なぜBMWは電気自動車だけではなく燃料電池車も研究!? BMWグループのツィプセ会長に聞いた「近未来の戦略」とは
来日したBMW AG会長 オリヴァー・ツィプセ氏にインタビュー
「コンニチハ」
ラウンドテーブルの冒頭、来日したBMWグループのオリヴァー・ツィプセ会長は、そう日本語で挨拶した。
「皆さんとお目にかかれて本当に嬉しい。日本は、私の心のなかでもとても特別な場所で、1990年代初頭に初めて来日して以来、日本を訪れることをいつも楽しみにしてきました」
さすがにここからは英語に切り替わったが、今度はまるで英語を母国語としているかのような、とても流暢な話し方だった。ちなみにドイツ出身のツィプセ会長はアメリカのユタ大学でコンピューターと数学を学んだ経験を持っている。

今回の来日では、他国を訪問するときよりもゆったりとした日程で滞在。トヨタやデンソーと会合を持ったほか、京都や奈良県の吉野にも足を伸ばしたという。
ちなみにツィプセ会長のご夫人は日本人で、デンソーには30年ほど前に勤務したことがある模様。さらにいえば、私が2023年2月中旬に参加したiX5ハイドロジェンの国際試乗会(詳細は後述)でも、日本人メディア関係者が参加していることを知ると、ツィプセ会長はわれわれと懇談するためにわざわざ会場のベルギー・アントワープまで足を運んだほど。つまりに、知日派にして親日派。それがツィプセ会長の素顔といって間違いない。
もっとも、今回の訪日は「ただ好きだから訪れた」わけではなく、BMWの長期戦略と深く関わっていると推測される。とりわけ、BMWが積極的に研究開発を進めている燃料電池車(FCV)は重要なテーマだったはずだ。

私が2023年2月にベルギーで試乗した「iX5ハイドロジェン」はX5ベースのFCVで、今後100台ほどが生産され、各国で実証実験などに用いられる。
もっとも、その完成度は高く、航続距離はおよそ500km程度と長いうえ、前後あわせて401psを発揮するモーターがもたらす加速感は頼もしい限り。乗り心地はこれまで乗ったX5のなかでもベストと思える快適さだったし、FCV化に伴って室内スペースが浸食されていることもない。もしも価格さえ適正であれば、このまま販売してもかなりのヒット作になるのではないかと思える仕上がりだった。
そしてiX5ハイドロジェンの心臓部にあたる燃料電池を供給しているのが、日本のトヨタ自動車なのである。
両社は2015年に共同でFCVを開発する契約を締結。BMWは燃料電池の開発や生産をトヨタに委ねるいっぽうで、トヨタ製燃料電池を自動車用として使いやすい燃料電池スタックとしてまとめあげる作業はBMW社内で行っている。
なにからなにまで自社製とすることなく、必要に応じてサプライヤーも活用するのがBMW流なのである。したがって、今回の訪日は昨年末にBMWジャパン代表に就任した長谷川正敏新社長との打ち合わせに加え、2023年7月に3台が日本上陸を果たすiX5ハイドロジェンの下準備、さらには提携先であるトヨタとの関係強化などが主な目的だったと考えられるのだ。
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