アルファロメオの“とんでもないファミリーカー” 初公開からもう40馬力アップ!? 新コンパクトSUV「ジュニア」の“アルファらしい”走りとは?
控えめにいっても最高な新型「ジュニア」のドライブフィール
「ジュニア エレットリカ280ヴェローチェ」のテストドライブでは、驚くほど広いバロッコのプルービンググランド内にある“ミスト・アルファ”といういつもの高速主体のサーキットと、“ランゲ”と呼ばれる20kmほどの一般道を模したコースの両方を走ることができました。

アルファ ロメオがバロッコ村にテストコースをつくった1962年以来、今回、初めてランゲに開発陣以外のドライバーを迎え入れることになったのだそうです。そんなところからも、このモデルに対する力の入れ具合が察せられます。
個人的には、存在こそ知っていたものの、これまで足を踏み入れたことのなかったランゲを走れるとあって、一気にテンションが上がりました。1960年代以降のアルファ ロメオは、レーシングカーもプロダクションモデルも、すべてこの舞台で開発が進められてきたからです。
ランゲは、さまざまな速度域のコーナーはもちろんのこと、アップダウンもあればいろいろな種類の路面もあり、そしてそれらの複合技もある、極めてテクニカルにしてクルマの挙動が丸裸にされてしまうような素晴らしいテストコースでした。
まずはそのランゲから走り始めたのですが、最初に心が動かされたのは「ジュニア エレットリカ280ヴェローチェ」のあらゆる部分からなめらかなフィーリングが伝わってくることでした。
BEVの場合、加速がなめらかなのは当然といえば当然です。けれど新型「ジュニア」のそれは、クラスで最も上質だと感じられるほどの心地よさでした。それも、最新のモーターの実力、なのでしょう。
加えて、電動パワーステアリングのフィールも素晴らしいものでした。スッと切り込んでいったときの感触が、しっとり感と正確性を伴ったスムーズさで、それがまたとても気持ちよかったのです。ドライバーの感性を重視したチューニングが念入りにおこなわれてきた証ですね。
そして「ジュニア エレットリカ280ヴェローチェ」は、乗り心地もなかなか快適でした。サスペンションそのものはどちらかといえば硬めなのですが、その上下動や路面からのフィードバックを受けとめる車体が強固なので、脚がしっかりかつ、しなやかに動いて、荒れた路面の凹凸、粗い路面のザラつき、複雑なうねりといってものをサラッとやり過ごしていくのです。
ピッチやロールも適度に抑えられており、乗ってる人に余分な体の動きを強要しないのも好印象。ドライバーも正確な運転操作をおこないやすいのは美点です。クラスを越えたかなり上質な乗り味、といっても過言ではないでしょう。
フル加速を試してみると、車重が1590kgと同クラスのライバルよりおよそ200kg軽いことが効いているのか、出足はなかなか強力です。軽快にして爽快。というか、BEVらしくクールに速い印象で、思わず口元がゆるみます。
シビれるほど速いわけじゃないけれど、一度の加速で気分が瞬時にスッキリするくらいの速さです。BセグメントのSUVであると考えれば、十分以上のパフォーマンスといえるでしょう。それこそ不満はありません。
そんな「ジュニア エレットリカ280ヴェローチェ」のハイライトは、やはりハンドリングです。
とりわけ、個性豊かなエンジン車をつくりにくい世の中になって以降、アルファ ロメオはハンドリングを磨くことで、ブランドの生命線というべきドライビングプレジャーを構築してきたように感じています。
例えば、上位モデルである「ステルヴィオ」や「トナーレ」の味つけは、それぞれ似て非なるもの。しかし、他のブランドのモデルでは味わえないドラマティックな曲がり方でドライバーを魅了してくれます。
では「ジュニア エレットリカ280ヴェローチェ」はどうなのでしょう? いやはや、これが期待どおり、というか、期待を大きく超えてました。思わず「Awesome!」とサムアップしたい気分になったほど。これがアルファ ロメオの新しいエントリーモデルなのかと思うと、感涙しちゃいそうな気分です。
例えば、ステアリングをスッと切り込むと、前輪と後輪がまるでシンクロするかのように間髪入れずに反応し、すばやくきれいに旋回を開始します。
車体はドライバーがねらったラインの上にピタリと載り、4本のタイヤはしっかりと路面をつかんで、かなりの速さでコーナーを駆け抜けていきます。オーバーステアもアンダーステアも、基本、全く顔を出しません。
シャープではあるけれど、はっきりとした安定感もあり、クルマとの適度な一体感をドライバーに感じさせながら、かなりのスピードで「シュパーッ!」と気持ちよく曲がっていくのです。
右へ左へと切り返しが続くような場面でも、姿勢を乱すようなこともなく、スイスイ、グイグイとコーナーひとつひとつをクリアしていきます。そのときの絶妙なアジリティ、クセのない自然な所作、極めてニュートラルな軌跡、攻め込んでいけるグリップ感……めちゃめちゃ楽しいし、めちゃめちゃ気持ちいいのです。
BEVならではの重心の低さや重量配分の妙も効いているのでしょうが、“トルセンD”が抜群の効き目を発揮してるのだと感じました。
「ステルヴィオ」のように、ステアリングを切ったときの初期反応が強烈に感じられるほど鋭いわけではないし、「トナーレ」みたいに車体がロールし始めてからえぐり込んでいくように曲がっていくわけでもないのですが、曲がることにまつわる印象深さは、上位の2台より鮮やかな気すらしたほどでした。控えめにいっても最高です。
* * *
バニャスコさんとひさしぶりにお会いして立ち話をしてたとき、彼は「このクルマはファミリーカーだからね」とニコニコ笑っていました。
乗り心地はいいしサイズも適度。車内にも狭苦しさはないし、クーペ風のスタイルをしてる割には、荷室容量は400リットルとゆとりがある。ドライバーズシートからの見切りもいいし、使い勝手もよさそう。確かにファミリーカーとしての必要条件はきっちり満たしてるとは思います。
だけど、この高揚感……。「彼らはとんでもないファミリーカーをつくったのだな」と心から思います。
でも、そういうクルマを生み出すのがアルファ ロメオである、ということは、歴史が証明しています。BEVとなってもアルファ ロメオとしての矜恃が失われることはありませんでした。新型「ジュニア」は誰もが予想してたよりも、はるかにアルファ ロメオだったのです。
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