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36年前の「スペシャルなポルシェ」がオークションに登場も落札ならず! 製造台数わずか29台の「超貴重なスーパーカー」の正体とは?

29台しか製造されなかった軽量仕様のポルシェ「959」

 2025年2月末にアメリカ・マイアミで開催されたRMサザビーズのオークションに、貴重なポルシェ「959」の中でも特にスペシャルな「959」のスポーツ仕様が登場。話題を集めました。

2025年2月末に開催されたRMサザビーズのオークションに出品された、1988年式の希少な「959」のスポーツ仕様(C)RMサザビーズ
2025年2月末に開催されたRMサザビーズのオークションに出品された、1988年式の希少な「959」のスポーツ仕様(C)RMサザビーズ

 一見すると、ポルシェ「959」は伝統的な「911」のデザインを受け継いでいるように思えますが、その革新性は比類ないものでした。

 可変式サスペンション(スポーツ仕様は不採用)、加減速・コーナリングなどの車体状況に応じて前後の駆動力配分をコンピュータで自動制御する4輪駆動システム、当時としては画期的だったタイヤ空気圧モニタリングシステム、そして、超軽量の中空マグネシウム合金ホイールなど、搭載されたメカニズムや採用された装備は、とにかく斬新でした。

 斬新だったのは技術や装備だけではありません。莫大な研究開発費と高度な製造技術のために、ポルシェは「959」をつくればつくるほど損失を計上したといわれています。

 そう考えると、「959」はポルシェにとって単なる商品ではなく、自らの技術力を世界に示す壮大なショーケースだったのでしょう。

 1986年から1988年にかけて生産された「959」は、わずか292台にとどまります。そのほとんどがスタンダードなコンフォート仕様でしたが、本記事でフォーカスするスポーツ仕様は、シリーズの中で最もピュアなレーシングスピリットを秘めたモデルでした。

 そのため、製造台数はわずか29台。超貴重なスーパーカーですが、本記事で取り上げる当該車両はその内の16台目に当たります。

 当該車両は、2025年2月末にアメリカ・マイアミで開催されたRMサザビーズのオークションに出品され、予想落札価格は550万ドル~650万ドル(約8億850万円〜9億5550万円)と、なかなかの強気の設定でした。

●愛情が注がれた1台ながら落札には至らず

「959」スポーツ仕様の特徴は一目瞭然です。

 革巻きのロールケージや4点式レーシングハーネス、そして軽量化を優先した布製シートの採用によって重量削減が図られているほか、機械的な複雑さを抑えるべく、コンフォート仕様の可変式サスペンションは一般的なコイルスプリング仕様に換装。もちろん、エアコンやステレオも取り除かれました。

 ちなみに、徹底した軽量化が施された結果、「959」スポーツ仕様の車重はコンフォート仕様より100kgも軽く仕上がっています。

 興味深いことに、すべてのスポーツ仕様が同一の仕様で生産され、購入者が選択できたのはグランプリホワイトもしくはガーズレッドのボディカラーだけだったそうです。

 当該車両は1989年6月に、カリフォルニア州ラホーヤに住んでいたヴェルナー・ファンク氏が、正規のポルシェディーラーを介さず“ディレクトフェアカウフ=工場直販”で新車にて購入したものです。

 ファンク氏はポルシェのファクトリーレーシングチームでクルーチーフを務めた経験を持ち、そもそもポルシェと深いつながりを持っていました。ドイツ生まれの彼は1978年に渡米し、自動車業界で複数の企業を立ち上げて成功した人物です。

 当時、ポルシェ「959」はアメリカの厳格な輸入規制や排ガス基準に適合していなかったため、正規輸入するのは不可能でした。そのためファンク氏は、ドイツ・シュトゥットガルトにあるポルシェの工場において、直接、納車を受けたといいます。

 RMサザビーズのインタビューによると、当該車両はアメリカに持ち込むことができず、ヨーロッパでも定期的に楽しむことが難しかったため、ファンク氏はわずか2〜3週間しか所有していないといいます。

 しかし手放す前に、ファンク氏はフランスでサーキットを貸し切り、「959」スポーツ仕様を存分に満喫したとのこと。なおファンク氏はその日、フェラーリ「F40」と「288GTO」にも試乗するという、スーパーカーファンにとって夢のような1日を過ごしています。現存する当時の写真には、アプローチの異なる3台の伝説的スーパーカーと過ごしたファンク氏の貴重な時間が記録されています。

 当該車両はその後、スイスのディーラーであるグラバー・フェラーリを通じて売却されました。その後の履歴によると、ほとんどの時間をスイスで過ごしたようです。

 2008年には、スイスのポルシェ専門店であるポルシェ・ツェントルム・シンツナッハ・バートでエンジンとトランスミッションのメンテナンスを受けており、ABSとLSDの修理もおこなわれました。請求書は2015年分まできっちりそろっており、オーナーのお金と愛情が注がれていたことが分かります。

 以降、当該車両は2015年にスイスを離れてイタリアへ、その後スウェーデンを経て再びイタリアへ、そして、最終的に現在の所在地であるアメリカに輸出されました。

 現オーナーのポルシェコレクションの中でも特別な位置を占めるモデルとなっており、メーターに刻まれる走行距離はわずか6046kmだといいます。

 そんな程度極上の超貴重な当該車両ですが、今回のオークションでは予想に反して最低落札価格に届かず、落札とはなりませんでした。現在も希望売却価格550万ドルで販売中です。

 コンフォート仕様が100万ドル台の半ば(2億2000万円前後)で流通している中、いくら希少価値が高い「959」のスポーツ仕様であっても、同じような見た目のクルマに4倍の額は払えない、というのが、入札者たちの正直な気持ちなのでしょうか?

Gallery 【画像】これが29台しか製造されなかった“超貴重なスーパーカー” ポルシェ「959」のスポーツ仕様です(25枚)
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