ドルチェ&ガッバーナと組む家電ブランド「スメッグ」とは? 日本初ショールームで見えた“家電をラグジュアリーに変える”思想
ドルチェ&ガッバーナと組む家電ブランド、という強烈な入口
イタリア発のプレミアム家電ブランド「Smeg(スメッグ)」を初めて知る人に、その魅力を一瞬で伝えるなら、ドルチェ&ガッバーナとのコラボレーション家電を見てもらうのが一番早いかもしれない。
イタリアの伝統的な文様、鮮やかな色彩、シチリアの太陽や果実を思わせる装飾。冷蔵庫、トースター、ケトル、ブレンダーといった家電でありながら、その佇まいはもはや“生活道具”というより“アートピース”に近い。

日本で家電といえば、スペック、価格、便利機能、省エネ性能から語られがちだ。もちろん、それらは大切である。しかしSmegのドルチェ&ガッバーナコラボを見ると、家電には別の価値があることを思い出させてくれる。
美しいこと。所有する喜びがあること。人に見せたくなること。暮らしの中に、少し非日常を持ち込んでくれること。
これは時計やクルマ、家具、オーディオ、ファッションには当たり前に存在してきた価値だ。ところが、白物家電の世界では意外なほど正面から語られてこなかった。Smegは、その空白に入ってくるブランドである。

“かわいい輸入家電”ではなく、イタリアの生活文化を背負うブランド
ショールームを訪れると、そのことがよりはっきりとわかる。会場には、冷蔵庫、オーブン、食器洗い機、レンジフード、IH、ワインクーラー、トースター、ケトル、ブレンダーなどが並ぶ。
しかし、それらは単に製品として展示されているのではない。グリーンを取り入れた空間、素材の質感、照明、導線、余白の取り方まで含めて、Smegのある暮らしをひとつの風景として見せていた。
今回の式典で、Smeg本社のパオロ・ロマーニ氏はこう語った。
「Smegは単なる家電メーカーではありません。私たちは文化的ブランドとして、暮らし方、料理の楽しみ方、そして生活そのもののあり方を形作る存在でありたいと考えています」

日本の家電メーカーは、生活者の不満を解決することに長けてきた。掃除をラクにする。洗濯を時短する。ご飯をおいしく炊く。空気をきれいにする。そうした細かな課題解決こそ、日本家電の強さだった。
一方でSmegは、課題解決だけでは語れない。便利かどうかの前に、その家電が置かれた空間がどう見えるか。そこに立つ人の気分がどう変わるか。朝食の時間や、週末に友人を招く時間がどう豊かになるか。そうした“気分の設計”まで含めて家電を考えている。
だからSmegは、単なる“おしゃれ家電”ではない。イタリアの食文化、住文化、デザイン文化を、家電という形に翻訳したブランドなのである。

駐日イタリア大使が語った「イタリアの美意識を発信する拠点」
今回のショールームお披露目には、駐日イタリア大使のマリオ・アンドレア・ヴァッターニ氏も来賓として登壇した。
「イタリアはデザイン、建築、食文化、そしてライフスタイルにおいて世界中で知られています。本日誕生するSmeg東京ショールームもまた、イタリア文化と美意識を発信する新たな拠点となることと思います」

このコメントは、Smegというブランドの立ち位置をよく表している。Smegは家電メーカーであると同時に、イタリアの美意識を世界に届ける存在でもある。
だからこそ、ドルチェ&ガッバーナとのコラボレーションが成立する。だからこそ、家電でありながら、ファッションやインテリア、アートの文脈で語ることができる。
輸入家電というと、どうしても“海外の便利な製品”として見られがちだ。しかしSmegが日本に持ち込もうとしているのは、単なる製品ではない。家電を通して、イタリア的な暮らしの感性を日本の住空間に持ち込もうとしているのだ。

本当に狙っているのは、トースターではなく“キッチン全体”
Smegを日本で広げるうえで、最初の入口になるのは小型家電だろう。
トースター、ケトル、ブレンダー、ソーダメーカー、小型冷蔵庫。これらは写真映えしやすく、導入もしやすい。ドルチェ&ガッバーナコラボのような華やかなモデルも、Smegというブランドを記憶させる強いフックになる。
だが、今回のショールームを見て感じたのは、Smegの本当の勝負どころは小型家電だけではないということだ。むしろ本命は、ビルトイン家電にある。
オーブン、食器洗い機、IH、レンジフード、ワインクーラー、ソムリエドロワー。こうした製品は、キッチン空間そのものを構成する。後から置く小型家電とは違い、住宅やインテリアの設計段階から関わる領域だ。

日本におけるSmegの展開を担う、日本の総合代理店テクタイト株式会社の代表取締役・松本能和氏はこう話す。
「今後はビルトイン市場を中心にしながら、ブランド感を持った小型家電で認知していただく方向性を考えています」
これは非常に理にかなっている。小型家電は、Smegを知る入口になる。だがビルトイン家電は、Smegの世界観を家そのものに組み込むことができる。つまり、トースターやケトルは“ブランドとの出会い”であり、オーブンやレンジフード、ワインクーラーは“暮らしへの実装”なのだ。

注目すべきはレンジフード。設備を“隠す”時代から“見せる”時代へ
松本氏がショールームで特に見てほしい製品として挙げていたのが、レンジフードだった。
「オーブン、食洗機、レンジフード、IH、ワインクーラーと本当にたくさんありますが、中でもレンジフードは特別なデザイン性があります。他のメーカーさんにはない商品として、一押しアイテムになっています」

一見すると意外に思えるかもしれない。冷蔵庫でも、オーブンでも、ドルチェ&ガッバーナコラボでもなく、レンジフードなのか、と。
しかし、家全体のコーディネートという視点で見ると、これは非常に重要である。
オープンキッチンにおいて、レンジフードは空間の印象を大きく左右する。機能としては必要不可欠だが、見た目の存在感が強すぎると、リビングやダイニングの雰囲気を壊してしまう。そのため日本では、レンジフードはできるだけ目立たせない、薄くする、壁や天井になじませるという方向で考えられてきた。
だがSmegは、そこを逆から捉える。レンジフードを隠すべき設備ではなく、空間の一部として美しく見せる。場合によっては、彫刻のような存在感を持たせる。これは、キッチンの考え方を変える提案だ。
どんな家にSmegは似合うのか?
まず相性がいいのは、アイランドキッチンやペニンシュラキッチンを備えた住まいだ。料理をしながら会話が生まれる家。友人を招くことがある家。ワインやコーヒー、料理の時間を楽しむ家。こうした空間では、Smegの家電は単なる機器ではなく、暮らしの雰囲気を決定づける存在になる。

リノベーション住宅との相性もいい。特に、古いマンションや戸建てを、自分たちらしい空間へ作り変えたい人には向いている。無垢材、タイル、石材、モルタル、ステンレス、真鍮。そうした素材感のある空間に、Smegの家電はよく映える。
一方で、白を基調にしたミニマルな空間にも合う。Smegの小型家電はカラー展開が豊富なため、空間にワンポイントをつくりやすい。ドルチェ&ガッバーナコラボのような華やかなモデルなら、あえて一点だけ強く置くことで、空間にアートのような役割を与えることもできる。
つまりSmegは、単に“イタリア風の家”にだけ似合うブランドではない。大切なのは、家の中に美意識を持ち込みたいかどうかだ。

Smegをおすすめしたい人、そうでない人
Smegをおすすめしたいのは、家を“自分の価値観を表現する場所”として考えている人だ。
クルマや時計、家具、照明、オーディオにこだわる人なら、Smegの価値は理解しやすいはずだ。単に機能するだけでなく、そこにあることで気分が変わる。見るたびに少し満たされる。使うことそのものが楽しくなる。そういう価値にお金を払える人に向いている。

また、料理を作業ではなく時間として楽しみたい人にも合う。平日は忙しくても、週末は少し丁寧に料理をしたい。友人を招きたい。ワインを楽しみたい。朝のコーヒーやトーストの時間を豊かにしたい。そういう人にとって、Smegは日常の所作を少しだけ特別にしてくれる。
一方で、とにかく安く、便利で、目立たず、壊れなければいいという人には向かない。Smegは最短距離で生活課題を解決するための家電ではない。むしろ、暮らしに少し余白をつくり、その余白を楽しむためのブランドである。
家電は、もっとラグジュアリーであっていい
Smegの日本ショールームお披露目で象徴的だったのが、一般的なテープカットではなく、リボンを結ぶ「Unityセレモニー」が行われたことだ。
赤、緑、白はイタリア国旗を想起させ、赤と白は日本の国旗にも通じる。リボンを切るのではなく結ぶ。そこには、人と人、文化と文化、そしてイタリアと日本をつなぐという意味が込められていた。
Smegの日本展開も、それに近い。イタリアの美意識と、日本の住空間。ファッションやアートの華やかさと、日々の料理や家事。ドルチェ&ガッバーナのようなラグジュアリーの世界と、ビルトイン家電という実用の世界。それらを結びつけるところに、Smegの面白さがある。

家電は、もっと美しくていい。もっと人に見せたくなる存在でいい。もっと所有する喜びがあっていい。
日本の家電は、生活の不便を解決することで進化してきた。これからはその先に、暮らしの景色をどうつくるか、家全体の印象をどう高めるか、日常の時間をどう豊かにするかという視点が必要になる。
ドルチェ&ガッバーナとのコラボレーション家電は、そのもっともわかりやすい入口だ。しかし、その先にあるのは、キッチン全体、さらには家全体の空気を変える提案である。
Smegが似合うのは、派手な家ではない。暮らしの中に、自分らしい美意識を持ち込みたい家である。家電を“ただの道具”としてではなく、“暮らしの景色”として選びたい人にこそ、Smegはよく似合う。
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