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気鋭のグラフィックデザイナー、上⻄祐理⽒と“デサント オルテライン”担当者が語る「境界を行き来する、ものづくりの作法」とは

オフィシャルな依頼動機とアンオフィシャルなそれ

 アートディレクター、グラフィックデザイナーとして印象的な広告ビジュアルやタイポグラフィなどの制作を手掛ける上⻄祐理氏。

 大手広告代理店で人生を仕事に捧げるような日々を送っていたが、「自分の名前で仕事を依頼される」働き方をしたいと思い始めたことがきっかけで、2021年に独立する。

 デザインはもちろんのこと、スケジュール管理やリサーチ、納品データ作成まですべて自分でこなす日々の合間に、近年は撮り溜めた写真を題材にした個展を開くなど表現活動の幅を広げていた。

 そんな上西さんとオルテラインが協業したきっかけは、両者の趣味の延長上にある。

上西祐理。アートディレクター/グラフィックデザイナー。ポスターやロゴから、ブランディング、キャンペーン、映像、空間、本、雑誌など仕事は多岐にわたる。2024年には自身初の個展、「上西祐理 now printing」をginza graphic galleryにて展示。主な受賞歴は、東京ADC賞、JAGDA賞、CANNES LIONS金賞、NYADC金賞、D&AD Yellow Penciltaなど。
上西祐理。アートディレクター/グラフィックデザイナー。ポスターやロゴから、ブランディング、キャンペーン、映像、空間、本、雑誌など仕事は多岐にわたる。2024年には自身初の個展、「上西祐理 now printing」をginza graphic galleryにて展示。主な受賞歴は、東京ADC賞、JAGDA賞、CANNES LIONS金賞、NYADC金賞、D&AD Yellow Penciltaなど。

「DESCENTE ALLTERRAIN(以下、デサント オルテライン)は、デサントの先進的なものづくりの間口を広げるような役割を担っています」と話すのは、デサントのMD担当・大田晃輝さん。

 今回で6回目を迎えるオルテライン協業アイテムの主軸を担う担当者だ。

 そもそも、スポーツウエアとしての機能性の高さが圧倒的なデサントは、ミニマルなデザインで実直にスポーツアパレルの世界を追求してきた。その上で、時代の変化による消費者の行動変容からスポーツ分野以外も模索することを目的としスタートしたのがオルテラインとなる。

「オルテラインは合理性と感性、無機質なデザインと有機的なカッティングなど、いまの時代が感じられ、気になる2つの要素がミックスする服づくりの模索をずっと続けています。そのような中、2024年に上西氏が開催した個展『Now Printing』に出会って」(大田氏)

上西祐理氏の個展「Now Printing」で展示されたグラフィックをビジュアルモチーフに採用したオープンカラーシャツ。¥33,000(税込)。
上西祐理氏の個展「Now Printing」で展示されたグラフィックをビジュアルモチーフに採用したオープンカラーシャツ。¥33,000(税込)。

「展示のコンセプトが、具象と抽象、現実と非現実、デジタルとアナログ、そういった二項対立しがちなものの境界の往来でした。まさに、という感じだったかもしれません」(上西氏)

 大田氏が探していた二つの要素のミックスを、量感を伴った空間展示で見せていた個展『Now Printing』に期待を感じ、上西氏にコラボレーションアイテムの制作を依頼したという。

 ただ、相反するものをテーマにするデザイナーや作品は数少ないわけではない。なぜ、とりわけ上西氏だったのか?

 そこには、二つの要素ということだけでなく上西氏が趣味で雪山へ登り、撮り溜めた写真の存在もあった。

 山というモチーフにデサントとのつながりを感じたこともさらにあと押しした理由だったという。

大田晃輝氏(右)。上西氏と面識を得たのは、個展『Now Printing』を訪れて以降だが、ライゾマティクスでの仕事などを通じて、その作品には以前から注目していたそうだ。
大田晃輝氏(右)。上西氏と面識を得たのは、個展『Now Printing』を訪れて以降だが、ライゾマティクスでの仕事などを通じて、その作品には以前から注目していたそうだ。

いまここで向き合っているものから、グラフィックを作っていく

 今回、デサント オルテラインでは2024年に上西氏が開催した個展『Now Printing』の展示からセレクトした作品で限定コレクションを発表している。

「写真をベースにしてはいるのですが、私は写真家ではなくグラフィックデザイナー。これがどこまでいくとグラフィックになるのかというところに興味がある。そのアイデアを探るような表現として、グラフィックを作っているところがあります」と話すのは上西氏。

 キャリア上、特にポスター制作を得意としてきたため、一瞬で伝えることを追求してきた経緯がある。

 写真もグラフィックも映像やインスタレーションとは違い、秒で訴えかけるためのアイデアや技量が必要になってくる分野だ。印刷にも相当なこだわりがある。

DESCENTE BLANC代官山店でのインスタレーションとして展示された上西氏の作品。
DESCENTE BLANC代官山店でのインスタレーションとして展示された上西氏の作品。

 イラストレーターだけで完結するような図案的な表現はどこか色にも無機質なところがあると感じ、写真を用いることでぐっと温度感があがるという。

 同じ平面に載せている写真からグリーンの色を拾いロゴタイプに活かしたり、無機と有機の境界線を行き来させながら制作している上西さんのポスターは、力強さと同時にどこか生っぽさも感じる。

「写真ってちょっと生き物っぽいんですよね。濃淡や奥行きや、それが印刷のドットでの表現になるとさらに情報量が出てくるというか。そんな偶発性はビジュアルをつくる者としては面白いなあと思います」

 今回のカプセルコレクションではボディの形を選ぶよりもプリントの領域が面白かったという。紙の上だと正確に出て欲しい色でも、プリントされたときに「このほうがいいかも」と思えるのはアパレルならではの経験だった、と上西氏は語る。

上西氏が最も好みというデザイン OPEN COLLAR SHIRT 33,000円(税込)
上西氏が最も好みというデザイン OPEN COLLAR SHIRT 33,000円(税込)

 柄選びも同様だ。森で撮影した葉っぱの大きさを決めた際も、訪れた山の清水の写真をもとに水の惑星をイメージしたグラフィックを施すときも、生きている写真、生きていたその世界のカケラを素材として用い、デザインに昇華する。それはすべて上西氏が見て、触れてきた世界だ。

「自分が日々向き合っていることから、グラフィックを作っていきたいんですよね」(上西氏)

 それは逆に、グラフィックを作る対象と向き合いたいという姿勢の表れでもある。

 そして、仕事を進める上でのもう一つの土台があった。

私の作るものがゴミになってほしくないな、って

 仕事柄、たくさんの印刷物や商品を世の中に送り出してきた上西さんは、「デザイナーだからこそ」と強く思うことがある。

「デザイナーって、虚偽のイメージも作れる。おしゃれじゃないものもおしゃれに見せたり…。トレンド感を出すことはできるけれど、そういうものは虚しくなっちゃうんですよね」(上西氏)

「そのあたりはデサントと考え方が似ているのかもしれません。常に機能性を重視して、研究している。建築、デザイン領域で構築的に考える部分はオルテラインにもインスパイアとしてあります」(大田氏)

「はい。特にオルテラインは都市型で街着として着られるデザインにアウトドア品質が加わっているので、そういうクオリティのものに自分が日々感じたことを表現したグラフィックが加えられるのは嬉しいですね」(上西氏)

 なるべく実直なものづくりを目指している上西さんはこうも話す。

「自分が手がけている仕事に理由をちゃんと1個ずつつけていきたいなっていう感じなんです。それは面倒くさいことではあるのですが。もちろん、便利だからこれはあった方がいいみたいなものもたくさんあるし、原理主義のような感じではないけれどなるべく意識したい」

 相反する二つの事柄を行き来しながらも、そこに偽りのない理由を求め続ける両者のものづくり。

 その姿勢は、機能美をひたむきに追求してきたデサントの思想と確かに重なる。

 DESCENTE BLANC代官山店に並ぶアイテムの一つひとつには、雪山や自然の世界から掬い取られた生っぽさと、二人が向き合ってきた誠実さが息づいている。

DESCENTE BLANC代官山店でのインスタレーション展示イベントは終了しているが、「DESCENTE ALLTERRAIN GRAPHIC CAPSULE COLLECTION BY YURI UENISHI」は、同店や、デサントオルテラインのECサイトでも購入できる。

https://allterrain.descente.com/story/dal_yuriuenishi/

Gallery 【画像】デサント オルテラインのアパレルを画像で見る(21枚)
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