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もう“ただのピンポン”ではない。パナソニックのAIドアホンが示す、家庭防犯の新基準とは?

非常通知機能に見る“最後は物理ボタン”という思想

 個人的に今回もっとも注目したいのが、AI機能とは別に搭載された「非常通知機能」です。

 ワイヤレス子機の背面には非常ボタンがあり、別売りのワイヤレス非常ボタンも用意されます。このボタンを押すと、宅内外の機器が大音量で鳴動し、登録したスマートフォンにも通知が届きます。玄関子機側から外へ警報を出すこともできます。

別売りのワイヤレス非常ボタン。非常時に押すと宅内外で警報を鳴らし、登録したスマートフォンへ通知を送信。侵入後のSOS発信まで想定した“攻めの防犯”を支える
別売りのワイヤレス非常ボタン。非常時に押すと宅内外で警報を鳴らし、登録したスマートフォンへ通知を送信。侵入後のSOS発信まで想定した“攻めの防犯”を支える

 これは地味ですが、非常に大きな意味があります。なぜなら、侵入された後の防犯まで考えられているからです。

 多くの家庭防犯は、侵入されないための対策に偏りがちです。鍵を強化する、防犯カメラを設置する、センサーライトを付ける。もちろん、それらは重要です。

 しかし、万が一侵入された後に、どうSOSを出すのか。冷静に110番できない状況で、どう周囲や家族に異常を知らせるのか。ここまで考えられている家庭は多くありません。

 非常ボタンは最大6台まで連携可能。寝室、リビング、トイレ、玄関近くなどに設置すれば、逃げ込んだ先でボタンを押せます。しかも、ただスマホに通知するだけでなく、家の中と外に音で異常を知らせる。これは犯罪者にとって非常に嫌な仕組みです。

非常通知機能の仕組みを示した資料。ワイヤレスモニター子機や非常ボタンから異常を知らせると、宅内警報とスマートフォン通知が同時に作動し、家族や周囲へ素早く危険を伝える
非常通知機能の仕組みを示した資料。ワイヤレスモニター子機や非常ボタンから異常を知らせると、宅内警報とスマートフォン通知が同時に作動し、家族や周囲へ素早く危険を伝える

 スマートフォンで何でもできる時代に、あえて物理ボタンを残す意味も大きいと感じました。非常時にアプリを開き、画面を操作し、通知を送る余裕があるとは限りません。慌てている時、暗い時、手が震えている時、最後に頼れるのは押せば反応する物理ボタンです。

 佐々木氏は発表会で「防犯は受けるだけではなく、いかに威嚇できるか、犯罪者に対して攻める防犯ができるかが重要」と語っていました。まさにこの非常通知機能は、受け身の防犯から一歩進んだ“攻めの防犯”と言えます。

非常通知が発報された際のモニター親機画面。異常発生時には宅内だけでなく、屋外の玄関子機にまで大きな警告音が鳴り響く。スマートフォンにも通知が送られ、迅速な状況把握と対応を支援する
非常通知が発報された際のモニター親機画面。異常発生時には宅内だけでなく、屋外の玄関子機にまで大きな警告音が鳴り響く。スマートフォンにも通知が送られ、迅速な状況把握と対応を支援する

パナソニックらしい強みは、家全体とつながること

 ここにパナソニックの家電メーカーとしての強みがあります。単体のガジェットとして見れば、スマートドアベルやネットワークカメラはすでに市場にあります。

 しかし、ドアホン、電話、ファクス、宅配ボックス、センサーカメラ、電気錠など、住まいの中の複数機器をつなげて防犯を組み立てられるのは、住宅設備と家電の両方を持つメーカーならではです。

 いまのスマートホーム市場は、便利な単機能デバイスがバラバラに存在している状態です。アプリも別、設定も別、通知も別。これでは一般生活者にとっては負担が大きい。

 パナソニックが目指しているのは、ドアホンを起点に、住まいの安心・安全を束ねるプラットフォーム化なのだと思います。

 同社は今後、ネットワーク対応ドアホンの販売台数を2028年度までに2倍、サーバー接続台数を2030年までに5倍に増やすことを目標に掲げています。単に製品を売るだけでなく、つながった後にどんな価値を提供するかが事業の焦点になっているのです。

 価格はすべてオープン価格で、市場想定価格は「VL-X70AHF」が9万円前後、「VL-X70AHS」が10万9000円前後、ワイヤレス非常ボタンが4300円前後、屋外センサーカメラ「VL-CX800K」が5万5000円前後です。

 一般的なドアホンとして見れば安くはありません。しかし、防犯カメラ、見守り、スマホ連携、電気錠連携、非常通知まで含めて考えると、単なるインターホンとは違う領域に入っていることがわかります。

玄関子機の樹脂タイプ「VL-X70AHF」。上位モデルの「VL-X70AHS」と機能は共通ながら、外装素材を樹脂とすることで市場想定価格を9万円前後に抑えたモデル。AI顔認証や自宅前防犯など、今回の進化をより導入しやすい形で提案している
玄関子機の樹脂タイプ「VL-X70AHF」。上位モデルの「VL-X70AHS」と機能は共通ながら、外装素材を樹脂とすることで市場想定価格を9万円前後に抑えたモデル。AI顔認証や自宅前防犯など、今回の進化をより導入しやすい形で提案している

家電で読み解くと、玄関は「生活の境界線」だった

 今回のAIドアホンを見て改めて感じたのは、玄関という場所の意味です。

 玄関は、家の内と外を分ける境界線です。宅配も、訪問販売も、近所付き合いも、犯罪の下見も、家族の帰宅も、すべてこの場所を通ります。だからこそ、玄関をどう管理するかは、これからの暮らしにとって非常に重要です。

 かつて防犯家電の中心は固定電話でした。しかし犯罪の入口が変われば、防犯の中心も変わります。電話からSNSへ。そして玄関へ。そう考えると、今回のAIドアホンは単なる新製品ではありません。社会の不安がどこに集まっているのかを映し出した、ひとつの時代の象徴です。

 ドアホンは嗜好品ではありません。マニアが熱狂する製品でもありません。だからこそ、これまであまり語られてこなかったのかもしれません。

 しかし、生活に深く入り込み、いざという時に家族を守る可能性がある。そう考えると、冷蔵庫や洗濯機のような生活必需家電とは別の意味で、極めて重要な生活インフラです。

パナソニックが提案する防犯ソリューション群。固定電話、ドアホン、電気錠、センサーカメラなどを連携させることで、住まい全体を見守る統合型の防犯環境を構築できる
パナソニックが提案する防犯ソリューション群。固定電話、ドアホン、電気錠、センサーカメラなどを連携させることで、住まい全体を見守る統合型の防犯環境を構築できる

 今回のAIドアホンは、家電の進化が必ずしも派手なスペック競争だけではないことを教えてくれます。暮らしの中にある不安を見つめ直し、それをテクノロジーで少しでも軽くする。そこにこそ、これからの家電の価値があります。

「ドアホンなんて、もう進化しない」と思っていた人ほど、一度見直してみるべきです。玄関先の小さな機器が、これからの家庭防犯の主役になるかもしれません。

製品概要
ワイヤレスモニター付テレビドアホン VL-X70AHS
ワイヤレスモニター付テレビドアホン VL-X70AHF
発売日:2026年6月18日
VL-X70AHS市場想定価格:10万9000円前後(税込)
VL-X70AHF市場想定価格:9万円前後(税込)

 両モデルの機能差は主に玄関子機の外装素材。VL-X70AHSはアルミ素材による高級感を重視し、VL-X70AHFは樹脂素材によって価格を抑えたモデルとなる。機能面は共通仕様。
・玄関子機にエッジAIを搭載したフラッグシップモデル
・AI顔認証(最大30人登録)対応
・AI自宅前防犯(うろつき検知/敷地内検知)対応
・ワイヤレス非常通知機能対応
・スマートフォン連携対応
・AI顔認証+Bluetooth認証による手ぶら解錠対応
・ワイヤレスモニター子機付属
・屋外センサーカメラ連携対応(最大4台)

Gallery 【画像】パナソニックが9年ぶりにフルモデルチェンジしたテレビドアホンを写真で見る(23枚)
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滝田勝紀
滝田勝紀
VAGUE家電統括プロデューサー
モノ雑誌の編集に15年以上携わり『デジモノステーション』編集長を歴任。現在は家電スペシャリストとして、国内外の最新テクノロジーを長年取材。All About家電ガイドやMakuakeエバンジェリスト、楽天ROOM公式インフルエンサー(フォロワー56万人超)など幅広く活動する。海外取材経験も豊富で、欧州家電メーカー本社や世界最大級の見本市「IFA」への造詣も深い。また、Z世代向けメディア運営やPR会社経営の傍ら、インテリアスタイリスト窪川勝哉氏とのユニット「𝒾𝓃𝒞𝒶𝒹𝑒𝓃𝓏𝒶」で家電開発も手掛ける。機能とデザインの両面から、心地よい暮らしのあり方を提唱している。

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