野菜が“バキバキに砕け”、鍋が“端まで焼ける”理由とは? 三菱電機が2026年に描く「キッチン家電の進化論」
「ガラス化」する野菜と、11年越しのIH革命
ここ数年、家電業界のトレンドを追う中で、家電スペシャリストとして常に意識しているのは「スペック競争からの脱却」と「本質的なQOL(生活の質)への回帰」だ。
単に容量が増えた、火力が上がった――そんな数値上の進化だけでは、もはや成熟した消費者の心は動かない。
2026年1月8日、三菱電機が発表した冷蔵庫とIHクッキングヒーターの新製品群は、まさにその「本質」にメスを入れた意欲作だった。
冷蔵庫では大学との共同研究による“科学的アプローチ”で食材管理の常識を覆し、IHでは11年ぶりのフルモデルチェンジで「熱の制御」を再定義してみせた。
今回は、新製品発表会および体験会で感じた三菱電機の技術的な深層と、それが私たちのライフスタイルにどう作用するのかを紐解いていきたい。

「凍ったまま砕ける」の向こう側へ。広島大学と解明した“ガラス化”の魔法
まずは冷蔵庫から。三菱電機の冷蔵庫といえば、過冷却現象を応用した「氷点下ストッカー」や、解凍なしで切れる「切れちゃう瞬冷凍」など、温度制御技術に一日の長があるブランドという印象が強い。
今回の目玉となる新機能「できちゃうV冷凍+(プラス)」は、その温度制御の技術力をさらに「使い勝手」へと昇華させたものだ。
従来の「できちゃうV冷凍」も、冷凍した野菜を袋の上から手で砕いて使えるという点で十分に画期的だったが、今回はその利便性がさらに一段上がっている。
これまで特定の場所(上段など)でしか使えなかった機能が、冷凍室の「どこに入れてもOK」になり、しかも最初に設定しておけば、その後はボタン操作なしで“いつでも手で砕ける状態”を自動でつくってくれるのだ。

家電スペシャリストとして最も唸らされたのは、その背景にある「理論」である。三菱電機は2022年から広島大学 食品工学研究室と産学連携プロジェクトを実施し、野菜の細胞と細胞の間にあるペクチンなどの高分子成分に着目。
これを独自制御の低温冷気で冷やし込むことで“ガラス化”させる。その結果、野菜全体がカチコチの氷塊にならず、細胞間の“ガラス”を割るように、パキパキと手で砕ける状態になる――というわけだ。
体験会の実演で、袋に入った凍ったキャベツを手で揉みほぐし、そのまま挽き肉と混ぜて餃子のタネを作る工程を見たとき、「これは冷凍保存機能ではなく、“調理プロセスのショートカット”だ」と直感した。
今回はタマネギ、ピーマン、レンコンなどが新たに対象野菜に加わり、対応野菜は計17種類に拡大。みじん切りや粗みじんの手間がいらない“包丁いらず”の領域まで、いよいよ近づいてきた印象だ。

インテリアとしての冷蔵庫。「JMシリーズ」に見る“脱・ガラス”の潮流
もう一つ見逃せないのが、デザインの変革である。さまざまな家電の現場を取材していて痛感するのは、キッチンとリビングの境界が曖昧になっていくなかで、「素材感」がこれまで以上に重要なテーマになっているということだ。
三菱電機はこれまで、清掃性とガラス特有の光沢感を兼ね備えたガラストップ(MZシリーズ等)を主力としてきた。そこに今回、新たに鋼板面材を採用した「JMシリーズ」が、野菜室真ん中タイプとして加わった。
この「JMシリーズ」は、あえて光沢を抑えたマットな質感が特徴だ。近年のトレンドである「バイオフィリックデザイン(自然を感じる空間づくり)」や、無垢材をふんだんに使った日本の住宅との相性が非常にいい。
新色の「シルクウッド」は、木目調のキッチンや家具に自然に溶け込むトーンで、もはや“家電”というより「備え付けの家具」のような佇まいを見せる。
機能だけでなく、空間における“ノイズ”を減らす。そんな選択肢を増やしたことは、インテリアへの感度が高いユーザーにとって、冷蔵庫選びの新しい基準になっていくだろう。

11年ぶりの刷新。「CROSS-TOP」が解決した“IHの弱点”
続いてIHクッキングヒーターの最上位モデル「CROSS-TOP(クロストップ)」シリーズだ。こちらは実に11年ぶりのフルモデルチェンジとなる。
IHは「掃除がしやすく、安全」という点ではすでに多くの支持を得ている一方で、「鍋の端がうまく加熱されない」「煮込み料理で焦げ付きやすい」などの不満も根強く存在してきた。三菱電機はこの“IHの弱点”に対して、エンジニアリングの力で正面から解を出してきた。
その核心となるのが「分割フレームコイル」だ。
従来のダブルリングコイル構造を刷新し、内側と外側のコイルを独立制御。さらにフェライト(磁性体)の形状・配置を最適化することで、外側コイルで発生した磁力線を効率よく鍋底の端まで集約させる。
これにより、鍋やフライパンの“端までしっかり均一に加熱する”「端まで加熱」を実現している。

実際にこの新型IHで焼いた餃子やホットケーキを見せてもらったが、中央だけでなく、外周部のピースまで見事に同じ焼き色がついていた。家庭のキッチンで、ここまで「業務用寄り」の焼きムラの少なさを実現しているのは、正直かなりインパクトが大きい。
さらに興味深いのが「かきまぜ加熱」だ。内・外コイルの通電を切り替えることで鍋内部に対流を起こし、物理的にかき混ぜなくても、カレーのルーが自然に溶け、煮物は煮崩れを抑えながら味をしっかり染み込ませる。
“放っておいても、おいしく仕上がる”――これは、忙しい現代人にとってまさに最強の時短調理だと言っていい。
UI(ユーザーインターフェース)も大きく変わった。スマートフォンのように指でスライドして火力1〜8の8段階を直感的に選べる「ONEタッチプレート」を採用し、さらに</>ボタンを使えば0.5刻みで16段階の火力微調整も可能。
ガス火と同等か、それ以上に繊細なコントロールをしながら、IHならではの安全性と清掃性を両立している。

三菱電機が目指す「シェアされる幸せ」の意味
今回の発表会全体を通して強く感じたのは、三菱電機が「ハードを売る会社」から、「体験そのものをデザインする会社」へと、明確に舵を切りつつあるということだ。
たとえば、新搭載された「アイストップ・Eco」。冬場や旅行時など、“製氷室をほとんど使わない”ユーザーが一定数いるというIoTデータを踏まえて、製氷室の運転を停止し、冷やし込みを抑えて節電するモードを搭載している。
しかも、冷蔵庫全体を止めるのではなく、「全室独立構造」というハードウェアを活かし、製氷室だけを狙って節電できる――ここには、日々の暮らしに合わせて“能動的に”省エネに参加してもらおうという思想が透けて見える。
販売の現場でも同様だ。高度で複雑になっていく機能を、きちんと説明できる店舗を認定する「三菱家電製品 正規取扱店制度」を導入し、ユーザーと製品のミスマッチを減らそうとしている。
機能が多いほど、“カタログだけ見て何となく選ぶ”ことのリスクは高まる。そのギャップを埋めるために、流通の仕組みまで含めてデザインしようとしているのは興味深い。

食材を科学し(ガラス化)、熱を制御し(分割フレームコイルと0.5刻みの火力)、空間と調和させる(JMシリーズのマテリアル提案)。
2026年モデルの三菱電機製品は、単なる家事の効率化を超えて、料理をする楽しさや、家族と食卓を囲む時間の豊かさ――三菱電機が掲げる「しあわせをシェアしよう」というメッセージを、技術の力で具体的な体験に落とし込んでいるように思う。
これらは、スペックシートの数字では測りきれない価値を持った、“指名買いしたくなる”プロダクトだ。
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