VAGUE(ヴァーグ)

「料理は自分で全部やらなきゃ」はもう古い? パナソニックの新ビストロが“手抜きじゃない時短”を叶える理由

時短は、本当に“手抜き”なのか

 料理をめぐる価値観は、いま大きく変わりつつあります。

 物価高によって外食や中食に頼り切ることは難しくなり、食品ロスを減らすためにも、冷蔵庫にある食材をうまく使い切る力が求められる。一方で、仕事や家事、子育て、介護、あるいは自分自身を整える時間まで含めると、毎日の食事づくりに無限の時間をかけられる人は多くありません。

 それでも、家族にはできるだけきちんとした食事を出したい。野菜も摂らせたいし、温かいスープも添えたい。冷凍食品や惣菜だけで済ませることに、どこか後ろめたさを感じる人もいるでしょう。

物価高や食品ロス、夏場の“火を使わない調理”など、昨今の食生活を取り巻く課題を示した発表会資料。新「ビストロ」は、単なる時短家電ではなく、こうした暮らしの変化に応える調理家電として提案された
物価高や食品ロス、夏場の“火を使わない調理”など、昨今の食生活を取り巻く課題を示した発表会資料。新「ビストロ」は、単なる時短家電ではなく、こうした暮らしの変化に応える調理家電として提案された

 しかし、ここで一度考えたいのです。時短とは、本当に手を抜くことなのでしょうか。

 料理家の栗原心平氏は、今回の発表会で興味深いことを語っていました。栗原氏は「時短という言葉が正直あまり好きではない」としながらも、その理由をこう説明します。

 おいしくなくなることがわかっていながら工程を省くのではなく、おいしさを損なわずに時間を短くできるなら、それはむしろ前向きなことだ、と。

料理家の栗原心平氏が、新「ビストロ」NE-UBS10Eの発表会に登壇。栗原氏は「時短」という言葉に対し、単に工程を省くのではなく、おいしさを損なわずに時間の使い方を変えることが重要だと語り、レンジ調理が帰宅後のライフサイクルを変える可能性を指摘した
料理家の栗原心平氏が、新「ビストロ」NE-UBS10Eの発表会に登壇。栗原氏は「時短」という言葉に対し、単に工程を省くのではなく、おいしさを損なわずに時間の使い方を変えることが重要だと語り、レンジ調理が帰宅後のライフサイクルを変える可能性を指摘した

 これは非常に大事な視点です。時短は、料理の質を下げることではありません。火加減を見続ける時間、吹きこぼれを気にする時間、揚げ油の後処理に追われる時間を減らすこと。

 そのぶん、家族と話す、子どもの宿題を見る、洗濯物を片づける、あるいは少し座って息をつく。時間の使い方を変えることこそが、本来の時短なのです。

 新しいビストロNE-UBS10Eが面白いのは、まさにこの“手抜きではない時短”をレンジ調理で実現しようとしている点にあります。

「もう一品」と「スープ」が、毎日の食卓を変える

 高機能オーブンレンジの世界では、各社がすでに「おまかせ調理」を進化させています。過熱水蒸気、深皿調理、ボウル調理、高火力オーブン、センサー制御。スペックや機能を比較すれば、それぞれに優れた特徴があります。

 ただし、今回のビストロがユニークなのは、単に主菜を自動で作るだけではないことです。目を向けているのは、毎日の食卓で意外と負担になりやすい「あと少し」です。

ブラックの本体は、キッチン空間になじむ落ち着いた佇まい。高機能を前面に押し出すだけでなく、毎日の食卓に自然に溶け込む調理家電としてのデザイン性も感じられる
ブラックの本体は、キッチン空間になじむ落ち着いた佇まい。高機能を前面に押し出すだけでなく、毎日の食卓に自然に溶け込む調理家電としてのデザイン性も感じられる

 主菜はなんとか作れる。けれど、もう一品がほしい。肉や魚は焼いた。けれど、スープまで用意する余力がない。揚げ物は食べたい。けれど、油を出して、揚げて、片づけるのは面倒。

 この“あと少し”こそ、家庭料理の現実です。

 NE-UBS10Eの新機能「おまかせグリル&スープ」は、上段でグリル料理、下でスープを同時に仕上げる機能です。鶏肉や魚、野菜などをグリル皿に並べ、下にはスープの材料を入れたボウルをセットする。

 あとはビストロが、レンジ、グリル、スチームを組み合わせながら加熱を制御し、メイン料理と汁物を同時に完成させます。

「おまかせグリル&スープ」では、上段のヒートグリル皿で主菜を焼き上げながら、庫内下のボウルでスープを同時に調理。コンロの前に立ち続けずに、メイン料理と汁物を一度に仕上げられるのが大きな特徴だ
「おまかせグリル&スープ」では、上段のヒートグリル皿で主菜を焼き上げながら、庫内下のボウルでスープを同時に調理。コンロの前に立ち続けずに、メイン料理と汁物を一度に仕上げられるのが大きな特徴だ

 この機能が意味するのは、単なる「2品同時調理」ではありません。献立としての完成度を上げながら、調理に張り付く時間を減らせることに価値があります。

 パナソニックの商品企画担当者安井 麻衣氏は、発表会で「忙しい毎日の中でも、きちんと作りたいと楽したい。この2つの気持ちの両立をサポートする」と説明していました。まさにここが今回の核心です。

 楽をすることと、きちんと作ることは、決して矛盾しません。むしろ、毎日きちんと食卓を整えたい人ほど、家電に任せられるところは任せたほうがいい。ビストロは、その考え方をかなり具体的な形に落とし込んできました。

冷凍も冷蔵も、今日あるものをまとめて整える

 ビストロが長年磨いてきた強みのひとつが、冷凍・冷蔵・常温の食材をうまく扱う技術です。

 家庭の冷蔵庫の中は、いつもレシピ通りに整っているわけではありません。冷凍しておいた肉や魚があり、冷蔵庫には早く使い切りたい野菜があり、常温の食材もある。今日の食卓は、買いそろえた材料だけで作るものではなく、「今日あるもの」をどうおいしく整えるかで成り立っています。

 ビストロのおまかせグリルは、こうした日常の不規則さに強い機能です。冷凍、冷蔵、常温の食材が混在していても、グリル皿に並べて調理できる。きれいに段取りを整えなくても、冷凍ストックと残り野菜を組み合わせて一品にできる。

 これは、実はかなり大きな価値です。

 家電の進化というと、どうしても最高温度やセンサー数、メニュー数に目が行きがちです。しかし生活者にとって本当にありがたいのは、レシピ通りに材料をそろえなくても、現実の冷蔵庫の中身で食卓を成立させてくれることではないでしょうか。

会場には、パナソニックの電子レンジ事業の歩みを示す歴代モデルも展示された。1960年代から続くレンジの進化の先に、2006年に誕生したビストロがあり、今年で20周年を迎える
会場には、パナソニックの電子レンジ事業の歩みを示す歴代モデルも展示された。1960年代から続くレンジの進化の先に、2006年に誕生したビストロがあり、今年で20周年を迎える

 今回のビストロのコンセプトには、「今日あるものを、おまかせでおいしく」という言葉があります。これは単なるコピーではなく、今の食生活をかなり的確に捉えています。

 物価高の時代に、食材をムダにしたくない。でも、残り物感のある食卓にはしたくない。冷凍ストックも、冷蔵庫の野菜も、ちゃんとおいしく使い切りたい。

 その思いに、レンジ調理の進化が応え始めているのです。

ビストロが長年磨いてきた冷凍・冷蔵・常温食材への対応力。冷凍ストックや残り野菜を活用し、“今日あるもの”を食卓の一品に変える発想が、新モデルにも受け継がれている
ビストロが長年磨いてきた冷凍・冷蔵・常温食材への対応力。冷凍ストックや残り野菜を活用し、“今日あるもの”を食卓の一品に変える発想が、新モデルにも受け継がれている

調理済み冷凍フライもそのまま。揚げ物の背徳感も変わる

 もうひとつ見逃せないのが、揚げ物まわりの進化です。

 揚げ物は、多くの家庭にとって非常に悩ましい存在です。食卓に出せば満足度は高い。子どもも大人も喜ぶ。けれど、自宅で揚げるとなると、油の準備、温度管理、油はね、におい、後片づけが一気にのしかかります。

 今回のNE-UBS10Eでは、フライあたため機能が進化し、調理済み冷凍フライにも対応しました。冷凍庫から出した市販の調理済みフライをそのまま庫内に入れ、油を使わずに仕上げられる。マイクロ波で中まで温め、ヒーターで表面の水分を飛ばすことで、中は温かく、外はさっくりとした食感を目指します。

揚げ物まわりの進化も新「ビストロ」の注目点。調理済み冷凍フライにも対応し、冷凍庫から出したフライを油を使わずに仕上げられるため、揚げ物のハードルを大きく下げてくれる
揚げ物まわりの進化も新「ビストロ」の注目点。調理済み冷凍フライにも対応し、冷凍庫から出したフライを油を使わずに仕上げられるため、揚げ物のハードルを大きく下げてくれる

 これまで、冷凍フライをおいしく戻そうとすると、電子レンジで中を温めてからトースターで表面を焼く、といった二度手間が必要になることもありました。ビストロは、その手間を一台で引き受けます。

 栗原氏も、調理済み冷凍フライについて、従来ならオーブントースターでは中まで熱が入りにくく、レンジとの併用が必要だったと話していました。そのうえで、新しいビストロでは中はしっかり温まり、表面はパリッとする点を評価していました。

 揚げ物を食べたい。でも揚げ油は出したくない。この本音に対して、ビストロはかなり実用的な答えを出しています。

 ここでも重要なのは、やはり「手抜き」ではないということです。揚げ物を油で揚げないからといって、食卓への思いが薄いわけではありません。むしろ、朝のお弁当づくりや忙しい夕食準備の中で、家族が喜ぶ一品を無理なく出せるなら、それは生活の質を上げる選択です。

「おまかせ熱風フライ」による油量の比較展示。油をたっぷり使う従来の揚げ調理に対し、ビストロなら少量の油で揚げ物らしい仕上がりを目指せる。後片づけや油処理の負担を抑えられる点も、日常使いでは大きい
「おまかせ熱風フライ」による油量の比較展示。油をたっぷり使う従来の揚げ調理に対し、ビストロなら少量の油で揚げ物らしい仕上がりを目指せる。後片づけや油処理の負担を抑えられる点も、日常使いでは大きい

帰宅後30分の動線を変える家電

 今回のビストロを、単なる調理家電として見るだけでは少しもったいないと思います。より本質的には、帰宅後の生活動線を変える家電です。

 栗原氏は、おまかせグリル&スープについて「帰ってきて、この調理を始めて30分あるわけですよね。30分だったらいろんなことができる」と語っていました。さらに、ビストロを生活に取り入れることで「ライフサイクルを変える」とも表現しています。

栗原心平氏考案の「鶏肉のシュクメルリ風グリル」。上段でグリル調理することで、鶏肉には香ばしい焼き目がつき、じゃがいもやパプリカとともに食卓の主菜として成立する一皿に仕上がった
栗原心平氏考案の「鶏肉のシュクメルリ風グリル」。上段でグリル調理することで、鶏肉には香ばしい焼き目がつき、じゃがいもやパプリカとともに食卓の主菜として成立する一皿に仕上がった

 この言葉は非常に示唆的です。

 帰宅したら、まずビストロに食材をセットする。その後、着替える。子どもの話を聞く。風呂掃除をする。洗濯物を片づける。翌日の準備をする。そして30分後には、グリル料理とスープができている。

 これは「30分で料理ができる」という話に留まりません。コンロの前に立ち続けることを前提にしていた帰宅後の時間割が変わる、ということです。

 起業家の視点で見ても、この変化は大きいと感じます。現代のビジネスでは、限られたリソースをどこに配分するかが常に問われます。家庭も同じです。

 時間、体力、注意力は有限です。それをすべて調理工程に張り付けるのではなく、家電に任せられる部分は任せる。そこで生まれた余白を、家族や自分に使う。

 家電とは、単に作業を自動化する道具ではありません。暮らしの中の優先順位を組み替える装置でもあるのです。

栗原心平氏が考案した「鶏肉のシュクメルリ風グリル&刻み野菜のスープ」。上段ではチーズや生クリームをまとわせた鶏肉を香ばしく焼き上げ、下では玉ねぎ、ピーマン、ベーコンなどを使ったスープを同時に調理する。「おまかせグリル&スープ」により、主菜と汁物を一度に仕上げられることを実演した一皿だ
栗原心平氏が考案した「鶏肉のシュクメルリ風グリル&刻み野菜のスープ」。上段ではチーズや生クリームをまとわせた鶏肉を香ばしく焼き上げ、下では玉ねぎ、ピーマン、ベーコンなどを使ったスープを同時に調理する。「おまかせグリル&スープ」により、主菜と汁物を一度に仕上げられることを実演した一皿だ

“誰が作ってもおいしい”を支えるPanasonic Cooking @Lab

 では、なぜビストロは「任せてもいい」と思えるのでしょうか。

 その鍵になるのが、パナソニックの調理科学専門集団「Panasonic Cooking @Lab」です。発表会では、同ラボの担当者がビストロの強みを「調理再現性技術」と説明していました。

 調理再現性とは、簡単に言えば、誰が作っても同じようにおいしく、同じような出来栄えに近づける技術です。同じレシピ、同じ機器を使えば、料理の経験にかかわらず、安定した仕上がりを再現できる。

 そのために、食材の量、状態、加熱の入り方、食感の変化などを検証し、ハードウェアと加熱制御の両面から調理プログラムへ落とし込んでいく。

 料理は本来、経験や勘に左右されやすいものです。火加減、置き方、切り方、食材の温度、分量。少し違うだけで、仕上がりは変わります。だからこそ、家電に調理を任せるには、単に加熱するだけでは不十分です。

 誰が使っても、今日ある食材で、食卓として成立するおいしさまで持っていけること。ここに、レンジにおけるパナソニッククオリティがあります。

 20年前の高機能レンジは、「料理好きの人がさらに本格的に使いこなす家電」という印象が強かったかもしれません。しかし、20周年を迎えたビストロは、少し違います。料理上手の人だけの道具ではなく、料理が得意ではない人、忙しい人、家事を抱え込みすぎている人にも、おいしい食卓を開いていく。

 高機能を誇るのではなく、誰でもおいしく作れる再現性に落とし込む。これこそ、現在のビストロが目指す進化ではないでしょうか。

Panasonic Cooking @Labは、調理科学の専門家が集まるパナソニックの調理ソフト開発集団。誰が作っても同じようにおいしく仕上がる“調理再現性”を支える存在であり、ビストロの「おまかせでおいしい」を裏側から支えている
Panasonic Cooking @Labは、調理科学の専門家が集まるパナソニックの調理ソフト開発集団。誰が作っても同じようにおいしく仕上がる“調理再現性”を支える存在であり、ビストロの「おまかせでおいしい」を裏側から支えている

家事をサボる背徳感は、もう手放していい

 日本の家庭には、まだどこか「料理は自分で全部やるべき」という空気があります。

 火の前に立ち、鍋を見て、揚げ物をし、洗い物までこなしてこそ、ちゃんと料理をした気になる。レンジに任せると、どこか手抜きのように感じる。そういう背徳感は、多くの人の中に少なからず残っているはずです。

 でも、そろそろその考え方を手放してもいいのではないでしょうか。

 家電に任せることは、家事をサボることではありません。料理の一部を、信頼できるパートナーに分けることです。しかも、そのパートナーは、センサーと加熱制御、調理科学の検証によって、誰が使っても安定したおいしさを目指してくれる。

 20周年のビストロは、もはや単なる高機能オーブンレンジという言葉だけでは足りません。家庭の中に、もうひとり料理を手伝ってくれる人がいる。そんな存在に近づいているように感じます。

 もちろん、料理そのものの楽しさがなくなるわけではありません。時間のある日は、パンを焼いたり、タルトを作ったり、手をかける楽しみもある。一方で、忙しい平日はビストロに任せて、主菜とスープを整える。調理済み冷凍フライをさっくり戻して、お弁当や夕食に活用する。

 大切なのは、自分で全部やることではありません。家族にとって、自分にとって、心地よい食卓と時間をつくることです。

暮らしに溶け込むキッチン空間の中に置かれた新「ビストロ」。単に調理を時短するだけでなく、帰宅後の動線や家族と過ごす時間の使い方まで変えてくれる存在として提案されている
暮らしに溶け込むキッチン空間の中に置かれた新「ビストロ」。単に調理を時短するだけでなく、帰宅後の動線や家族と過ごす時間の使い方まで変えてくれる存在として提案されている

 時短は、手抜きではない。レンジ調理は、妥協ではない。家電に任せることは、暮らしを諦めることではなく、むしろ暮らしを整えるための選択です。

 新しいビストロNE-UBS10Eは、そのことをかなり鮮やかに示してくれる一台です。20年かけてビストロが磨いてきたのは、単なる機能ではなく、毎日の食卓を無理なく続けるための再現性と安心感だったのだと思います。

製品仕様
Panasonic スチームオーブンレンジ ビストロ NE-UBS10E
価格:オープン価格
市場想定価格:16万円前後(税込)
発売時期:2026年6月上旬予定
カラー:ブラック/オフホワイト
主な新機能:おまかせグリル&スープ、進化したフライあたため、オーブン新メニュー
対応メニュー例:グリル料理、スープ、調理済み冷凍フライのあたため、おまかせ熱風フライ、リュスティック、型なしタルト、カップシフォンケーキなど

Gallery 【画像】パナソニックのスチームオーブンレンジ「ビストロ」NE-UBS10Eのスゴみを写真で見る(25枚)
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滝田勝紀
滝田勝紀
VAGUE家電統括プロデューサー
モノ雑誌の編集に15年以上携わり『デジモノステーション』編集長を歴任。現在は家電スペシャリストとして、国内外の最新テクノロジーを長年取材。All About家電ガイドやMakuakeエバンジェリスト、楽天ROOM公式インフルエンサー(フォロワー56万人超)など幅広く活動する。海外取材経験も豊富で、欧州家電メーカー本社や世界最大級の見本市「IFA」への造詣も深い。また、Z世代向けメディア運営やPR会社経営の傍ら、インテリアスタイリスト窪川勝哉氏とのユニット「𝒾𝓃𝒞𝒶𝒹𝑒𝓃𝓏𝒶」で家電開発も手掛ける。機能とデザインの両面から、心地よい暮らしのあり方を提唱している。

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