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日本で食洗機がまだ普及しない理由とは? ミーレの「60cmビルトイン食器洗い機」が変える“食後の時間” 【家電で読み解く新時代|Case.50】

食洗機は便利なのに、なぜ日本ではまだ“当たり前”ではないのか

 食事を作ることは好きでも、その後の食器洗いまで好きだという人は、そう多くないはずです。皿を下げ、汚れを落とし、洗剤で洗い、すすぎ、水切りかごに並べる。作業そのものは地味ですが、毎日の食後に必ず発生するという意味では、暮らしのなかでかなり強い存在感を持つ家事です。

 それでも日本では、食器洗い機はまだ“どの家庭にもある設備”とは言えません。経済産業省のレポートでも、日本の食洗機普及率は上昇傾向にありながら30%強にとどまり、欧米に比べて低い水準にあるとされています。

 別の調査でも、2024年3月時点の普及率は37.3%。炊飯器のように、毎日の食卓を支える家電として自然に受け入れられている存在とは、まだ距離があります。

ミーレのビルトイン食器洗い機を組み込んだキッチンイメージ。食洗機は単に皿を洗う機械ではなく、食後にシンクの前へ戻る時間を減らし、家族との会話や自分の余白を取り戻すための設備ともいえる
ミーレのビルトイン食器洗い機を組み込んだキッチンイメージ。食洗機は単に皿を洗う機械ではなく、食後にシンクの前へ戻る時間を減らし、家族との会話や自分の余白を取り戻すための設備ともいえる

 理由のひとつは、やはり日本のキッチン事情です。スペースが限られた住まいでは、据え置き型を置けば調理スペースが狭くなる。

 ビルトイン型なら見た目は美しく収まりますが、導入には工事や電源、給排水の確認が必要になる。つまり、欲しいと思っても、思い立ったその日に買って使える家電ではないのです。

 ただ、普及を阻んでいるのは物理的な制約だけではありません。むしろ根深いのは、「食器くらい手で洗えばいい」という感覚ではないでしょうか。

 家事を機械に任せることに、どこか後ろめたさを覚える。手をかけることが丁寧な暮らしであり、家電に頼ることは手抜きである。そうした空気は、いまも日本の家庭のなかに薄く残っています。

 けれど、筆者は家電スペシャリストとして、そこにこそ食洗機の本質的なテーマがあると思っています。食洗機は、皿洗いをサボるための機械ではありません。人がやらなくてもいい作業を家電に任せ、人にしか使えない時間を取り戻すための設備です。

経済産業省のレポートでは、日本の食器洗い機の普及率は上昇傾向にありながら、いまだ30%強にとどまるとされている。システムキッチンの普及と比べても伸びは緩やかで、食洗機が“当たり前の住宅設備”になりきれていない現状が見えてくる。(グラフは経済産業省の「家事の強い味方、食器洗い機」より引用)
経済産業省のレポートでは、日本の食器洗い機の普及率は上昇傾向にありながら、いまだ30%強にとどまるとされている。システムキッチンの普及と比べても伸びは緩やかで、食洗機が“当たり前の住宅設備”になりきれていない現状が見えてくる。(グラフは経済産業省の「家事の強い味方、食器洗い機」より引用)

“皿を洗う機械”ではなく、食後の時間を設計する家電

 食洗機の価値は、何分短縮できるかだけでは語れません。もちろん、手洗いの時間が減ることは大きなメリットです。けれど本当に重要なのは、食後の時間の流れそのものが変わることです。

 夕食を作り終え、ようやく食卓に座る。家族や友人と会話をし、食事が終わる。その後、またシンクの前に戻るのか。それとも、食器を庫内に入れてボタンを押し、そのまま会話を続けるのか。この差は、毎日の暮らしの満足度に直結します。

 起業家として考えても、これは単なる家事効率化の話ではありません。現代の生活者にとって最も不足している資源は、モノではなく時間です。しかも、ただ空いた時間ではなく、自分で使い方を選べる時間です。食洗機が生み出す価値は、まさにここにあります。

 炊飯器が日本の家庭に根づいたのは、ご飯を炊く作業を機械化したからだけではありません。火加減を見守る必要をなくし、食卓の準備を安定させたからです。

 食洗機も同じです。洗う、すすぐ、乾かすという一連の流れを任せられるようになると、食後の家事は“その場で片づけなければならない作業”から、“家電に預けられる工程”へと変わります。

 その意味で、食洗機はキッチンの中でまだ過小評価されている家電です。料理を支える家電は注目されやすい一方、片づけを支える家電はどうしても地味に見える。しかし、食卓は作って終わりではありません。後片づけまで含めて、日々の食事は完結します。

ミーレの60cmが示す、食器洗い機の本当の使い方

 今回注目したいのが、ミーレのビルトイン食器洗い機「G 7130 C SCi」の60cmモデルです。ミーレと聞くと、日本では高級ビルトイン家電のブランドという印象が強いかもしれません。

 実際、国内メーカーの一般的なモデルに比べれば、導入価格も設置のハードルも高い。200V電源が必要で、キッチン側の条件確認も欠かせません。

60cm幅の大容量を生かし、食器だけでなく鍋やボウル、カトラリーまでまとめて洗いやすいミーレのビルトイン食器洗い機。約1時間で洗浄・乾燥まで行うQuickPowerWash、プログラム終了後にドアが自動で開くAutoOpen乾燥に加え、洗剤自動投入システム「AutoDos」も搭載。食洗機を使うたびに洗剤を入れるという“名もなき家事”まで減らせることは、毎日使う家電として大きな価値になる
60cm幅の大容量を生かし、食器だけでなく鍋やボウル、カトラリーまでまとめて洗いやすいミーレのビルトイン食器洗い機。約1時間で洗浄・乾燥まで行うQuickPowerWash、プログラム終了後にドアが自動で開くAutoOpen乾燥に加え、洗剤自動投入システム「AutoDos」も搭載。食洗機を使うたびに洗剤を入れるという“名もなき家事”まで減らせることは、毎日使う家電として大きな価値になる

 それでも、ミーレの60cmモデルには、そのハードルを超えて検討するだけの理由があります。

 最大のポイントは、容量です。G 7130 C SCiは、アジア基準で16人分、JEMA規格で12人分72点の洗浄容量を備えています。日本の住まいでは45cm幅の食洗機が選ばれることも多く、それ自体は合理的な選択です。

 ただし、食洗機を「食後の皿だけを洗うもの」と考えるのか、「キッチン全体をリセットする設備」と考えるのかで、60cmの意味は変わります。

 大皿、グラス、カトラリー、調理中に使ったボウルや鍋までまとめて入れやすい。ここが重要です。食後の皿は入ったけれど、調理器具はシンクに残る。それでは、片づけの負担は完全には消えません。

 60cmの大容量は、食器洗いの一部を置き換えるのではなく、後片づけ全体を一気に引き受けるための余白になります。

大容量の庫内により、食後の食器だけでなく、調理に使ったボウルや鍋、カトラリーまでまとめて洗いやすいのが魅力だ。食洗機は単に皿を洗う機械ではなく、食後にシンクの前へ戻る時間を減らし、家族との会話や自分の余白を取り戻すための設備ともいえる
大容量の庫内により、食後の食器だけでなく、調理に使ったボウルや鍋、カトラリーまでまとめて洗いやすいのが魅力だ。食洗機は単に皿を洗う機械ではなく、食後にシンクの前へ戻る時間を減らし、家族との会話や自分の余白を取り戻すための設備ともいえる

 ミーレらしいのは、容量だけでなく、入れやすさまで設計されていることです。最上段の「3D MultiFlexトレイ C」は、カトラリーや箸、小物類を効率よく収められる構造。

 食器をどう置くかで悩む時間が減れば、食洗機を使う心理的なハードルも下がります。家電は高性能であるだけでは足りません。毎日使うものほど、迷わず使えることが大切なのです。

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滝田勝紀
滝田勝紀
VAGUE家電統括プロデューサー
モノ雑誌の編集に15年以上携わり『デジモノステーション』編集長を歴任。現在は家電スペシャリストとして、国内外の最新テクノロジーを長年取材。All About家電ガイドやMakuakeエバンジェリスト、楽天ROOM公式インフルエンサー(フォロワー56万人超)など幅広く活動する。海外取材経験も豊富で、欧州家電メーカー本社や世界最大級の見本市「IFA」への造詣も深い。また、Z世代向けメディア運営やPR会社経営の傍ら、インテリアスタイリスト窪川勝哉氏とのユニット「𝒾𝓃𝒞𝒶𝒹𝑒𝓃𝓏𝒶」で家電開発も手掛ける。機能とデザインの両面から、心地よい暮らしのあり方を提唱している。

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