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次世代のポルシェ「911」にもMTは残る!? 自然吸気エンジン搭載の「GT3」はどうなる? 開発責任者が語った「911」の未来【Behind the Product#47】

次世代「911」にもMTは残る!? モーザー氏が語った“理想の「911」”

 そして今回、「911」の未来を考える上でもうひとつ興味深かったのが、MT(マニュアルトランスミッション)についてのコメントです。

 松任谷正隆氏とのトークセッションで、「スポーツカーに再びMTを求める流れがあるのではないか?」と問われたモーザー氏は、明確に回答しました。

「MTは『911』にとって非常に重要な要素です。私たちはMTを残していきたいと考えています」

 現在の“Tハイブリッド”は、PDK内部に電気モーターが組み込まれているため、MTを組み合わせることができません。「だからこそMTを残すためには、ハイブリッド化されていない「911」も必要になる」とモーザー氏はいいます。

 現在の日本仕様では、「911カレラT」や「911 GT3」にMTが設定されているほか、米国向けにはMT仕様の「911カレラS」も投入されています。

 そして最後に、モーザー氏は、「これが最後のMTの『911』ではありません」と、今後もMTの「911」をラインナップしていく意思を示しました。

 もちろん、これにより次世代「911」の具体的なグレードラインナップや発売時期が正式に明かされたではありません。それでも、電動化が進む「911」の将来像を考えれば、開発責任者自身がMTを重要な要素として位置づけ、継続する意向を示したことは注目に値します。

 さらに興味深いのは、モーザー氏自身が考える“理想の「911」”です。

「私にとって完璧な『911』は、ピュアで、MTで、自然吸気式。この組み合わせが『911』には最高の組み合わせだと思っています」

 これはあくまで、モーザー氏個人の好みとして語られたものですが、“Tハイブリッド”を導入し、「911」の電動化を推進する立場にある人物の言葉だけに印象的です。

フランク・モーザー氏を囲んでのメディア向けのラウンドテーブル
フランク・モーザー氏を囲んでのメディア向けのラウンドテーブル

 最新技術を受け入れる一方、自然吸気式エンジンやMTが生み出すピュアなドライビング体験にも価値を認める……いずれかを否定するのではなく、「911」の中にそれぞれの“居場所”をつくることが、ポルシェ流の進化なのでしょう。

●電動化しても「718」は「718」 ポルシェの未来に共通するもの

 そうした考え方は、「911」に限ったものではないようです。現在、開発が進められている電動駆動の「718」シリーズを、モーザー氏は次のような表現で解説しました。

「『718』は、ただの電気自動車にはなりません。ポルシェ初の電動2ドアスポーツカーです」

 軽量化や実用性、デザインに力を注ぎ、電気自動車になっても“本物の「718」”として成立させることを目指しているといいます。

 また、「718」は電動化後も「911」より手の届きやすい価格帯とし、ポルシェの2ドアスポーツカーへのエントリーモデルという役割を維持する考えも示されました。その上でモーザー氏は「他の電気自動車と比べても軽量で、ハンドリングは非常に正確で自然なものになる」と説明します。

 そして、“ポルシェらしさ”は、「911」や「718」だけのものではないとモーザー氏はいいます。

 電動化された「カイエン エレクトリック」を例に挙げ、大きく重いクルマであっても、「正確で扱いやすく、実際の重量より軽く感じられることこそポルシェらしさ」であると説明。モデルごとの性格は異なっても、開発時には共通した理念が貫かれているといいます。

* * *

 自然吸気か、ターボか。ハイブリッドか、電気自動車か。そしてMTを残せるのか……今後のポルシェには、これまで以上に難しい選択が待っているのでしょう。

 しかし、モーザー氏の話を聞いていると、ポルシェはその答えをパワートレインだけで決めようとはしていないことが分かります。変えるべき技術は変える。しかし、ステアリングを握ったときに感じる“ポルシェらしさ”は変えない。ポルシェを、そして「911」の本質を知るモーザー氏ゆえ、その思いがこもった、この日の話はとても重みが感じられました。

「『911』に革命は必要ない」というモーザー氏の言葉は、「911」だけでなく、これからのポルシェそのものを表しているのかもしれません。

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村田尚之
村田尚之
フリーランスライター・フォトグラファー
東京都出身。学生時代から雑誌の編集に携わる。自動車専門誌やメーカー広報誌などを手がける編集プロダクションを経て、2002年にフリーランスライター・フォトグラファーとして独立。クルマや旅客機、鉄道など乗り物関連の専門誌やニュースサイトを中心に執筆・撮影。『羽田空港アーカイブ1931-2023』(徳間書店)、『ANAの本。』(誠文堂新 光社)など書籍の制作にも携わる

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