23台しか現存しない「“幻”のフィアット」が英オークションに登場! 名門ヴィニャーレが手がけた「125サマンサ」は“ミウラ顔”をまとったGTの名作
23台程度しか現存しない希少なクーペ
先日、オークションサイトのeBay UKに、1969年式のフィアット「125サマンサ」が出品されていました。
車名を聞いて「ほう、あのクルマが……」と思った方は事情通。多くの人は「サマンサ? 何そのクルマ?」と首をひねったかもしれません。
それもそのはず、このモデルはわずか100台程度しか生産されておらず、現存するのは世界中で23台程度といわれる幻のイタリアンクーペなのです。
フィアット「125サマンサ」は、1967年から1971年にかけて、名門カロッツェリアであるヴィニャーレの手によってつくられました。当時のヴィニャーレは、大量生産のモノコック車が主流となりつつあるなかで、カロッツェリア(=コーチビルダー)としての存在意義を模索していた時期でした。
そこで、創設者のアルフレッド・ヴィニャーレは手頃なフィアットのハードウェアを使いながら、独自のスタイルを持つ少量生産クーペを生み出すことを決意します。そうして誕生した「125サマンサ」のデザインを任されたのは、ヴィニャーレで数々の美しいボディを手がけてきたヴィルジニオ・ヴァイロでした。
長く伸びたノーズ、流麗なファストバックのルーフライン、そしてランボルギーニ「ミウラ」を想起させるポップアップ式ヘッドライトが印象的。

もしかして「125サマンサ」は、ミウラからインスピレーションを得てデザインされたのでしょうか? ヘッドライトを閉じたときのなめらかなフロントマスクと、開いたときのキュートな表情のギャップに“キモ可愛い”という表現が思い浮びます。
●パーツが入手しやすいので“復活プロジェクト”も現実的
車名から分かる通り、ベースとなったのは1967年のトリノショーでお披露目されたフィアット「125」です。
フェラーリのF1エンジンも手がけた名設計者であるオーレリオ・ランプレディによる1.6リッター直列4気筒ツインカムエンジンが搭載され、最高出力は約100馬力。当時としては先進的なDOHCを採用し、高回転域までスムーズに回る特性から名機といわれていました。MTを介して後輪を駆動。最高速度は約161km/hといわれています。
数字だけ見ると控えめですが、それは意図的なものでした。「125サマンサ」は尖ったスポーツカーではなく、あくまでイタリアンスタイルと実用性を両立した“使える”GTカーとして企画されたのです。
シャシーは「125S」から流用されたもので、フロントが独立懸架(コイルスプリング+ウィッシュボーン)、リアはリーフスプリングのリジッドアクスル、そしてブレーキには4輪ディスク式を採用していました。
何より素晴らしいのは、パーツの入手しやすさです。フィアットの汎用部品を使えるため、維持費は“本格的”なイタリアンGTと比べて格段に安く済むそうです。
そして興味深いのは、当時、「世界で最も美しい4シーター」というキャッチコピーで販売されていたという点。
確かにインテリアはフィアット「125S」より豪華な雰囲気で、良質な素材をヴィニャーレが料理した質感の高い内装が与えられていました。2ドアクーペながら4名がしっかり座れる実用性も備えており、高級GTの雰囲気を手頃な価格で味わえるモデルと位置づけられていました。
今回落札された車両は、いわゆる「バーンファインド」状態。ホワイトのボディにダークブラウンのインテリアという組み合わせの右ハンドル仕様です。
エンジンは始動こそするものの、すぐに止まってしまうのだとか。フルレストアが必要な状態ですが、内外装はほぼ完全な状態が保たれており、オリジナルのホイールも装着されているほどです。
気になる落札価格は6600ポンド(約139万円)。希少性を考えれば破格といえるでしょう。ヴィニャーレという名門カロッツェリアが手がけ、ランプレディの名エンジンを搭載し、(パーツの入手しやすさ含めた)フィアットの信頼性を兼ね備えています。
もちろんレストア費用はかかりますが、パーツの入手しやすさを考えれば、やりがいのある“復活”プロジェクトになるはずです。
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