在は家電スペシャリストとして、国内外の最新テクノロジーを長年取材。All About家電ガイドやMakuakeエバンジェリスト、楽天ROOM公式インフルエンサー(フォロワー56万人超)など幅広く活動する。海外取材経験も豊富で、欧州家電メーカー本社や世界最大級の見本市「IFA」への造詣も深い。また、Z世代向けメディア運営やPR会社経営の傍ら、インテリアスタイリスト窪川勝哉氏とのユニット「𝒾𝓃𝒞𝒶𝒹𝑒𝓃𝓏𝒶」で家電開発も手掛ける。機能とデザインの両面から、心地よい暮らしのあり方を提唱している。

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