VAGUE(ヴァーグ)

日本でクラシック「ミニ」が電動化された! 試乗して分かった「アビゲイルEVミニ」の乗用車としてのポテンシャルとは

クルマ好きが高じてスタートしたMINIの電動化

 2022年1月、BMWはクラシックMINIを電動化する「MINI Recharged」プロジェクトの概要について初公開した。これは、すでにクラシックMINIを愛用している愛好家のため、今後とも乗り続けていただこうとする活動の一環とされている。

 ただしこのプロジェクトの対象となるのは、現時点ではイギリス国内限定とのこと。しかし、英国人と同じくらいにクラシックMINIを愛し、実は1980年代の「ローバー・ミニ・クーパー」復活にも深く関与していた日本でも、クラシックMINIをベースとするバッテリーEVコンバージョン車両を製作・販売するスタートアップ企業が生まれていた。

 その会社は東京都下に本拠を置く「アビゲイル」。そしてクルマの名は「アビゲイルEVミニ」である。

近未来的なヘッドライトを装着した「アビゲイルEVミニ」
近未来的なヘッドライトを装着した「アビゲイルEVミニ」

●自動車エンスー的好奇心から始まったスタートアップ

 BMWは2018年春「ニューヨーク・モーターショー2018」にて、クラシックMINIをEV化したワンオフ・コンセプト「クラシックMINIエレクトリック」を発表した。

 このコンセプトカーに対する反応が上々だったことから、MINIの英国オックスフォード工場内に専任チームを発足。EVへのコンバートを可能にするプロジェクト「ミニ・リチャージド(MINI Recharge)」が計画されたとのことである。

「ミニ・リチャージド」プロジェクトに使用される電気モーターは、最高出力90Kw(約122ps)という、クラシック・ミニとしては強烈なパワーを発生。0ー100km/h加速にして、約9秒の走行性能を可能にするという。

 また、バッテリーの容量については現時点で公開されていないようだが、最速6.6kWで充電を可能とし、フル充電での走行可能距離は99マイル(160km弱)を目標としているとのことである。

 一方、日本から登場した「アビゲイルEVミニ」は、最高出力52kW(約72ps)とかなり常識的。かつてのBMCミニ・クーパーの最強版「1275S」の75psに、ほぼ拮抗するパワーを持つ。

 また、走行用リチウムイオンバッテリーの容量は18kWhで、1回の充電による走行可能距離は最長で140km(社内計測WLTCモード相当)。充電規格は「J1772」の普通充電器を使用するとのことである。

 アビゲイルの代表取締役、飯田泰介さんは、若き日よりアストンマーティンの元祖V8を愛用するなど、かなり重度の自動車愛好家。ミニをベースとするEVの製作は、ご自身のアシ車を、せっかくならば面白いものにしてみたいというシンプルな願望から始まったという。

 そして古き良き「小さな高級車」ヴァンデン・プラ・プリンセス1100/1300や、クラシック・ミニをベースにしたEVなんて面白いのではないかと思い立ったのだが、友人がミニで作ってみたいと本気でいい出したことから、まずはローバー・ミニで試作車を開発してみることにした。

 ただし飯田さんは、これまで自動車業界とは無縁のビジネスを展開されてきた人物とのことながら、それでもEVについて一から猛勉強するかたわら、ミニに好適なコンポーネンツを集め、それらの供給体制も確保したという。

 そんな経緯から始まったアビゲイルEVミニゆえに、顧客の好みもエンスー的になることを前提としているようだ。個々の購入者の注文ごとのビスポークで、趣味、ライフスタイル、使用目的などに合わせて、こだわりのご要望に応えながら1台1台製作する。

 それゆえ少量の職人作業であることに加え、ベース車両であるローバー・ミニの確保も容易ではなくなってきていることから、2022年度は限定12台のみオーダーを受けるという。

 またオーナーの持ち込み車両のコンバージョンについても、国土交通省認可の都合により車両型式に一定の条件があるものの、相談には応じられるとのことである。

 気になる車両価格(消費税込)は、ベーシックパッケージで767万8000円。加えて「CHAdeMO(チャデモ)」急速充電器などのオプションも用意されるうえに、現在クーラーの開発も鋭意進行中とのことである。

Next「EVミニ」とフィアット「500クラシケev」との違いとは
Gallery 【画像】クラシックな出で立ちのまま電動化された「アビゲイルEVミニ」を見る(24枚)
通勤ラッシュで「前抱え」はどうなの!? 持ち方問題に賛否! みんなの意見は?

page

  • 1
  • 2

RECOMMEND