同じスポーツグレード「ゴルフGTI」とは何が違う？

　VW（フォルクスワーゲン）「ゴルフ」シリーズの最高峰モデル「ゴルフR」に試乗して印象的だったのは、絶対的な速さよりもドライビングフィールとして伝わってくる重厚感でした。それにしても新型「ゴルフR」、とんでもないほどの“羊の皮をかぶった狼”ですね。

　ドイツのカーブランド・VWのベストセラーである2ボックス・ハッチバックの初代「ゴルフ」は、1974年にデビュー。初代は“Cセグメント”というカテゴリーを切り拓き、世界中のコンパクト・ハッチバックにおける“メートル原器”というべき存在となりました。

　そんなVW「ゴルフ」には、ふたつのスポーツモデルが存在します。ひとつは、初代のホットバージョンとして1976年に登場した伝統的なグレード「GTI」。そしてもうひとつが、本記事でフォーカスする「ゴルフＲ」です。

「R」シリーズの元祖である「R32」は、4代目「ゴルフ」の派生モデルとして2003年に上陸。ネーミングの由来ともなった排気量3.2リッターのV6自然吸気エンジンを搭載する魔改造的なモデルでした。

　続く5代目の時代も同エンジンを搭載する「R32」がラインナップされていましたが、大きな変化が起きたのは6代目のとき。エンジンを2リッターの4気筒ターボへとダウンサイジングし、ネーミングも「ゴルフR」と改名したのです。

　それから2度のフルモデルチェンジと1度のマイナーチェンジを経たのが、ここに取り上げる8代目「ゴルフ」の後期モデル、通称“「ゴルフ」8.5”と呼ばれる最新の「ゴルフR」です。

　そうしたアウトラインから「『GTI』と何が違うの？　どちらも2リッターのターボエンジンを積んでいるのなら、同じなんじゃないの？」と思う人もいるかもしれません。

「GTI」と「R」の大きな違いはふたつ。ひとつはエンジン。「GTI」の最高出力は265psですが、「R」は333psとよりパワフルです。そしてもうひとつが駆動方式。「GTI」の前輪駆動に対して、「R」は“4モーション”と呼ばれるフルタイム4WD機構を組み合わせています。

　結果、「ゴルフR」はより戦闘力の高いマシンに仕上がっています。駆動系には、左右輪に伝える駆動力を状況に応じて意図的に分配（0〜100％の間で変化する）し、旋回性能を高める“トルクベクタリング機構”が組み込まれており、走行モードには「スポーツ」よりも高い性能を発揮する「レース」モードを用意するなど、“「GTI」よりも上”の存在であることを明確にアピールしています。

　エンジンの最高出力は333psとお伝えしましたが、これは2025年1月にマイナーチェンジした最新の日本仕様における変更点のひとつ。従来モデルは320psでしたが、最大トルクの発生回転域を高回転域へと広げたことで、最高出力がアップしたというわけです。

　そんな最新の「ゴルフR」は、停止状態から100km/hまでわずか4.6秒（欧州仕様値）で到達します。同じく俊足の持ち主であるライバルのホンダ「シビック タイプR」を凌駕する最高出力と、4WDならではの優れたトラクション性能が効いています。

●シリーズ全体のマイチェンに合わせてリ・デザイン

　専用デザインの前後バンパーを与えられた新型「ゴルフR」のエクステリアは、ヘッドライトの形状変更など「ゴルフ」シリーズ全体のマイナーチェンジに合わせてリフレッシュされました。

　左右のヘッドライトを横一文字につなぐフロントグリル部のアクセントカラーは、「GTI」の赤に対して「R」では青を採用。また、グリル中央のエンブレムがヘッドライトの点灯に連動して光るようになったのは、従来モデルとの分かりやすい識別点となっています。

　合わせてリア回りでは、コンビネーションランプの内部意匠を変更。より立体的なデザインになっています。

　対するインテリアは、しっかりと体を保持してくれるスポーツシートや、「GTI」より大きなシフトパドルなどで走りのイメージを強調。あからさまにスパルタンというわけではありませんが、上品でさりげなくスポーティといった仕立てになっています。

　加えて新型は、センターディスプレイのサイズが12.9インチと大きくなったのも特徴ですね。