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次世代のポルシェ「911」にもMTは残る!? 自然吸気エンジン搭載の「GT3」はどうなる? 開発責任者が語った「911」の未来【Behind the Product#47】

「911」に革命は必要ない……未来へ残すべきDNAとは?

 2026年9月12日、千葉県木更津市の「ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京(PEC東京)」で開催されたイベント「Sportscar Together Day」。

 同イベントに合わせて来日したのが、ドイツ本国のポルシェAGのバイスプレジデントであるフランク・モーザー氏です。1996年からポルシェに在籍し、現在は「911」と「718ボクスター/ケイマン」という同社を代表する2ドアスポーツカーの開発と進化を統括しています。

 今回が2度目の来日となるモーザー氏は、日本人のスポーツカーやポルシェに対する愛情を強く感じているといいます。ご自身も、初めてのカンパニーカーだったタイプ“993”の「GTS」には特別な思い入れがあると語るほどのスポーツカー愛好家。こうしたエピソードからも、モーザー氏のポルシェやスポーツカーに対する深い愛情がうかがえます。

 その一方で、モーザー氏にとって、60年以上の歴史を持つ「911」を未来へつなぐ仕事は、決して簡単なものではないようです。ステージイベントでモーザー氏は次のように話しました。

「新しい『911』の未来を形づくる一方で、このクルマが持つユニークなDNAをできる限り維持しなければなりません。『911』に必要なのは革命ではなく進化です。小さなステップが新しい『911』をつくっていくのです」

 では“「911」のDNA”とは、どんなものなのでしょう?

 別途、開催されたメディア向けのラウンドテーブルでは、「アイコニックなデザイン」と「卓越したパフォーマンス」に加えて、「日常での使い勝手のよさ」、さらに社会に広く受け入れられていることも「911」の特徴だとモーザー氏は説明しています。

「私にとって『911』は、2ドアスポーツカーそのものを定義する存在です」

 モーザー氏はそのように話し、これらの特徴を維持しながら未来へ継承することこそが、「911」開発の難しさだと語りました。

世界的なポルシェのイベント「Sportscar Together Day」の会場風景
世界的なポルシェのイベント「Sportscar Together Day」の会場風景

 実際、「911」はその歴史の中で、決して同じ技術だけを守り続けてきたわけではありません。エンジンは空冷式から水冷式へと変わり、“991.2”世代では「カレラ」系が自然吸気からターボへ。そして、最新の“992.2”世代では「911カレラGTS」に“Tハイブリッド”が導入され、最高出力711psを発生する「911ターボS」にも同システムが使われています。

 モーザー氏によると、“Tハイブリッド”を採用した大きな理由は、二酸化炭素排出量を低減しながら出力を高め、「911」を将来に適応させていくことにあるといいます。

 このように、ポルシェにとって新技術の導入は、「911」らしさを捨てるものではなく、「911」を「911」のまま未来へ残すための手段でもあるわけです。

●自然吸気式の「911 GT3」は2027年末がひとつの節目に?

 一方、「911」の中でも変化が難しいモデルがあります。「911 GT3」です。現行型「GT3」の開発において、ポルシェが最も重視したことのひとつが、「4リッター水平対向6気筒の自然吸気エンジンを残すことでした」とモーザー氏は振り返ります。

 しかし、その実現は、容易なものではありませんでした。現行モデルの開発では、欧州で約30%、北米では約40%との排ガス削減に対応する必要があり、そのために搭載した触媒システムの追加などにより、出力面でも厳しい条件を突きつけられたといいます。

 それでも最高出力510psを維持し、さらにデュアルクラッチ式トランスミッションの“PDK”、6速MTともに、ギアレシオを8%ショート化することで加速レスポンスや俊敏性を高めています。

 とはいえ、今後はさらに厳しい規制が待っています。モーザー氏によると、ユーロ7などの排ガス規制に加え、騒音規制も自然吸気エンジンにとって大きな課題になると指摘。その上で、現在の自然吸気式「GT3」については「おそらく2027年末までがひとつの節目になる」との見通しを示しました。その先については、「新しい、いいアイデアが必要になる」と指摘します。

 当然、気になるのは、将来的に「GT3」がターボ化、あるいはハイブリッド化される可能性です。この質問に対してモーザー氏は、「自然吸気式エンジンそのものが禁止されるわけではない」と前置きしつつ、「排ガスを減らしながら出力を高め続けるのは難しい」と説明。ターボチャージャーや“Tハイブリッド”は選択肢になり得るものの、「現時点で将来のパワートレインが決まっているわけではありません」と回答しています。

「Sportscar Together Day」ではフランク・モーザー氏を交えてのトークショーも開催
「Sportscar Together Day」ではフランク・モーザー氏を交えてのトークショーも開催

 ただ忘れてはいけないのは、モーザー氏が「GT3」の価値を“馬力”だけでとらえていないことです。

「GTカーのパフォーマンスは、単にエンジンパワーだけに左右されるものではありません。エアロダイナミクス、ハンドリング、サスペンション、ダウンフォース、ステアリング、それらすべてを組み合わせた結果なのです」

「GT」モデルは、ポルシェのモータースポーツ部門と共同で開発され、そこで得られた技術を市販車へフィードバックしているといいます。また、「GTS」の方が出力で「GT3」を上回るようになった現在でも、「『GT3』は正確なステアリングやハンドリング、モータースポーツ由来の技術によって、独自の存在であり続けます」と強調します。

 将来、パワートレインが変わったとしても、「GT3」でしか味わえない走りをどう残すか? ポルシェにとって、そこが何より重要な懸案事項なのかもしれません。

Next次世代「911」にもMTは残る!? モーザー氏が語った“理想の「911」”
Gallery 【画像】次世代「911」にもMTは残る!? 「GT3」や“Tハイブリッド”などポルシェの最新スポーツカーを写真で見る(30枚以上)
村田尚之
村田尚之
フリーランスライター・フォトグラファー
東京都出身。学生時代から雑誌の編集に携わる。自動車専門誌やメーカー広報誌などを手がける編集プロダクションを経て、2002年にフリーランスライター・フォトグラファーとして独立。クルマや旅客機、鉄道など乗り物関連の専門誌やニュースサイトを中心に執筆・撮影。『羽田空港アーカイブ1931-2023』(徳間書店)、『ANAの本。』(誠文堂新 光社)など書籍の制作にも携わる

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