VAGUE(ヴァーグ)

333馬力の「羊の皮をかぶった狼」フォルクスワーゲン「ゴルフ」シリーズの最高峰「ゴルフR」は“鋭さと安定感”を両立した走りがお見事です

運転の楽しさを盛り上げてくれる多彩な演出

 さて、そんな新型「ゴルフR」の走りはどのような進化を遂げていたのでしょうか?

VW新型「ゴルフR」
VW新型「ゴルフR」

 今回の試乗車は「Rアドバンス」と呼ばれる電子制御ダンパーを組み込んだ仕様でしたが、走り始めるとすぐにサスペンションが締め上げられているのを実感します。

 この電子制御ダンパーは、車内中央のディスプレイによるマニュアル設定で減衰力(ショックアブソーバーの硬さ)を市販車としては異例の15段階に切り替え可能。とはいえ、最もソフトにしても車体の上下動は多めで、かなり硬いバネが組み合わされていることを実感します。

 しかし、その硬さ自体は“イヤな硬さ”でないのが幸いなところ。いわゆる“カドの取れた乗り味”で、車体の上下動は多いものの、下からガンガンと不快な突き上げが伝わってくるような印象はありません。

 ちなみにマニュアル切り替えで“最も硬い状態”にすると、路面の細かい凹凸をしっかりと乗り味に反映したソリッドなドライビングフィールを味わえます。

 調整といえば、マニュアル設定モードでサスペンションやパワーステアリングだけでなく、「車内」と「車外」のサウンドを独立して設定できるのがユニーク。「スポーツ」にすると、アクセルオフ時などに「ババババッ!」というバブリング音を奏でてくれるのは楽しい演出です。

 もちろん、住宅街など周囲に人が多い環境では迷惑をかけてしまう機能かもしれませんが、サーキットやワインディングロードを楽しむ際には、こうした運転の楽しさを盛り上げてくれる演出は大歓迎です。

 エンジンは最高出力300psオーバーの強心臓ということもあって、サーキットにでも行かないと本領を引き出せないほどの加速の勢いを発揮します。ただし、高回転域での盛り上がりだけでなく、低回転域でのトルクもしっかり太いので、追い越し加速などは力強く、運転しやすいのが魅力です。

 そしてコーナリングは、まるで地面に吸いついているかのような安定感です。しかも、ステアリングを切った方向へとグイグイ曲がっていく“鋭さと安定感の両立”がお見事。「さすが『ゴルフ』シリーズ最高峰のスポーツモデルだな」と、素直に感動してしまいました。

●開発チームはみんなクルマ好きなのだろう

 ここまで読んで、「『GTI』と比べてどうなのか?」と気になっている人も多いはず。筆者(工藤貴宏)は2台を乗り比べた結果、“軽快な「GTI」”と“重厚でより速い「R」”といったぐらいに、それぞれの個性を感じとることができました。

VW新型「ゴルフR」
VW新型「ゴルフR」

 とはいえ、速さに関しては「GTI」でもすでに十分なレベルであり、この領域までくると、良し悪しを決めるのは“好み”の問題でしかないな、と思います。「ゴルフ」が“好み”に応じて選べる2タイプのスポーツモデルを設定してくれていることに、ひとりのクルマ好きとしては感謝しかありません。

 そして今回、「ゴルフR」を運転していて「このクルマを手がけた開発チームは、本当に皆、クルマが好きなんだろうな」と感じました。

 エンジンのフィーリングや加速感、音、ハンドリング……そのすべてにおいて、ドライビングプレジャーを刺激する演出にあふれているからです。

「運転するのが本当に楽しい」……「ゴルフR」は素直にそう思えるスポーツカーです。かつて“羊の皮をかぶった狼”というフレーズが流行りましたが、「ゴルフR」はまさにその言葉がふさわしい1台。上品な見た目からはイメージできない高性能を秘めた本格スポーツモデルです。

Gallery 【画像】「えっ!…」“羊の皮をかぶった狼”というフレーズが似合う! これがVWの新型「ゴルフR」です(30枚以上)

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