走行2万7600キロでも10億円超え予想!? フェラーリ「エンツォ」がオークション市場で“高値安定”を続ける理由とは
きちんと走行しメンテされた個体
走行距離は約1万7159マイル、つまり約2万7600km。
フェラーリの限定スーパーカーとして考えれば、今回出品される1台は決して「低走行」とはいえない個体です。
それにもかかわらず、2026年10月31日に米ラスベガスで開催されるブロードアロー・オークション主催の「ラスベガスオークション2026」に出品される予定の、2003年式フェラーリ「エンツォ」に、650万~850万ドルという驚くべき予想落札価格が設定されています。
日本円にすると、1ドル=147円換算で約9億5550万~12億4950万円です。
なぜ、これほどの予想価格になるのでしょうか。
まずエンツォそのものが、現在のフェラーリ・コレクター市場で特別な存在だからです。2002年のパリ・モーターショーで発表されたエンツォは、F1で圧倒的な強さを誇ったM.シューマッハ時代のフェラーリの技術をロードカーへ落とし込んだモデルです。
カーボンファイバー製モノコックに、F1マシンを思わせる空力デザイン。そして搭載されるのは、6リッターV型12気筒自然吸気エンジンです。最高出力は660馬力。トランスミッションにはF1由来の6速セミオートマチックを採用し、当時のフェラーリが持っていた技術力を象徴する存在でした。
さらに重要なのが、その希少性です。エンツォはわずか400台が生産されたとされ、現在では単なる中古スーパーカーではなく、「フェラーリの歴史を所有する」という意味合いを持つコレクターズカーになっています。実際、2026年にはブロードアロー・オークション主催のモントレーオークションで、別のエンツォを1067万5000ドル、約15億7000万円で落札させています。

今回の個体、シャシナンバー131631も、単純に「走行距離が多いエンツォ」ではありません。
フェラーリ・クラシケの認証を取得しており、車両の履歴もしっかりと記録されています。さらに2026年3月にはフェラーリ・ダラスで1万7159マイル時点の整備を実施。1万ドル以上をかけて油脂類やフィルターを交換したほか、4本のタイヤ、バッテリー、アライメントなども更新されています。
このクルマには、少し興味深い履歴もあります。初期オーナー時代にバルブトレーンの問題が発見され、フェラーリによって保証交換されたエンジンを搭載しています。さらに2006年にはネバダ州で受けた軽微なダメージをフェラーリ・ラスベガスで修復。その後、いったんブラックに塗装されましたが、後のオーナーがマラネッロのファクトリー公認工房、カロッツェリア・ザナージに依頼してオリジナルのロッソ・コルサへ戻しています。
ここが今回のエンツォの面白いところです。
近年のコレクター市場では、価値を守るためにほとんど走らせず、ガレージに保管されるスーパーカーも少なくありません。
しかしブロードアローは、この個体を「実際に走らせるためのエンツォ」として紹介しています。つまり、極端な低走行車ではないことが、必ずしもマイナスにはならないのです。
もちろん、走行距離だけを見れば、数千km程度の個体と同じ評価になるわけではありません。それでも、フェラーリ・クラシケ認証、整った整備履歴、交換済みエンジンの記録、そして実際に走らせられる状態という要素が揃っています。
しかも、現在のエンツォ市場そのものが上昇傾向にあります。わずか400台(米国に納車されたのはこのうち111台のみ)という希少性に加え、F1黄金期のフェラーリを象徴する存在であること、そしてV12自然吸気+F1タイプのトランスミッションという、現在では再現が難しいメカニズムを持つことが、その価値を支えています。
つまり今回の650万~850万ドルという予想価格は、「走行距離の少ない中古車だから高い」のではありません。
エンツォというクルマそのものが、いまやコレクターにとって“走らせることのできる歴史的フェラーリ”になっている。そこに今回の個体ならではの履歴とコンディションが加わることで、10億円を大きく超える価格が見えてくるわけです。
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