メルセデス・ベンツ新型「CLA」はどう変わった? 人気の“小型4ドアクーペ”が全方位的に進化! “正統なメルセデス流の走り味”が絶品です
“W124”型を思い出させる正統派の走り味
2025年3月に発表された通算3代目となるメルセデス・ベンツ新型「CLA」の試乗のために訪れたのは、デンマークの首都コペンハーゲン。北欧の彼の地は例にもれず、BEV(電気自動車)が非常に大きなシェアを獲得しています。

そう、新型「CLA」はBEV用とうたわれた新開発の“MMA(メルセデス・ベンツ・モジュラー・アーキテクチャー)”を用いて生み出されました。実際には、市況の変化により急遽ハイブリッド車も開発され、少し遅れて投入されることとなりましたが、その基本形はなんとBEVなのです。
今回の国際試乗会に用意されていたのも、2タイプのBEVモデルのみでした。現時点でのエントリー的な立ち位置となるのが「CLA250+ with EQテクノロジー」。最高出力272ps、最大トルク335Nmを発生する電気モーターに2段のギアボックスを組み合わせた“EDU(エレクトリック ドライブ ユニット)”をリアに搭載しています。そう、駆動するのは後輪となります。
そして、フロア下に搭載されるNMCバッテリーの容量は85kWh。航続距離は792kmと、電費はきわめて優秀です。
このバッテリーの搭載のために新型「CLA」は全高が29mm高くなり、ホイールベースが61mm延ばされています。そうした不利を跳ね返して美しいフォルムを創り出すべく、ノーズ高が抑えられ、リアクォーターウインドウが追加となり、リアウインドウが大きく寝かされたエクステリアは、実は今までの「CLA」とは全く異なる文法で描かれたものですが、結果として巧くスペシャルティ感のある4ドアクーペがつくり出されています。
ちなみに、空気抵抗を表すCd値はなんと0.21。もちろん、それには散りばめられた142個もの星がまばゆいフロントのブラックパネルや、アンダーフロアの徹底的なフラット化なども貢献しています。いずれにしても、単にきれいだというだけでなく、そのデザインは徹底的に機能にこだわったものなのです。
室内に入ると、目の前には左右目いっぱいに広がるブラックパネルが直立していて、かなりのインパクトです。オプションの“MBUXスーパースクリーン”では、ここに運転席、中央、助手席の最高3枚の大型ディスプレイが収められます。ちなみに、助手席側の画面がない仕様は、ここにも星が描かれます。
正直、画面の“圧”は強めですが、空間としては前席が全方位に少しずつ余裕を増しています。一方、後席は足元、ひざまわりのスペースが若干削られていますが、ヘッドルームは余裕。実は全車に標準装備の、ルーフ全体に及ぶ大型パノラミックルーフは、天張りを不要にしてできる限り頭上空間を稼ぐためのものでもあります。ちなみに、ガラスはちゃんと断熱素材となっていますので、ご心配なく。
「CLA250+ with EQテクノロジー」で街に出てまず感心させられたのは、静粛性の高さ、そして乗り心地の上質さでした。電気モーターやインバーターなどに起因するノイズが徹底的に抑えられていて、室内にそれっぽい雑音は一切入ってきません。乗り心地も、しっとり上質。路面からの強めの入力も、堅牢な車体が一発で受け止めてくれます。
速度を上げても好印象は変わらず。力に余裕はありますが、ドーンと蹴飛ばされるように加速するのではなく、あくまで欲しいとき、欲しいだけの力が手に入ります。ギア比11対1の1速に対して、5対1の2速を持つ2段ギアボックスは、速度やアクセルペダルの踏み加減などによって自動で変速するものですが、これも動作を意識させられることは皆無。パワートレインの調律ぶりは見事というほかありません。
あるいは、それ以上といえるくらいにうならされたのが、シャシーの躾(しつけ)のよさでした。まずスゴいのは土台となるボディの剛性感。ロールオーバー時にガラス製のルーフを、そして衝突時にバッテリーを守るために、フロント、センター、リアの各ピラーからフロアの広範囲に至るまで熱間成型スチールが使われたそのボディは、とにかくガッチリしていて、ボディ剛性はまだまだ進化するのか、と軽く感動してしまったほどです。
それを土台とするフロントが3リンク、リアがマルチリンクのいずれも新設計のサスペンションの動きはやわらかく、しかし芯があって、路面の段差やうねりをものともしません。姿勢は常にフラットに保たれて、とにかくラクに巡航できるのは、重心の低さや前後バランスのよさも効いているのでしょう。
どこまでも長い距離を走って行けそうなその感触は、まさしく正統派メルセデス・ベンツ。おだやかで、しかし正確な操舵感含めて、昔乗っていた1990年式の“W124”型「ミディアムクラス」を思い出したというのは本当の話です。
前後2モーターの4輪駆動で、最高出力354ps、最大トルク515Nmというスペックを誇る「CLA350 4マチック with EQテクノロジー」も、走りの感触はほぼ同様。もちろん、よりパワフルで、特に高速域での余裕も1枚上手なのは間違いありません。
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