公道も走れるサーキット走行モデル フェラーリ新型「SF90XX」初公開 1億円超えのスーパーカーはすでに完売
パワートレインも強化 システム出力は30馬力増の1030馬力
もっとも、サーキット走行と公道走行では求められるダウンフォースのレベルが大きく異なる。
また、同じサーキット走行でも、ブレーキングやコーナリング時は空気抵抗(ドラッグ)に目をつぶってでも大きなダウンフォースが必要とされるいっぽうで、ストレートを通過する際はダウンフォースを抑えて空気抵抗を低減させることが、ラップタイムを短縮するうえでは重要となる。

そこでフェラーリは、巨大な固定式リアウィングを設けると同時に、ボディ後端に新開発のシャットオフ・ガーニーと呼ばれる可変空力デバイスを装備。これは、リアウィンドウの後方に見えるボディパネルの一部(FERRARIのロゴが描かれた部分)を上下させるとともに、これに連なる位置に設けたフラップを起こしたり寝かしたりすることでリアエンドの空気流を制御するもので、ボディパネルを下げてフラップを起こせばハイダウンフォース/ロードラッグ、ボディパネルを挙げてフラップを寝かせばローダウンフォース/ハイドラッグとなる。
このシャットオフ・ガーニーは、高速走行時のパフォーマンスや燃費を改善したり、コーナリングやブレーキングでのスタビリティ向上にも貢献するので、公道走行でも大いに役に立つ空力デバイスといえるだろう。
こうして増強されたリアのダウンフォースとバランスをとるため、フロント・ボンネット下にはSダクトと呼ばれるF1由来の空力デバイスを装着。これはフロントスポイラーの中心に設けたエアインテークから取り込んだ空気流をボンネット下のダクトに導いたうえで、ボンネット上に設けられたふたつのエアアウトレットから排出することにより、ボディ下面とボディ上面を流れる空気量のバランスを調整。これをもってフロント部のダウンフォース向上に役立てようとするものだ。
ここまで述べてきたような空力開発により、SF90XXはベースモデルの390kgを大きく上回る530kgのダウンフォースを250km/h走行時に発生。優れたコーナリング性能を発揮するとされる。
いうまでもなく、SF90XXはパワートレインも強化されている。
まず、キャビン後方に搭載された4リッターV8ツインターボエンジンは、吸排気系の内部を磨き上げることで通過抵抗を抑制するとともに、ピストンの形状を見直して高圧縮比化を実現。SF90を17ps上回る最高出力797psを生み出す。ちなみに、ターボチャージャーのサイズや過給圧には一切手をつけていないというから、SF90本来の鋭敏なレスポンスはまったく損なわれていないとみていいだろう。
これと組み合わされるプラグイン・ハイブリッドシステムは、モーターやバッテリーの冷却系を強化するいっぽうで、一時的にモーター出力を引き上げるエクストラ・ブーストと呼ばれる新機能を搭載することにより、SF90の13ps増しに相当する233psを発揮。ガソリンエンジンとあわせたシステム出力はSF90の1000psを凌ぐ1030psを達成している。
パフォーマンスの改善策はもちろんシャシーにも及んでいて、サスペンション・スプリングのバネレートを引き上げて向上したコーナリング性能に対応するいっぽう、ダンパーの制御やセッティングを見直すことでSF90と同等の快適性を確保したという。
なお、スペチアーレ・モデルで恒例となっているフィオラノ・サーキット(テストコースとしても用いられるフェラーリ所有のレーシングコース)でのラップタイムはまだ公開されていないが、SF90XXストラダーレ、SF90XXスパイダーともに、0-100km/h加速タイムは2.3秒と驚異的なダッシュ力を実現。最高速度は320km/hに達する。
気になる価格は、SF90XXストラダーレが77万ユーロ(約1億2000万円)で、SF90XXスパイダーが85万ユーロ(約1億3400万円)とのこと(いずれもイタリア国内の価格)。にもかかわらず、クーペとスパイダーのあわせて1398台がすべて完売しているのだから、フェラーリのスペチアーレ人気は相変わらず絶大といっていいだろう。
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