無料のスマホナビがあるのになぜ売れる!? 市販「カーナビ」が令和の時代にも売れ続ける理由とは
カーナビとしての能力もスマホと車載ナビでは大きな差がある
そして、これは使っているとわかることなのですが、カーナビとしての能力でも車載ナビとスマホでは大きな差があります。
ひとつが測位精度です。
スマホは測位にGPSからの電波だけを利用するのを基本としていますが、車載ナビは車速パルスやジャイロセンサーなども併用しています。よって、車載ナビはGPSが測位できなくなったときでも自車位置を見失うことはなく、これはビル街や山間部に出掛けた時の安定した測位に役立ちます。さらに大きめの立体駐車場や地下駐車場から出たときでも進行方向を案内できるメリットにもつながります。
ふたつめは地図データの充実度です。スマホで使うナビアプリは、通信でデータを得ていることもあり、できるだけデータを軽くして対応しています。
そのため、Googleマップでは交差点拡大図や高速道路のJCTでのガイドは表示しません。Yahoo!ナビではこれらを表示するものの、地図に表示される内容はカーナビ内にデータを持つ車載ナビに比べるとかなり削っています。また、車載カーナビでは常識である、道路の高低差認識にもスマホのナビアプリでは非対応です。
とくに交差点拡大図では、カーナビの案内の仕方が日本と欧米では異なるという、社会インフラの違い、あるいは文化の違いが背景にあります。
欧米の道路は細街路を含むすべてにストリート名が付与されるため、交差点で進むべきストリート名を案内すれば済みます。欧米生まれのGoogleマップやAppleカーナビが、いずれも交差点拡大図を表示しないのはこうした背景があるからなのです。
対する日本はストリート名は一部の道路しか付与されていませんから、交差点拡大図を表示して進行方向をガイドしなければなりません。日本生まれのYahoo!ナビでは交差点拡大図を備えているのもここに理由があるのです。
ルートガイドでも音声ガイドで違いがあります。
スマホによるナビアプリでは電子合成音となっていますが、車載ナビではPCM録音した鮮明な音声でガイドされます。これはストレスなくルートガイドを受ける意味でも大きな差となることは間違いありません。さらに大型施設の入口情報に非対応であるナビアプリも多く、入口とはまったく違う場所に案内されることもあります。つまり、ナビアプリではこれらのデータの収録を最小限とすることで送信をしやすくしているのです。
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一方で、スマホのナビアプリが車載ナビよりも優れているのは、目的地の検索能力です。車載ナビは大半がメニューから入るなど手間がかかりますが、スマホでは音声で施設名などを入力すればほとんどが一発で探し出せます。また、地図データの新鮮度も常にサーバーから最新の地図データを取得するスマホに軍配が上がります。
とはいえ、まだ少数派ですが、最近は車載ナビもコネクテッド化が進んだことで、音声による目的地検索を実現したり、最新の地図データをリアルタイムでサーバーから取得してデータ更新できるように進化しています。そして、車載ナビはいま、その役割を運転支援の一部を司る重要な役割を果たしつつあります。
とくに自動運転における高精度な測位は車載ナビでしかできないものであり、緊急時の自動通報を行う際の位置情報や車両状況を伝えられるのも車載だからこそ可能になるものです。その意味でスマホのナビアプリが普及したとしても車載ナビは決してなくなりはしません。むしろ、車載ナビは単にルートガイドにとどまらず、車両側と連携したインフォテイメントシステムとして進化していくことになるのです。
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