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家電発表会で羽生結弦が氷上を舞う!? ハイアール&AQUAが見せた“本気の日本攻略”とは

氷上の演出が映した、2ブランドの新しい輪郭

 暗転したアイスリンクに青い光が差すと、羽生結弦さんが滑り出しました。流麗なポーズとともにスモークが立ち上がり、その合図で冷蔵庫と洗濯機が一斉に姿を現しました。

 2026年9月29日、ハイアールとAQUAが開催した合同発表会です。家電の新製品を披露するために、アンバサダーが本来の舞台である氷上に立つのです。「そこまでやるのか」と、今回の発表会に対する二社の力の入れように引き込まれました。

 ただ、この日の収穫は演出の華やかさだけではありません。同じグループに属するハイアールとAQUAが、なぜ別々のブランドとして存在するのか。その答えが、これまで以上にはっきり見えてきたのです。

氷上の演出とともに、両ブランドの冷蔵庫・洗濯機が一斉に姿を現した発表会。新製品を個別に紹介するだけでなく、2つのブランドが日本の暮らしに何を届けるのかを、ひとつの舞台で伝えています。
氷上の演出とともに、両ブランドの冷蔵庫・洗濯機が一斉に姿を現した発表会。新製品を個別に紹介するだけでなく、2つのブランドが日本の暮らしに何を届けるのかを、ひとつの舞台で伝えています。

ハイアールが踏み出した、ハイエンド市場

 まずハイアールジャパンセールスの執行役員副社長・乾修明氏は、「世界から日本へ新しい家電のワクワクを届ける」というブランドコンセプトを説明しました。一方、アクアの執行役員副社長・西澤正城氏が掲げたのは、「本質的な課題をユニークな発想と技術で解決する」という使命です。

 世界の技術や発想から、日本の暮らしに新しい可能性を持ち込むハイアール。生活者の困りごとを掘り下げ、独自の答えに仕立てるAQUA。筆者には、両者が価値を生む際の出発点の違いとして響きました。

 しかも今回は、ハイアールが国内向けに初のハイエンドシリーズ「A.M.U.」を設け、大型冷蔵庫やドラム式洗濯乾燥機の高価格帯市場へ本格参入する節目でもあります。実用性と価格のバランスに加え、先進技術やデザインそのものを購入理由にしてもらおうという提案です。

今回の冷蔵庫で想定したユーザー像を並べたスライド。新生活への期待を重視するハイアールと、実生活の使い勝手や時間効率を重視するAQUAを、単純な価格の上下ではなく、購入動機の違いから整理しています。
今回の冷蔵庫で想定したユーザー像を並べたスライド。新生活への期待を重視するハイアールと、実生活の使い勝手や時間効率を重視するAQUAを、単純な価格の上下ではなく、購入動機の違いから整理しています。

「初めて」と「買い替え」で変わる、冷蔵庫に求める価値

 では、ハイアールが上位市場へ進めば、AQUAと競合してしまわないのでしょうか。起業家としても気になったこの問いに、具体的な手がかりを示していました。

 今回の冷蔵庫で想定したユーザー像は、ハイアールが「はじめてのファミリータイプ購入層」、AQUAが「ファミリータイプ2台目購入層」。前者は新生活に先進機能やスタイリッシュなデザインを求め、後者は仕事と子育ての中で実用性や時間効率を重視する、と整理されていました。

 これを単純な年齢別の商品区分と捉えるべきではないでしょう。同じ大容量冷蔵庫でも、これから始まる暮らしへの期待で選ぶのか、すでに知っている不便を解消するために選ぶのか。買う動機が違えば、響く機能や佇まいも変わってきます。

 例えば、最初の1台なら、理想のキッチンに似合うかどうかが気になるでしょう。買い替えなら、背の高い容器を入れるたびに棚を外していた経験や、冷凍室の奥で食材を見失う不便が判断基準になるかもしれません。必要なのは、容量別の品揃えだけでなく、こうした経験の違いを受け止める商品づくりなのです。

 デザインの方向性も、ハイアールはスタイリッシュでモダンな「イノベーティブ・グローバルスタイル」。AQUAは心地よい生活の用と美を両立する「イノベーティブ・日本スタイル」と分けられていました。注目したいのは、どちらにも“イノベーティブ”が付くことです。先進性を一方だけが担うのではなく、革新の届け方を変えています。

冷蔵庫の共通基盤とブランドごとの違いを説明する場面。コンパクトさや鮮度保持、冷凍容量を土台に、ハイアールは先進性と見せて使えるデザイン、AQUAは暮らしへのなじみやすさと使いやすさを打ち出しています。
冷蔵庫の共通基盤とブランドごとの違いを説明する場面。コンパクトさや鮮度保持、冷凍容量を土台に、ハイアールは先進性と見せて使えるデザイン、AQUAは暮らしへのなじみやすさと使いやすさを打ち出しています。

共通化するのは技術、分けるのは暮らしへの答え

 その違いを最も明快に表していたのが、冷蔵庫の共通プラットフォームです。「コンパクト」「鮮度保持」「冷凍大容量」を土台に据え、その上で機能やデザインを作り分ける構図が示されました。

 共通技術の核は「ボトムクーリングシステム」です。従来背面にあった冷却器を底面へ移し、食品に冷風を直接当てない間接冷却で乾燥や霜付きを抑えます。収納空間を広げ、最下段の食品を取り出す際に深くかがまなくてよい構造にもつながるといいます。

 家電を取材する立場から興味深いのは、冷却性能だけの改良ではない点です。冷却器の配置を変えることで、食品の保存状態から、収納量、使う人の動作までを見直しています。その技術的な土台は両ブランドで共有しながら、暮らしとの接点は変えているのです。

「月夜」と「KURA」に表れる、選ばれ方の違い

 ハイアールの冷蔵庫「月夜 Tsukiyo」は、上位機に、人が近づくと青い光が灯るイルミネーションや庫内のシアター照明を備えます。冷やす道具としての役割に、使うたびに気分が上がる演出を加えています。

 一方、AQUAの新フラッグシップ「KURA」は幅・奥行き各65cmで508Lを確保し、上位機には物を載せたまま高さを変えられる棚を搭載します。担当者は「だから性能だけじゃなくて、毎日の小さなストレス、これを減らすことがとても大切なんですね」と説明しました。

 もちろん「月夜」に実用性がなく、「KURA」がデザインを軽視しているわけではありません。共通の基本性能を、どんな魅力として前面に出すかが違います。2つを同じ場で見せたことで、その差を比較できたのが今回の面白さでした。

上下に独立した2つのドラムを備える「奏」の説明スライド。10kgの洗濯と別の衣類10kgの乾燥を並行できる提案で、まとめ洗いの進め方を見直します。2027年夏の発売予定として披露されました。
上下に独立した2つのドラムを備える「奏」の説明スライド。10kgの洗濯と別の衣類10kgの乾燥を並行できる提案で、まとめ洗いの進め方を見直します。2027年夏の発売予定として披露されました。

ドラムを2つに分け、洗濯の流れを変える「奏」

 洗濯機にも、この作り分けが表れていました。ハイアールが披露した「奏 Kanade」は、洗濯槽と乾燥槽を上下に独立させたDUOドラム構造です。10kgの洗濯を進めながら、別の衣類10kgを乾燥できます。発売は2027年夏を予定しています。

 1つのドラムが洗濯と乾燥を順に担当するのではなく、2つの工程を並行させます。連続して洗濯したい家庭に対し、処理の流れそのものを変える提案です。洗濯終了15分前から乾燥側を予熱する機能も備え、独立したドラムを連携させる工夫まで盛り込んでいます。検討する際は設置条件や衣類の移し替えを含む動線も確認したいところですが、単純な容量競争とは異なる発想です。

 今秋発売の冷蔵庫とともに、来年の製品まで見せたことも、「A.M.U.」が目指す家電像を伝えるうえで意味があると感じました。

「オキシ漬け」と「オキシ洗いコース」の手順を比較したスライド。指定のオキシクリーンと洗剤を使い、バケツでのつけ置きや衣類の移し替えにかかる手間を減らす提案に、生活者の不便を掘り下げるAQUAの姿勢が表れています。
「オキシ漬け」と「オキシ洗いコース」の手順を比較したスライド。指定のオキシクリーンと洗剤を使い、バケツでのつけ置きや衣類の移し替えにかかる手間を減らす提案に、生活者の不便を掘り下げるAQUAの姿勢が表れています。

「オキシ洗い」が引き受ける、暮らしのひと手間

 対してAQUAの「まっ直ぐドラム」26年モデルは、「オキシ洗いコース」を新搭載します。指定のオキシクリーンと洗剤を使い、約40℃の温水で効果を引き出します。バケツにお湯を張ってつけ置きし、衣類を洗濯機へ移す準備や後片付けを減らす仕組みです。

 もっときれいにしたいから、面倒でもひと手間かける。その頑張りを、家電の側で引き受けようというのです。容量や洗浄力の数字だけでは見えてこない、生活者を観察するブランドの姿勢が、こうした機能には表れます。

AQUAの特別エディション「BRONZE GOLD」を紹介するスライド。わび・さびを着想源とする表面表現に加え、小ロットの特別カラーへ展開する構想も示され、冷蔵庫をインテリアとして選ぶ可能性を伝えています。
AQUAの特別エディション「BRONZE GOLD」を紹介するスライド。わび・さびを着想源とする表面表現に加え、小ロットの特別カラーへ展開する構想も示され、冷蔵庫をインテリアとして選ぶ可能性を伝えています。

AQUAが示した、使い勝手の先にある可能性

 また、AQUAが展示した「BRONZE GOLD」の特別エディションも興味深いものでした。わび・さびや経年変化の美学を着想源とする表現に加え、担当者は今後、取引先のオリジナルモデルや暮らしに合わせた特別カラーへ展開する考えを説明しました。小ロットの要望に応える、新しいビジネスモデルの第一歩だといいます。

 使いやすさを突き詰める一方で、空間に置きたくなる魅力も磨いています。AQUAの役割は、普及価格帯を埋めるだけではないことが伝わってきます。

 経営の視点で見ると、今回の戦略は、技術を共有する合理性と、顧客への提案を分ける意味を両立させようとしています。冷蔵庫のように、共通化できる土台は共有し、選ばれる理由に関わる部分へ違いを作ります。同じグループ内で顧客を奪い合うだけではなく、異なる購買動機に応え、選択肢を広げる狙いが読み取れます。

 ただし、共通技術に同じアンバサダーとなれば、2ブランドの違いが伝わりにくくなる可能性もあります。だからこそ今回、製品を並べるだけでなく、ユーザー像やデザインの考え方まで横並びで説明したことに意味があったのではないでしょうか。

両ブランドの製品を背景に進められたトークセッション。性能だけでなく、外観や使う場面への感想が交わされ、技術の話を日々の暮らしへ引き寄せる機会になりました。2つのブランドを同じ舞台で伝える構成も印象的です。
両ブランドの製品を背景に進められたトークセッション。性能だけでなく、外観や使う場面への感想が交わされ、技術の話を日々の暮らしへ引き寄せる機会になりました。2つのブランドを同じ舞台で伝える構成も印象的です。

羽生結弦が、異なるブランドの挑戦をつなぐ

 そこで改めて、羽生さんの存在を考えてみたいと思います。

 新CMでは、AQUAの底から冷やす技術をジャンプの“脚元”に重ね、水平なドラム構造を身体のバランスで表現しています。技術の説明を、目に留まり、記憶に残る動きへ置き換えています。今回の起用は、製品の横に著名人が立つだけのものではありません。

 発表会で羽生さんは、自らが「過去の自分を超えたり常識を塗り替えたり」することに取り組んでいると語り、両ブランドが常識に捉われず挑戦する姿に共感を示しました。別々の暮らしを提案する2ブランドを、挑戦する姿勢という共通項でつなぐ。その役割を担っていたように筆者には見えました。

変えようとしているのは、日本での「見られ方」

 起業家の立場で注目するのは、発表会を直近の売上だけで評価できないことです。いま冷蔵庫や洗濯機を必要としていない人にも、次の買い替え時に思い出してもらえるでしょうか。そのためには、仕様表を読ませる前に、興味を持ってもらう入口が必要です。氷上での一斉披露は、その入口と製品の記憶を結びつける仕掛けとして理解できます。

 高価格帯へ踏み込むなら、機能を増やすだけでは足りません。「何ができるか」に加え、「なぜこのブランドを選ぶのか」まで伝える必要があります。氷上の演出、製品の佇まい、アンバサダーの表現を揃えた今回の発表会は、日本での見られ方を変える試みでもあったのでしょう。

 むろん、華やかな発表会が市場での成功を保証するわけではありません。家庭で使ったときの満足度や耐久性、購入後のサポートまで含め、価格に見合う価値があるかは、これから生活者が判断します。

 それでも、2つのブランドを一緒に見せることで、その違いを際立たせた意義は大きいと思います。会場に並んでいたのは、単なる冷蔵庫と洗濯機ではなく、これからどんな暮らしを届けたいかという、それぞれの答えでした。

 ハイアールグループを、もう「価格」だけで測っていては現在地を見誤ります。氷上で披露された新製品の向こうに、筆者が見たのはその変化です。

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ロケット級の飛びは本当?新「ZXi RKTドライバー」をアマチュアが本音試打
滝田勝紀
滝田勝紀
VAGUE家電統括プロデューサー
モノ雑誌の編集に15年以上携わり『デジモノステーション』編集長を歴任。現在は家電スペシャリストとして、国内外の最新テクノロジーを長年取材。All About家電ガイドやMakuakeエバンジェリスト、楽天ROOM公式インフルエンサー(フォロワー56万人超)など幅広く活動する。海外取材経験も豊富で、欧州家電メーカー本社や世界最大級の見本市「IFA」への造詣も深い。また、Z世代向けメディア運営やPR会社経営の傍ら、インテリアスタイリスト窪川勝哉氏とのユニット「𝒾𝓃𝒞𝒶𝒹𝑒𝓃𝓏𝒶」で家電開発も手掛ける。機能とデザインの両面から、心地よい暮らしのあり方を提唱している。

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