スーパーカーの象徴「リトラクタブル」ライトはどうしてなくなった? 隠れるヘッドライト3選
リトラクタブルライトの盛衰の理由はアメリカの法律にあった!?
固定式ヘッドライトの全体ではなく、一部のみをカバーやルーバーなどで隠し、薄目を開けたようにも見えるスタイルは、筆者の記憶が確かならば、1960年代初頭からイタリアのカロッツェリア「ベルトーネ」にて、当時若くしてチーフスタイリストに就任したばかりのマエストロ、ジョルジェット・ジウジアーロ氏が、いくつかのコンセプトカーで実験的に採用されたのが始まりと思われる。

●ライトの一部をカバーやルーバーで隠すタイプ
出世作アルファロメオ「ジュリア・スプリントGT」において「段つき」スタイルのフロントマスクを発案したのは、マエストロ曰く「ノーズを低く見せたかったから」とのこと。このヘッドライトのデザイン処理も、目的は同じとみて間違いあるまい。
また、マルチェッロ・ガンディーニ氏がベルトーネのチーフの座に就いたのちには、アルファロメオ「モントリオール」やランボルギーニ「ハラマ」などの市販モデルにも正式採用されていた。
わが国では「セミ・リトラクタブル」などとも呼ばれるこの様式は、ライトユニット全体を作動させる「リトラクタブル」式ではモーターなどの収納機構にトラブルを起こし、ヘッドライトが点灯不能になってしまうトラブルも避けられるほか、コストや重量の点でも有利となることから、ひところはなかなかの隆盛を見せたようだ。
かつてこのスタイルのパイオニアのひとりであったジウジアーロがベルトーネを離れ、自ら「イタルデザイン」社を興したのちに手掛けた初代いすゞ「ピアッツァ」や、ホンダ「バラード/バラードスポーツCR-X」前期型など1980年代の国産車でも採用されることになった。

●ボディやボンネットに収納されるタイプ
ユニット全体が作動し、ボディに収納されるヘッドライトは「リトラクタブル」ないしは「ポップアップ」などと呼ばれる。後者のライトはランボルギーニ「ミウラ」やポルシェ「928/968」のように、消灯時には上方を向いたかたちで露出しているので、ここでは完全に隠れる前者、リトラクタブル式についてお話ししたい。
生産モデルで最古の採用例となったのは、アメリカで1935年に登場した「コード810/812」。これはデザイン的な革新性をアピールすることが目的で、そのあとの追随者は「ビュイックY-Job(1938年)」など、一部のデトロイト製コンセプトカーなどに限定された。
しかし1960年代を迎えて、とくにアメリカの法制が求める対歩行者安全とエアロダイナミクス、および先鋭的な低いノーズを両立するために「必要な時だけ、法規制を満たす高い位置に露出するヘッドライト」としてリトラクタブル式が復活を遂げることになった。
1966年デビューのマセラティ「ギブリ」(初代)や、翌年登場したフェラーリ「365GTB/4デイトナ」あたりを皮切りに、イタリアのスーパーカーではセオリーのごとく採用。ヨーロッパやアメリカ、そして日本でも一大ブームを巻き起こしたのだが、1990年代になると、これもアメリカの一部の州からヘッドライトの常時点灯を求める法制が発生したことから、急速に衰退してしまうことになった。
蛇足ながら日産「フェアレディZ/ニッサン300ZX(3代目Z31シリーズ)」に採用された「パラレルライジングヘッドランプ」は、同時代のピアッツァやCR-Xに近いものとも思われるが、ヘッドライトユニット自体が動くのでリトラクタブルの仲間とみてよいだろう。
リトラクタブル式やポップアップ式のヘッドライトについては、その作動スタイルにもバラエティがあるので、いずれまたの機会にもっと掘り下げてみようと考えている。
page
- 1
- 2
VAGUEからのオススメ
ポータブル電源が都心で過ごす夜を変える──Jackeryがかなえる“オフグリッド”なスポーツ観戦【PR】