「デロンギ一強」に東芝が挑む? 全自動エスプレッソマシンに見えた“日本仕様”の勝算
清掃性は、味と同じくらい重要だ
エスプレッソマシンで見落とされがちだが、実は非常に重要なのが手入れである。コーヒーは油分を含む。ミルクは放置すればにおいや汚れの原因になる。いくらおいしい一杯が淹れられても、掃除が面倒なら、やがて使わなくなる。
ELM-A1Bは、電源のオン/オフ時に内部経路と抽出口をお湯で自動洗浄する。ミルクメニュー抽出後は、チューブや抽出ノズルの中に付着した牛乳をお湯で洗い流す「ミルクシステム洗浄」にも対応する。さらに、コーヒーかす受け、水受けトレイ、抽出ユニット、抽出ノズルなどは丸洗いできる。

「全自動マシンは便利ですが、どうしても内部に汚れが残るのではないかと気にされる方もいます。そこで、ユーザー自身が外して洗える部分をできるだけ増やしています。ミルクを扱う製品なので、清掃性はかなり重視しました」(商品担当者)
日本のユーザーは、見えないところの清潔さにも敏感だ。できれば自分で外して洗いたい。そうした感覚は、海外市場とは少し違うかもしれない。
デロンギのような本場感とは別の価値。毎日使う道具としての安心感。そこを丁寧に積み上げようとしている点は、今回の製品で評価したい部分だ。

東芝は第二のデロンギを目指す必要はない
家でコーヒーを楽しむ時間は、単なる休憩ではなくなっている。朝のスイッチを入れる時間であり、仕事の合間に気持ちを切り替える時間であり、休日のオフタイムを少し豊かにする時間でもある。
ELM-A1Bが狙っているのは、おそらくその中間だ。ハンドドリップや手動のエスプレッソマシンを極めたい人ではなく、かといってカプセル式の手軽さだけで満足する人でもない。
豆から挽いた香りを楽しみたい。ラテやカプチーノも飲みたい。でも、操作や手入れはできるだけ簡単にしたい。そういう人に向けた商品である。

10年前、トレヴィゾで見たデロンギのものづくりは、いま思い返しても強烈だった。エスプレッソマシンとは、単なる機械ではなく、文化を家庭に持ち込むための道具なのだと感じた。
一方で、今回の東芝ELM-A1Bは、まったく別の方向からその市場に入ってきた製品だ。
イタリアの文化性を背負うデロンギに対し、東芝ライフスタイルはMideaのグローバル製品力を背景に、日本の生活家電としての使いやすさで勝負する。味を日本向けに調整し、ミルクメニューを全自動化し、清掃性を高め、11万円前後という価格帯に収める。その現実的なバランスに、この製品の狙いがある。
デロンギに憧れ、イタリアのコーヒー文化ごと所有したい人は、これからもデロンギを選ぶだろう。しかし、家でラテやカプチーノをもっと気軽に楽しみたい人にとって、必要なのは必ずしも“本場の物語”だけではない。
毎日使えること。手入れが続くこと。自分の味に調整できること。そして、価格とのバランスが取れていること。そこに価値を感じる人も少なくないはずだ。
東芝は、第二のデロンギを目指す必要はない。
むしろ、日本の家電メーカーらしく、エスプレッソマシンを“特別な趣味の道具”から“毎日の生活を少し豊かにする家電”へ近づけていく。その方向にこそ、この製品の勝算があるように感じた。
製品概要
東芝ライフスタイル 全自動エスプレッソ&ラテマシン ELM-A1B
価格:オープン価格
市場想定価格:11万円前後
カラー:ブラック
本体サイズ:約 幅220×奥行467×高さ369mm
重量:約9.4kg
容量:豆投入口 約250g/水タンク 1.8L
対応メニュー:エスプレッソ、コーヒー、アイスコーヒー、ラテマキアート、カプチーノ、ミルクフォーム、お湯
主な機能:コニカル式グラインダー、全自動抽出、ミルクフォーム抽出、濃度・抽出量調整、コーヒー粉モード、自動経路メンテナンス、ミルクシステム洗浄
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