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サーキット志向のポルシェ「911」は公道でも楽しい? “究極の「911」”と評される「911GT3 RS」は速さはもちろん快適性もハイレベル

緊張を伴いながら究極の「911」を阿蘇エリアで試乗

 試乗前から“手に汗握る”経験をしました。新旧問わずポルシェ「911」に乗るとなれば緊張感を伴うものですが、それも最高峰の「911GT3」、しかも究極の「911GT3 RS」となれば高揚感も格別です。

ポルシェ「911GT3 RS」
ポルシェ「911GT3 RS」

“RS”、すなわち“Renn Sport(レン・シュポルト=レーシングスポーツ)”なるネーミングが初めてポルシェの歴史に登場するのは、1953年のこと。レース用モデルとしてデビューした「550/1500RS」が、ル・マン24時間耐久レースやミッレミリアといった世界屈指のレースで好成績を収めました。

 その後、「1500RSKスパイダー」や「RS60」、「RS61」といったブランドの歴史を彩る名車が誕生。そして1973年、ポルシェのコアともいうべき「911」のヒストリーに“RS”のネーミングが初めて登場します。

 GTレースのホモロゲモデルとして限定生産された「911カレラRS 2.7」がそれ。以降、レーシングカーのベース車やサーキット向けモデルなど、特別な「911」には“RS”のサブネームが与えられてきました。

 現行の992型「911」は、ベースとなる「911カレラ」とその高性能バージョンである「911カレラS」、さらにハイブリッドシステムを搭載した「911カレラGTS」、超弩級のスポーツモデルである「911ターボ」など多彩なラインナップを展開しています。

 いずれも「911」の名を冠するスポーツカーですが、モデルごとに異なるキャラクターを差別化できる背景には、ポルシェらしいハイレベルなエンジニアリングがあってのことでしょう。

 なかでも、サーキット志向のオーナーに向けた「911GT3」は、エンジンが水冷化されて以降の「911」において、ピュアなスポーツモデルという役割を担ってきました。

 さらに「911GT3」の歴代モデルには、サーキット走行でのパフォーマンスを追求した「911GT3 RS」が設定されています。

 今回、「911GT3 RS」の試乗の舞台に選んだのは、熊本の阿蘇エリア。ロードリーガルとはいえ、そのたたずまいはレーシングカーさながらで、本領はサーキットでなければ発揮できないのは承知の上ですが、純粋に「乗ってみたい」、「触れてみたい」という気持ちもありますし、「公道ではどうなの?」という興味もわいてきます。

●卓越したエアロダイナミクスはハイライトのひとつ

 初対面を果たした「911GT3 RS」のルックスは、目の当たりにしただけで思わず後ずさりするほどの迫力。キャラクターやメカニズムにおいて最も近しいポジションにある「911GT3」と比べても、一線を画すたたずまいでインパクト抜群です。

 これは、「911GT3」が「911カレラ」に準じたボディデザインを採用するのに対し、「911GT3 RS」はトレッドが広く、前後フェンダーが拡大されたターボボディに基づいているといった違いだけではありません。

 カーボンファイバーを強化材として加えた複合材“CFRP”製のフロントフェンダーやフロントフードには巨大な開口部が設けられるほか、リアに備わるリアウイングもスワンネック式のひと際大型のものが装着されています。

 ボディは、ドアやルーフ、フロントフードに軽量なCFRPを使用しており、大型の空力パーツを備えながら1450kgという車両重量を実現しています。

 各種空力パーツも見かけ倒しではなく、すべてサーキット走行を見据えて採用されたもの。例えば、「911GT3」ではフロントに3分割して配置されるラジエターも、「911GT3 RS」ではフロントフード下に大型センターラジエターとして集約。そのためフロントフードには、大型のアウトレットが設けられています。

ポルシェ「911GT3 RS」
ポルシェ「911GT3 RS」

 また、本来はラジエターが備わるフロント・サイド部のスペースは空力面の改善に役立てられているほか、フロントフェンダー上と下部のエアアウトレットはホイールアーチ内の換気、動圧の軽減といった効果を有しています。

 加えて、人目を惹くリアウイングには、“DRS”と呼ばれるドラッグ低減システムが採用されており、アクセルとブレーキの状況といった車両データに合わせ、瞬時に角度の調整とおこないます。このDRSはエアブレーキ機能も備えており、高速での緊急ブレーキ時に作動してホイールブレーキを強力にサポートする減速効果を生み出します。

 こうしたエアロダイナミクスこそ「911GT3 RS」のハイライトのひとつで、フロント回りとリアウイングなどが生み出すダウンフォースは、200km/h走行時で合計409kg、285km/h時では合計860kgにも達するそうです。これは「911GT3」の約3倍ですから、「911GT3 RS」がいかにサーキット志向のモデルであるかが理解いただけるのではないでしょうか。

「911GT3 RS」に搭載されるエンジンは、4リッターの水平対向6気筒自然吸気エンジンで、最高出力は525ps/8500回転、最大トルクは465Nm/6300回転を発生します。

 0-100km/h加速3.2秒、最高速度296km/hというパフォーマンスや、鍛造ピストンやチタンコネクティングロッドといった採用されるメカニズムも注目に値しますが、今日ではピュアに性能を追求した自然吸気エンジン搭載車であることも大いなる魅力といえるでしょう。

 このほか「911GT3 RS」を象徴する装備として、「911GT3」よりもピストン径を拡大(30mm→32mm)したフロント6ピストン・アルミニウムモノブロックブレーキキャリパーと、ディスクの厚さを増した(34mm→36mm)直径408mmのブレーキディスクがあります。

 また、標準装備となる鍛造軽合金センターロックホイールには、フロント275/35R20、リア335/30R21と、「911GT3」よりひと回りワイドなスポーツタイヤ、ミシュラン「パイロットスポーツ2」が装着されます。

 今回の試乗車は、さらにオプションの“ヴァイザッハ・パッケージ”が装着されており、スチール製に比べて6kg軽量なCFRP製のロールオーバーバーやマグネシウム鍛造ホイールが装着されています。

 同パッケージはこのほか、前後のアンチロールバーなどもCFRP製となるほか、フロントフードやルーフといった外装パーツもカーボン地仕上げとなっています。

Nextさすがはポルシェ! 足回りはハードだが不快さとは無縁
Gallery 【画像】「えっ!…」これがポルシェ「911」の頂点に君臨する究極の存在「911GT3 RS」です(30枚以上)

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