硬さ、柔らかさで選ぶ時代からAIが“人に合わせる時代”へ。 日本初の旗艦店を開いたAIマットレスブランド「HEKA(ヘカ)」を恵比寿で体験した
技術の凄さと、買いたくなる理由は別の話
ただし、ここからが難しい。私はHEKAの技術的な挑戦にはかなり興味を持った。一方で、すぐに購入したいかと問われると、まだ答えに迷う。
理由のひとつは価格だ。HEKAにはM、U、UU、GTS、Oの5シリーズがあり、シングル価格でも約44万円台から、最上位モデルでは約1196万円台まで幅がある。調整可動域や調整精度が上位モデルほど高くなるという説明は理解できるが、日本の生活者にとっては簡単に納得できる価格帯ではない。

もちろん、睡眠は人生の約3分の1を占める。高級車や時計、オーディオにお金をかけるように、睡眠環境に投資する人がいても不思議ではない。実際、海外では北米、欧州、中東、アジアなどで展開を広げているという。
しかし日本市場はシビアだ。新しい技術に価値を認める一方で、理由が少しでも曖昧だと財布の紐は固くなる。スタンフォード大学、AI、睡眠データ、知財、世界展開という言葉は強い。だが、それだけで「では買おう」となるほど、この市場は単純ではない。
さらに、HEKAは医療機器ではない。呼吸の通りや体圧分散、頸椎や腰椎のカーブ維持などを訴求するが、睡眠障害が治る、腰痛が改善するといった医療効果を断定できる商品ではない。この距離感をどう伝えるかは、ブランド側にとっても重要な課題になる。

日本の寝室を変える存在になるのか
HEKAの日本展開には大きな可能性と同時に難しさがある。高級ホテルや富裕層向け住宅、接骨院などとの連携は想像しやすい。自宅で一晩試す前に、ホテルのスイートルームで体験するという導線もあり得るだろう。
一方で、一般生活者に広がるには、技術説明だけでは足りない。必要なのは、使い続けた先に朝がどう変わるのかを示すことだ。数分間の体験では、寝心地の良さや動く面白さは分かる。けれども、本当の価値は翌朝、1週間後、1か月後に見えてくる。

家電の歴史を振り返れば、最初は高価で半信半疑だった製品が、やがて生活の常識になることはある。ロボット掃除機も、ドラム式洗濯乾燥機も、最初から万人に受け入れられたわけではない。HEKAも同じように、寝具の新しいカテゴリーをつくる可能性はある。
ただ、現時点で私はまだ半信半疑だ。技術は面白い。寝心地も確かに良かった。マットレスが人に合わせるという思想にも強く惹かれる。だが、その価値にどこまで対価を払うのか、そして日本の生活者がどこまで受け入れるのかは、これから問われる。
それでも、ひとつだけ言えることがある。HEKAは「どのマットレスを選ぶか」ではなく、「マットレスが人に合わせるべきではないか」という新しい問いを投げかけている。数分の体験だけで、その価値のすべてを判断することは難しい。
HEKA側もその点を意識しており、一度の体験だけでなく、数回、できれば30〜60分ほどかけて実際に横たわることを推奨しているという。また将来的には、より多くの人が体験しやすい形として、サブスクリプションなどの可能性も検討しているとのことだった。
「すべての人に、心地よい眠りを」。そのミッションに向けて、HEKAが日本の寝室にどのような新しい選択肢を提示していくのか。数分間の体験を終えたあとも、もし1カ月使ったら自分の朝はどう変わるのだろうか——そんな前向きな興味が残った。

製品概要
HEKA AIマットレス
価格:44万2750円〜1千196万8000円
シリーズ:Mシリーズ/Uシリーズ/UUシリーズ/GTSシリーズ/Oシリーズ
サイズ:スモールシングル、シングル、セミダブル、ダブル、ワイドダブル、クイーン、キング
主な機能:体圧のリアルタイム検知・解析、AIによる完全自動調整、アプリ・リモコン不要の自動制御、超静音エアダイナミックシステム、スマートエラスティック柱構造
調整可動域:6.3cm〜12.5cm
調整精度:0.9mmHg〜0.06mmHg
硬さ・肌ざわり:トップ層とコンフォート層の組み合わせにより4段階から選択可能
特徴:寝ている人の体圧や姿勢を検知し、マットレス内部の構造を自動調整。仰向け、横向き、寝返り後など、姿勢の変化に合わせて身体を支えるAIマットレス。
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