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日本でクラシック「ミニ」が電動化された! 試乗して分かった「アビゲイルEVミニ」の乗用車としてのポテンシャルとは

「EVミニ」とフィアット「500クラシケev」との違いとは

 ところで今回、古き良きクラシック・ミニをベースとするEVに乗るにあたり、筆者が比較対象として最初に連想したのは、一昨年夏にプロトタイプを、そして昨年秋には市販モデルも試乗の機会を得た「フィアット500クラシケev」だった。

 愛知県・名古屋市の「チンクエチェント博物館」のプロデュースにより、イタリアで製作されるこの小さなEVは、2基のリチウムイオンバッテリーを搭載し、総電力量は10kw。1回の充電による走行距離は、最大で約90kmとされている。

 その乗り味は、まるで遊園地の電動遊具を公道で走らせているかのようなもの。端的にいってメチャメチャ楽しいのだが、現在の公道で使用する実用的な乗り物としては、それ相応を覚悟が必要である。まして500クラシケevで高速道路に乗ろうという勇気など、臆病者の筆者は持ち合わせていない。

ショッピングセンター駐車場の充電コーナーなどで充電している姿は、やはりちょっと違和感がある
ショッピングセンター駐車場の充電コーナーなどで充電している姿は、やはりちょっと違和感がある

●古き良き“クーパーS”を上回るパフォーマンス

 あくまで筆者の私見ながら、500クラシケevが実質的には「公道も走行可能なおもちゃ」であるのに対して、こちらのアビゲイルEVミニは、オリジナルであるガソリンエンジン車におけるフィアット「500」とクラシック・ミニの違いそのままに、格段に本格的な「乗用車」であることを求められてしまうかに感じられる。

 そして、某私鉄駅前ロータリーの待ち合わせにて初めて目の当たりにしたアビゲイル EVミニは、かつての日本におけるローバー・ミニと同じく街並みに溶け込んでいた。

 今回の試乗車両は、アビゲイルがPR活動などに使用するデモカーであることから、フロントマスクやヘッドライトなどに当代最新のEVコンバージョン車であることをアピールするようなモディファイが施されてはいるものの、基本のルックスは前世紀末に日本でも大人気を博したローバー・ミニと変わらない。

 小さなドアを開き、地面と大差ないほどに低い着座位置の革張りシートに腰を下ろすと、ローバー・ミニの2眼アナログメーターに代わって、ナビシステムのような7インチのモニターが置かれていることで、このクルマが現代に作られたEVであることを思い出す。

 ここで気になるのは、通常のEVには見られないシフトレバーがあること。変速は停車時(Nレンジ)に限定されるが、実は前進5速の機械式トランスミッションが組み込まれており、通常の市街地走行時には「3速」、高速道路中心のドライブでは走り出す前に「4速」をセレクトしておくのがデフォルトのようだ。

 始動するには、ステアリングコラム脇のイグニッションキーを目いっぱいまでひねり、まずは昔のオーディオ機器のような円柱形の回転式セレクターがNレンジに入っていることを確認して「3速」にシフト。そしてセレクターをDレンジに回し、スロットルを踏み込むと、見た目クラシカルなミニは音もなく走り出す。

 そして駅前のロータリーから街道に出て、スロットルを深めに踏み込んでみると、予想以上の加速感であっという間にスピードが乗る。

 車検証の実測値を見ると、前軸重360kg/後軸重330kg(ベースのローバー・ミニのガソリンエンジン車はそれぞれ470kg/270kg)。つまり、車両重量は重いバッテリーを積みつつもガソリン版より50kg軽い、690kgに収まっている。

 この軽いボディに72ps相当のパワー。しかも低速からトルクの立ち上がるモーターの特質もあいまって、速さはなかなかのものである。取材日は雨から雪へと変わる荒天だったため思う存分に味わうことはかなわなかったが、それでも「元祖ゴーカートフィーリング」と称されるハンドリングも、片鱗だけはかいま見られた。

 そして、54Kwのこのクルマでこれだけ速いのならば、90Kwを標榜するBMW「ミニ・リチャージド」は恐ろしいまでのパフォーマンスが予想されるかたわら、シャシやブレーキなどにも相当なてこ入れが必要になるだろうということにも、思いが及んだのだ。

* * *

 アビゲイルEVミニは、日本発のスタートアップ企業が初めて製作したコンバージョン車両ながら、予想外の仕上がりを見せてくれた。とはいえ、今回の試乗車両はまだプロトタイプの要素が強い個体であったので、現代の「乗用車」としてシビアな目で見れば弱点がないわけでもなかった。しかし、今後カスタマーに納められる車両では改良が施されていることだろう。

 日本国内のスタートアップ企業から生まれた「古くて新しいクラシック・ミニ」に、今後も期待したいと考えるのである。

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