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名車「マクラーレンF1」の生みの親が設計した“令和のスーパーカー”がオークション初登場 軽量ボディは1トン切り 1万回転超えの661馬力NAエンジンをマニュアルで操る「T.50」の価値とは

限定100台のうちのシャシナンバー035

 2025年11月にUAE(アラブ首長国連邦)アブダビで開催されるRMサザビーズ主催のオークションに、ゴードン・マレー・オートモーティブの「T.50」が出品される予定です。

 どんなクルマなのでしょうか。

オークションに出品される予定の2025年式ゴードン・マレー・オートモーティブ「T.50」Sam Chick(c)2025 Courtesy of RM Sotheby's
オークションに出品される予定の2025年式ゴードン・マレー・オートモーティブ「T.50」Sam Chick(c)2025 Courtesy of RM Sotheby's

 現代でもっとも偉大な自動車として語られる1992年登場の「マクラーレンF1」ですが、その設計者であるゴードン・マレー教授は、同車のわずかな欠点についても隠すことなく語ってきました。

 マレー氏自らが率いるGordon Murray Automotive(GMA)が開発したT.50は、F1の純粋性を受け継ぎながら、その理想をさらに磨き上げ、「史上最高のドライバーズカー」を目指して生まれたモデルです。

 T.50の開発がスタートした段階では、まだ仕様が固まり切っていなかったため、GMAのチームは極めて柔軟かつ迅速に理想を追求できました。

 サイズはコンパクトで、フットプリントはポルシェ・ボクスターとほぼ同等。これにより、乾燥重量は驚異の997kgにまで抑えられ、公道での扱いやすさも大きく向上しています。徹底した軽量化へのこだわりは、ペダルの300g削減や、チタン製シフトリンケージの800g軽量化にまで及びました。

 この積み重ねが「軽さの好循環」を生み出し、タイヤも一般的な規格を採用することで、コストを抑えるとともに将来にわたって入手性を確保するという、F1オーナーからのフィードバックにも応えています。

 スタイリングはマレーが「原点回帰の美しさ」と語るように、飾り気を排した純粋な造形です。フロントでは、ライト下の控えめなインレットが空調用の空気とヘッドライト冷却を担い、デザインを乱すことなく機能を持たせています。大型ミラーの代わりに採用されたカメラには空力センサーも内蔵され、現代のハイパーカーには珍しいほどのシンプルさと集中度を体現しています。

 リアの最大の特徴は、マクラーレンF1や1978年のスウェーデンGPを席巻したブラバムBT46Bの思想を進化させた大型ファンです。

 T.50では上面から空気を引き抜くことで、ドラッグ(空気抵抗)を12.5%低減し、同時にディフューザーと連携して強力なダウンフォースを生み出します。

 いわば“ロングテール効果”を疑似的に作り出し、大型リアウイングを不要としたことで、T.50の優美なシルエットが守られています。バックカメラを収めたカウルの内部に収められたこのファン単体で、15kgもの前方向推力を発生するという事実も驚異的です。

 その中央、ガルウイング式のエンジンカバーの下に収まるのは、コスワースと共同開発された4リッターV12自然吸気エンジンです。ハイブリッドを一切用いず、重量はわずか178kgという世界最軽量級ながら最高回転数は1万2100rpm。

 ドライバー頭上のラムエアスクープから吸気し、661馬力を6速マニュアル(Xtrac製)を介して後輪へと伝え、チタンとインコネルの排気システムから咆哮を放ちます。

 インテリアは、マクラーレンF1と同じ3シートレイアウトです。ドライバー正面のタコメーターは精密に削り出されたアルミ製で、レッドラインまで一気に駆け上がる針の動きを中心に据えています。コックピットはドライビングに必要なものだけが配置され、左側の画面が車両情報、右側の画面がインフォテインメントを担当します。

 T.50の人気は早くから確かなもので、半数がマレーのボールペン画と初期説明だけで売れ、公開前には3分の2が成約。世界初公開から48時間で全100台が完売しました。

 ここで紹介されているのは、限定100台のうちのシャシNo.035です。

 2022年半ばにオーナーが指定した仕様で、外装はHarrierカラーとグロスカーボンの組み合わせ。ダークグレーのグロスホイールと、ブラックのブレンボ製カーボンセラミックブレーキキャリパーがアクセントになっています。

 GMAはオプション料金を設定せず、全車を「同一価格でフルカスタム可能」としたため、同じ仕様のT.50は一台として存在しません。

 本車両では、ボディ同色の下部パネル、エンジンプラナムのシルバースクリプト、ガラスルーフ、そしてマレーの初期作であるT.1レーシングカーへのオマージュとしてHeritage Orangeのバッジやスプリングが採用されています。さらにTouring仕様の6速ギア比も選択されています。

 内装はチャコールアルカンターラを基調に、軽やかなアルミのスイッチギア、マトリックスオレンジのアクセント、そしてLozenge Spine刺繍がキャビンを彩ります。2つの助手席はChromite BlackのBridge of Weirレザーにアルカンターラのセンター部を組み合わせ、ドライバー席はマトリックスオレンジのレザーで包み込まれています。

 2025年にデンマークへ新車で納車され、走行はわずか217kmと極めて低走行。専用ラゲッジセット、ツールチェスト、診断用タブレットなど、本車両固有の付属品も揃っています。

 T.50は、直接のライバルが存在しない特別なクルマです。軽量化への徹底ぶり、自然吸気V12でハイブリッド非搭載、そして「究極のロードカー」を唯一の目標に、最初から最後まで妥協なく設計されたクルマは、現代において他に例がありません。まさに唯一無二の存在だと言えます。

Gallery 【写真】中央にドライバー&3人乗りのスーパーカー! ゴードン・マレー「T.50」を見る(29枚)
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