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なぜBMWは電気自動車だけではなく燃料電池車も研究!? BMWグループのツィプセ会長に聞いた「近未来の戦略」とは

なぜBMWはBEVだけでなくFCVの開発にも取り組んでいるのか

 それにしても、ヨーロッパや中国で電気自動車(BEV)のシェアが急速に伸びつつあるいま、なぜBMWはFCVの開発に取り組んでいるのか?

「FCVは、CO2を排出しない自動車社会を完成させる、最後の構成要素といえます」とツィプセ会長。「ひとつの技術だけでカーボンニュートラルな社会を実現できるわけではありません。しかも、FCVはBEVに近いドライビングフィール、それに“給油”がエンジン車並みに容易という、ふたつのメリットを有しています」

BMW「X5」ベースの燃料電池車「iX5ハイドロジェン」とオリヴァー・ツィプセBMWグループ会長
BMW「X5」ベースの燃料電池車「iX5ハイドロジェン」とオリヴァー・ツィプセBMWグループ会長

 今回のラウンドテーブルでは触れられなかったが、ベルギーの国際試乗会では「BEVだけを想定したインフラに投資するよりも、BEVとFCVのそれぞれに必要なインフラを整備したほうが、トータルのコストは低く抑えられる」との見通しを紹介し、FCV投入の正当性を訴えていた。

 これはドイツをベースにした試算で、EVが2000万台以上、そしてFCVも数百万台単位まで普及した状況を前提としたものだが、EV用インフラ施設への投資が高騰する理由として「電力網の強化が必要となる」ことが挙げられていたので、基本的な条件は日本も変わらないはず。つまり、EVだけに頼る“一本足打法”には、インフラ面にも落とし穴があったのである。

 もっとも、今後BEVがゼロエミッションビークル(ZEV)の主流になるとの見通しはBMWとて同じこと。そのいっぽうで、同社の現行ラインナップはもともと多種多様なパワートレインの搭載を想定したもので、ひとつのアーキテクチャーでエンジン車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、BEV、FCVなどを作り分けることができる。こうした戦略を、BMWは「パワー・オブ・チョイス」と呼んでおり、すでに「7シリーズ」、「4シリーズ」、「X3」、「X1」などで展開。エンジン車とBEVの両方を選択できる環境を整えている。

 さらにBMWで驚くべきは、エンジン車とBEVでひとつのアーキテクチャーを共用していながら、性能面でなんの妥協もしていない点にある。

 たとえば7シリーズのBEVである「i7」は101.7kWhの大容量バッテリーを搭載して1充電当たり650kmを達成しているが、これはBEV専用アーキテクチャーを用いたメルセデス・ベンツ「EQS450+」の107.8kWh、700kmとほとんど遜色がないスペック(航続距離は、いずれもWLTCモード)。こうすることで、様々な市場の要求にあったモデルを柔軟に生産できる体制を築きあげているのだ。

 また、「2035年以降はBEVならびにFCVのみ販売を認める」法案を検討してきたEU議会が、先ごろ「2035年以降もeフューエル(走行時にCO2を実質的に発生しないとされる内燃機関用合成燃料のこと)を用いたエンジン車の販売を認める」と方針転換したことについて、ツィプセ会長は次のように述べた。

「あれはもともと私たちが要求していたことであり、目新しいニュースではありません。ただし、その具体的な規制内容(ツィプセ会長はeフューエルが既存の自動車にも使われる可能性を否定しなかった)に関しては今後、議論されるものなので、その動向を私たちは注視しています。eフューエルはもともと既存のテクノロジー(=エンジン車)に適用されることを目指したものであり、実際の規制内容は今後の技術開発などを参考にしながら決められます。

 いずれにせよ、2035年以降に供給される製品に関しては、2030年を目処に決めればいいことです。私たちはどんな状況、そしてどんな市場にも柔軟に対応できるよう、フレキシブルなアプローチをとり続けることになります」

 技術をひとつに固定することなく、様々な可能性をオープンに捉える必要があると繰り返し主張したツィプセ会長。私の目から見ても、この方向性がもっとも現実的で、そして変わりゆく世の中に社会に柔軟に対応できる最良の戦略であることは間違いないように思える。

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