VAGUE(ヴァーグ)

Shark(シャーク)が斬新な扇風機群で一気に“夏”を取りに来た! 羽根なしタワー、コードレスミスト、冷却プレートなんでもあるぞ

「掃除機のShark」から、“暑さを解くShark”へ

 近年の日本の夏は、もはや“暑い季節”ではなく、生活設計そのものを変えなければならないほどの災害級の酷暑になっている。屋内ではエアコンを前提にしながらも、部屋のどこにいても快適とは限らない。屋外では短時間の移動ですら消耗する。

 しかもその不快は、家の中、外出先、睡眠中、通勤時、子どもやペットのまわりなど、場面ごとに質が異なる。

 今回Sharkが見せたのは、この“暑さの多層化”に対して、製品を一点突破ではなく面で揃えるという戦略だった。企業視点で見れば、これはかなり筋がいい。いまの家電市場は、ひとつのヒット商品で勝ち切る時代ではない。

 むしろ、ひとつの季節課題を複数の生活シーンに分解し、そのすべてに解像度高く答えを出せるブランドが強くなる。Sharkはその地図を、かなり明快に描き始めている。

Sharkの2026年夏モデルが並んだ発表会場。中央の「TURBOBLADE」、左の「HydroGo」、右の「ChillPill」が、空間・移動・身体という3つのレイヤーで“涼しさ”を提案する今季の戦略を象徴している
Sharkの2026年夏モデルが並んだ発表会場。中央の「TURBOBLADE」、左の「HydroGo」、右の「ChillPill」が、空間・移動・身体という3つのレイヤーで“涼しさ”を提案する今季の戦略を象徴している

羽根なしタワーの弱点を、Sharkはどう乗り越えたのか

 今回の新製品の中で、もっとも“家電らしい進化”を感じさせたのが「TURBOBLADE」だ。ひと目見れば羽根なしのタワーファンだが、本質はそこにない。面白いのは、従来の羽根なしタワーファンが持っていた不満や限界を、かなり素直に見つめ直した上で設計されていることだ。

 羽根なしタワーファンは見た目が美しく、安全性も高い。だが一方で、風が弱い、狙った場所に当てにくいなどといった印象を持つ人も少なくない。

 とくに日本の住環境では、リビングとダイニングが連続していたり、ソファと床座が混在していたり、家族内で暑がりと寒がりが同居していたりする。単純な首振り機能だけでは、意外と対応しきれない。

 その点、TURBOBLADEは発想の起点が違う。風の向きそのものを自在に変えられるのだ。本体は垂直にも水平にも使え、左右の吹出口は独立して角度調整ができる。

 つまり、片側はソファに、もう片側はダイニングに向けるといった使い方もできるし、低い位置でくつろぐ人やペットに風を送ることもできる。さらに首振りと吹出口の角度を組み合わせることで、部屋全体へ広く風を回していける。

Shark TURBOBLADE(シャーク ターボブレード)ハイパワータワーファン
Shark TURBOBLADE(シャーク ターボブレード)ハイパワータワーファン

 ここで重要なのは、これが単なるギミックではないということだ。家電は、使い手の生活シーンに入った瞬間に評価が決まる。

 店頭では“多機能”に見えても、家で使うと面倒なら定着しない。だがTURBOBLADEの可動は、生活者の「こう置きたい」「ここにだけ当てたい」「今日は洗濯物に風を当てたい」といった、実に日常的な欲求に直結している。つまり、機構そのものがUXになっている。

 加えて興味深いのが、「エアブランケット」という睡眠訴求だ。水平送風にした本体をベッド横に設置し、ベッドの上を風が這うように流していく。顔に直接風を当てるのではなく、身体の上をなでるように空気が通ることで、自然な涼しさを得るという考え方である。

 この提案は、いかにもいまらしい。なぜなら現代の家電市場では、単に「冷える」「強い」「静か」だけでは差別化が難しいからだ。睡眠、ウェルビーイング、自然な心地よさ。そうした言葉に接続できて初めて、高価格帯の価値が成立する。

 TURBOBLADEは、扇風機を“風量競争”から一段引き上げ、空間体験の家電として再編集しようとしている。

吹出口を上下それぞれ動かせるTURBOBLADEの可動機構を実演している様子。羽根なしタワーファンの美しさはそのままに、上下左右さまざまな狙った場所へ風を届ける“使える自由度”を大きく引き上げたのがこの製品の肝だ
吹出口を上下それぞれ動かせるTURBOBLADEの可動機構を実演している様子。羽根なしタワーファンの美しさはそのままに、上下左右さまざまな狙った場所へ風を届ける“使える自由度”を大きく引き上げたのがこの製品の肝だ

ChillPillは“ハンディファンの次”を狙う製品だ

 一方で、もっとマーケットの読みが鋭いと感じたのは「ChillPill」である。市場にはすでに膨大な数のハンディファンがある。価格も安く、入手も簡単だ。

 しかし、多くの人が薄々感じているように、その市場はすでに均質化している。似た形、似た性能、似た価格帯の製品が並び、どれを買っても大差がない。

 そこにSharkがどう入るのか? 答えは明快だった。Sharkは、ハンディファンを“ファン”のまま強化するのではなく、“パーソナルクーリングデバイス”に再定義したのである。

Shark ChillPill(シャーク チルピル)パーソナルクーリングファン
Shark ChillPill(シャーク チルピル)パーソナルクーリングファン

 ChillPillは、ファン、ミスト、冷却プレートという3つの冷却機能を備える。風で冷やし、ミストの気化熱で冷やし、さらにペルチェ素子によるプレートで直接肌を冷やす。ここで優れているのは、単機能を3つ載せたことではない。暑さには種類がある、という前提に立っていることだ。

 少し歩いただけで顔まわりが暑い時。炎天下で身体そのものが熱を持ってしまった時。メイク中やデスクで、自分の周辺だけを少し快適にしたい時。

 あるいはベビーカーやバッグ、ジムのマシンまわりなど、空間全体の温度は変えられないが、自分の局所だけを冷やしたい時。ChillPillは、そのひとつひとつに使い方を割り振っている。

 実際、首掛け、卓上、クリップ固定、クランプ装着などアクセサリー展開もかなり練られていた。ここに、Sharkらしい発想がある。日本のハンディファン市場は、どちらかといえば“単体完結の小物家電”として育ってきた。

 しかしChillPillは、本体だけではなくアクセサリー込みで使い方を広げる。言い換えれば、製品単体ではなく利用シーンごと設計している。

 これは起業家視点で見ても非常に重要だ。いまの市場でブランドが利益を出すには、ハード単体の差ではなく、使い方のエコシステムまで含めた提案力が要る。

 Appleが本体だけでなく周辺アクセサリーや体験を含めて価値を作ってきたのと同じで、家電もまた“本体+文脈”の時代に入っている。ChillPillはその意味で、単なる新規性のあるガジェットではなく、Sharkがこれから日本でどこまでライフスタイル家電に踏み込めるかを占う試金石だろう。

冷却プレートを首元に当てて使うChillPillの使用イメージ。単に風を送るだけでなく、ミストやペルチェ式冷却プレートまで備えたことで、“ハンディファンの次”を狙う製品であることが一目で伝わる
冷却プレートを首元に当てて使うChillPillの使用イメージ。単に風を送るだけでなく、ミストやペルチェ式冷却プレートまで備えたことで、“ハンディファンの次”を狙う製品であることが一目で伝わる

なぜクラウドファンディングなのか。その選択にも意味がある

 ChillPillが一般流通ではなく、まずGREEN FUNDINGで展開される点も見逃せない。これは販路の問題ではなく、マーケティングの思想そのものだ。

 おそらくShark側も、この製品が“普通のハンディファン”として比較されると分が悪いことは理解している。価格は高めで、構造も従来品より複雑だ。

 だが、だからこそ情報感度が高く、新しいプロダクトに価値を見いだす層に先に届ける必要がある。クラウドファンディングは、そのための場として理にかなっている。

 近年、クラウドファンディングは単なる資金調達の場ではなくなった。市場テストであり、コミュニティ形成であり、熱量の高い初期ユーザーを獲得するメディアでもある。

 特に新しいカテゴリや、新しい使い方を伴う製品では、量販店の棚より先にクラファンで“文脈ごと売る”ほうがうまくいく場合が多い。

 私はMakuakeエヴァンジェリストも務めており、クラファンの現場も長く見てきているが、成功する製品はスペックが高いだけではなく、「なぜいま必要なのか」のストーリーを語れるものがほとんど。ChillPillは、その語りしろを持っている。

 暑さの質に応じて冷やし方を選ぶという設計思想、アクセサリーで使い方を広げる発想、そして質感やカラーにまでこだわったプロダクト性。ガジェット好きの初期層に響く要素が揃っている。Sharkがまずそこに打ち込んだのは、かなり合理的だ。

ベビーカーに装着したChillPillの展示例。自分だけでなく子どものまわりにも涼しさを持ち運べる提案は、暑さ対策を“個人の道具”から“生活シーンの道具”へ広げる象徴的な使い方だ
ベビーカーに装着したChillPillの展示例。自分だけでなく子どものまわりにも涼しさを持ち運べる提案は、暑さ対策を“個人の道具”から“生活シーンの道具”へ広げる象徴的な使い方だ

Sharkが取りに来たのは、 “夏の過ごし方”そのものだ

 そしてもうひとつ、今回の発表全体を通じて感じたのは、Sharkが売ろうとしているのは扇風機ではなく、“夏の過ごし方の選択肢”だということだ。

 TURBOBLADEは、部屋の中のどこで、誰が、どう涼むかを再設計する製品だ。HydroGoは、卓上で使うことを想定しているが、外にも涼しさを持ち出せる製品だ。ChillPillは、自分だけを効率よく冷やすためのパーソナルデバイスだ。つまりSharkは、涼しさを「空間」「移動」「身体」という3つのレイヤーに分解している。

 この視点は、いまの日本市場にとても合っている。電気代の高騰もあり、エアコンを強く効かせるだけでは解決しにくい。家族構成も、住環境も、働き方も多様化している。

 昔のように「一家に一台の扇風機」で済む時代ではない。個人最適、局所最適、シーン最適。そうした文脈にきちんと応えられる製品群こそ、これから伸びる。

 Sharkの強みは、ここに“道具感”を残していることでもある。やたらと難しいスマート化に逃げず、まず風の出し方、持ち運び方、当て方、冷やし方を磨いている。

 生活家電は、結局その誠実さがいちばん強い。派手なAIより、今日はどう暑いのかをちゃんと見ている家電のほうが、暮らしには効く。

Shark FlexBreeze HydroGo(シャーク フレックスブリーズ ハイドロゴー)コードレスサーキュレーターファン
Shark FlexBreeze HydroGo(シャーク フレックスブリーズ ハイドロゴー)コードレスサーキュレーターファン

 羽根なしタワー、コードレスミスト、冷却プレート。今回Sharkが見せたのは、3つの新製品というより、暑さをめぐる3つの問いに対する答えだった。部屋をどう涼しくするか。外にどう涼しさを持ち出すか。自分自身をどう冷やすか。日本の夏がさらに厳しくなる中で、この問いは今後ますます重くなる。

 だからこそ、今回の発表は面白い。Sharkは一気に“夏を取りに来た”。だがその本質は、単に季節家電を強化したことではない。夏をどう生きるか、その選択肢を増やしにきたのである。

HydroGoを持って屋外で過ごすライフスタイルカット。家の中だけでなく、散歩やレジャー、ペットとの時間にまで“涼しさを連れ出す”という、Sharkの夏家電戦略を自然に伝える1枚だ
HydroGoを持って屋外で過ごすライフスタイルカット。家の中だけでなく、散歩やレジャー、ペットとの時間にまで“涼しさを連れ出す”という、Sharkの夏家電戦略を自然に伝える1枚だ

製品仕様
Shark TURBOBLADE(シャーク ターボブレード)ハイパワータワーファン
価格:3万4980円(税込)
カラー:チャコールグレー/ホワイト
サイズ:H113.9〜130.0×W25.0×D29.9cm(縦向き設置時)、H79.8〜95.9×W80.2×D29.9cm(横向き設置時)
重量:約6.5kg
モーター:BLDCモーター
機能:360°送風/10段階風量/ブーストモード/おやすみ/リズム/水平送風/高さ調整/2方向同時送風
タイマー:1/2/4/8/12時間
発売:2026年4月6日

Shark ChillPill(シャーク チルピル)パーソナルクーリングファン
価格:2万2000円(税込)
カラー:ホワイト/チャコールグレー/ターコイズブルー/ピンク/ベージュ/ローズ
サイズ:W8.5×D4.6×H10.2〜11.3cm
重量:約240〜285g
モーター:BLDCモーター
機能:ファン/ミスト/冷却プレート/10段階風量調整/卓上使用
ミスト:2モード(断続/連続)
充電:USB Type-C
駆動時間:最大11時間(送風時)/最大2時間(冷却プレート使用時)
発売:2026年3月30日よりGREEN FUNDINGでプロジェクト開始

Shark FlexBreeze HydroGo(シャーク フレックスブリーズ ハイドロゴー)コードレスサーキュレーターファン
価格:1万9800円(税込)
カラー:グレー/ホワイト/ブルー/アイボリー/グリーン/ピンク/パープル
サイズ:H29.5×W21.8×D20.1cm
重量:約2.0kg
機能:コードレス送風/ドライミスト/風量5段階/ブーストモード/最大12時間駆動
防水性能:IPX5
充電:USB Type-C
発売:2026年4月6日

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滝田勝紀
滝田勝紀
VAGUE家電統括プロデューサー
モノ雑誌の編集に15年以上携わり『デジモノステーション』編集長を歴任。現在は家電スペシャリストとして、国内外の最新テクノロジーを長年取材。All About家電ガイドやMakuakeエバンジェリスト、楽天ROOM公式インフルエンサー(フォロワー56万人超)など幅広く活動する。海外取材経験も豊富で、欧州家電メーカー本社や世界最大級の見本市「IFA」への造詣も深い。また、Z世代向けメディア運営やPR会社経営の傍ら、インテリアスタイリスト窪川勝哉氏とのユニット「𝒾𝓃𝒞𝒶𝒹𝑒𝓃𝓏𝒶」で家電開発も手掛ける。機能とデザインの両面から、心地よい暮らしのあり方を提唱している。

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