VAGUE(ヴァーグ)

軽く、強く、美しい。「Magne Suitcase」はスーツケース界の“マックブック”となりうるか?――家電で読み解く新時代|Case.05

アンカー・ジャパンCEOが込めた新たな旅への思想

 起業家であり、家電スペシャリストでもある滝田勝紀氏が、連載「家電で読み解く新時代」と題してテクノロジーの奥に潜む“時代の空気”を紐解きます。

 今回取り上げるのは、世界初全面マグネシウム合金製のスーツケース「Magne Suitcase」を引っさげ、新たに誕生したトラベルブランド「Magne(マグネ)」です。

 軽く、強く、そして美しい――近い将来、“スーツケース界のMacBook”にもなるほどの意欲作が、私たちの旅の常識をどう変えようとしているのかを探ります。

 厳密には家電ではない。にもかかわらず、筆者が今回注目したのは、アンカー・ジャパンのCEOとしてモバイルバッテリーやオーディオ製品などで「高品質と低価格の両立」を実現してきた猿渡歩氏が、新会社「旅行ジャパン」で立ち上げたトラベルブランド「Magne(マグネ)」だったからだ。

 自己資金で挑むこの新たな旅の道具には、猿渡氏の強い想いと明確な思想が込められている。
 

Magne Suitcase
Magne Suitcase

 Deloitteにてコンサルティング業務やIPO支援に従事後、PEファンド日本産業パートナーズにてプライベート・エクイティ投資業務に携わる。

 Anker Japanの経営再建および黒字化、副社長を経て、720億円超を達成。現 アンカー・ジャパン代表取締役CEOを務めながら、他にも関連企業の社外取締役や顧問を務める。

 旅行という最も生活に近いカテゴリにおいて、「⽇⽶領域で価格に向き合ったブランドを作りたい」という思いから、旅行ジャパン株式会社を創業。著書に『1位思考』がある。

 旅人が理想とするスーツケースはシンプルである。軽く、強く、美しい。しかしこの三要素を同時に満たすことは極めて難しく、実際にはどこかで妥協を迫られるのが現実だ。

 強度を選べば重く、軽さを追求すると耐久性に欠ける。機能性を重視するとデザインが野暮ったく、美しさを優先すると収納性や耐久性に難がある。

 こうしたジレンマに対して、猿渡氏は「軽さと強さはトレードオフの関係にあり、長年解決されてこなかった」と指摘している。まさにその課題に真っ向から挑んだのが、今回発表された「Magne Suitcase」である。

代表取締役CEO 猿渡 歩氏
代表取締役CEO 猿渡 歩氏

世界初マグネシウム合金ボディが可能にした革新性

 Magne Suitcase最大の特徴は、圧倒的な軽さと高い強度の両立したこと。

 ボディ全面にマグネシウム合金を採用したこのキャリーケース自体、世界初の試みであり、金属製スーツケースとして世界最軽量のわずか2.9kg(容量33L)を達成している。

 機内持ち込み可能なサイズ(高さ55×幅40×奥行21cm)ながら、市場に多いアルミ製ケース(通常4kg前後)より約1kg以上も軽い計算。

表面処理が美しい、世界初のマグネシウム製ボディ
表面処理が美しい、世界初のマグネシウム製ボディ

 実際、筆者も製品を手に取ってみたが、空の状態で持つと拍子抜けするほど軽く、それでいて外殻には金属特有の剛性感が備わっていた。

 マグネシウム合金は航空・宇宙分野でも利用される高い強度を持つ素材で、アルミニウムより約30%軽い。一方で加工の難しさでも知られていて、民生品に採用される例はかなり少ないという

 Magneは高度な金属加工技術を持つパートナー企業(株式会社STG)と協業し、複雑な成形プロセスをクリアすることで製品化にこぎ着けた。

 その成果として生まれた高剛性&軽量約2.9kgのボディは、持ち運び時の肉体的負担を減らすだけでなく、荷物の重量制限にも余裕を生む。

 つまり、旅先で増えがちな土産物を詰めても超過料金の心配が減るなど、ユーザーに新たな安心感と快適さを提供してくれるのだ。

公式には重量2.9㎏とのことだが、当日は2.8kgという表示だった
公式には重量2.9㎏とのことだが、当日は2.8kgという表示だった

 軽さと強さに加え、デザイン面のこだわりも見逃せない。

 Magne Suitcaseは「シンプルで洗練された美しさ」を追求し、余計な装飾を徹底的に排したミニマルな外観に仕上げられている。シルバー基調のメタルボディは、どんなスタイルにも馴染むミニマルデザインだ。

 内部構造も独特で、片開き(一方の側に深い収納部を設ける)レイアウトを採用。中仕切りや余計なポケットなどをあえて設けないことで、柔軟な収納空間を実現している。

 このため、荷物の出し入れがしやすく、自分好みの収納アレンジが可能。

 また、静音性と耐久性を兼ね備えたエラストマー製キャスターを採用するなど、細部にまでユーザー体験を高める工夫が凝らされている。

キャスターには静音性と耐久性に優れたエラストマー製キャスターを採用
キャスターには静音性と耐久性に優れたエラストマー製キャスターを採用

Appleにも通じる後発だからできる革新性

 ここで思い浮かべるのがAppleの製品だ。Appleが提供する製品は、必ずしも市場の「初物」ではない。

 MacやiPhoneも、後発ながら市場のスタンダードとして選ばれている。それはAppleが常に、デザインと技術の妥協なき融合を目指し、「最後に選ばれる」製品を作ってきたからだ。猿渡氏もこの点を指摘している。

「パソコンもスマートフォンもタブレットもスマートウォッチも、Appleが最初に開発したものではありません。アンカーも、AirPodsを抜いてイヤホン市場のシェア首位を獲りました。重要なのは、後発であっても、本当に良いものを作ること。私たちは、そんな製品作りを目指しています」

 Magne Suitcaseが目指したのは、まさにこのApple的なプロダクト思想だ。

「最終的に選ばれるもの」であるために、既存のスーツケース市場にあえて後発として挑戦を挑んだのである。

 

すべての旅に寄り添う、余白と本質を備えた構造美。余計な装飾などは一切ない
すべての旅に寄り添う、余白と本質を備えた構造美。余計な装飾などは一切ない

 猿渡氏が旅行用品市場に参入した理由は明確だ。自身が旅行用品を選ぶ際、機能に徹底的に寄り添ったブランドが存在しないことに違和感を覚えたからだという。

 Magneのブランドコンセプトは「あなたの旅と行動力に、強さと軽さを」というもので、物理的な強さや軽さだけでなく、「旅そのものを楽しみ、自由にしてくれる存在でありたい」という願いが込められている。

 また、スーツケース本体だけでなく、周辺アイテムも含めた統一的な設計が特徴的だ。

 専用ボストンバッグ「Magne Boston」は、スーツケースのハンドルにぴったりと固定できる仕様で、移動時の利便性を高める。

 また、専用のパッキングポーチ「Magne Pouch」は、収納物を美しく整理できるよう設計され、旅の快適性をさらに向上させている。

Magne Suitcaseにピッタリフィットする専用ボストンとポーチも同時発売。旅全体の体験を設計する
Magne Suitcaseにピッタリフィットする専用ボストンとポーチも同時発売。旅全体の体験を設計する

高価でも納得できる旅道具選びの哲学

 価格は約9万円オーバーと決して安くはないが、その価値は価格に見合ったものであると確信している。

 良質な製品を丁寧に選び、大切に長く使うことが、結果的には経済的であり、何よりも旅の質を大きく向上させるからだ。

 単に高価格というだけでなく、「本当に価値あるもの」を選ぶという視点に立てば、決して高くない価格設定だと言える。

 旅という日常の中の非日常を、より快適で美しいものにすること。その思想をしっかりと具現化したMagne Suitcaseは、まさにスーツケース界の“MacBook”になる可能性を秘めている。

 市場を刷新し、新たなスタンダードを築けるか――。その答えは、旅を愛する私たち自身の手に委ねられている。

製品概要
「Magne Suitcase(マグネ スーツケース)」
・発売時期:2025年7月1日より Makuake にて先行販売開始(一般販売予定あり)
・価格:9万9,800円(税込、一般販売予定価格)※Makuakeでは早割特典あり
・サイズ:高さ55cm×幅40cm×奥行21cm(機内持ち込み対応)
・容量:33リットル
・重量:約2.9kg
・材質:本体 マグネシウム合金、他(TSAロック搭載、エラストマー静音キャスター採用)
・付属品:専用ボストンバッグ「Magne Boston」(別売 9,980円)、専用ポーチセット「Magne Pouch」(別売 4,980円)

Gallery 【画像】マグネはどんなスーツケース?画像で見る(27枚)
シチズン「プロマスター」新作 “海の男”をうならせた頼れる1本
滝田勝紀
滝田勝紀
VAGUE家電統括プロデューサー
モノ雑誌の編集に15年以上携わり『デジモノステーション』編集長を歴任。現在は家電スペシャリストとして、国内外の最新テクノロジーを長年取材。All About家電ガイドやMakuakeエバンジェリスト、楽天ROOM公式インフルエンサー(フォロワー56万人超)など幅広く活動する。海外取材経験も豊富で、欧州家電メーカー本社や世界最大級の見本市「IFA」への造詣も深い。また、Z世代向けメディア運営やPR会社経営の傍ら、インテリアスタイリスト窪川勝哉氏とのユニット「𝒾𝓃𝒞𝒶𝒹𝑒𝓃𝓏𝒶」で家電開発も手掛ける。機能とデザインの両面から、心地よい暮らしのあり方を提唱している。

VAGUEからのオススメ

海と向き合い、自らを再起動する――プロセーラーが語る、シチズン「プロマスター」で“限界を超える”意味とは【PR】

海と向き合い、自らを再起動する――プロセーラーが語る、シチズン「プロマスター」で“限界を超える”意味とは【PR】

RECOMMEND