硬さ、柔らかさで選ぶ時代からAIが“人に合わせる時代”へ。 日本初の旗艦店を開いたAIマットレスブランド「HEKA(ヘカ)」を恵比寿で体験した
「硬め」「柔らかめ」だけで選ぶ時代への違和感
マットレス選びは難しい。店頭で横になり、硬めか柔らかめかを確かめる。低反発か高反発か、コイルかノンコイルか、素材や厚みを比較する。けれども、そこで選んだ寝心地が、本当に毎晩の自分に合い続けるかは分からない。

人の身体は均一ではない。仰向けになれば臀部に体重が集まり、横向きになれば肩や腰に圧がかかる。同じ人でも、疲れ方や体調、年齢によって、身体が寝具に求める支え方は変わっていく。それなのに多くのマットレスは、購入した瞬間から構造が固定される。
HEKAが投げかける問いは、この前提そのものにある。同ブランドのメッセージは「マットレスを選ぶ時代はもう終わり。これからはAIがあなたに合わせる時代へ」。これは単なるキャッチコピーではなく、寝具を“固定された家具”から“身体に合わせて動くシステム”へ変えようとする思想でもある。

寝具メーカーというより、スリープテック企業
HEKAの説明を聞いていると、一般的な寝具メーカーというより、スリープテック企業という印象を受ける。資料では、日本国内のスリープテック市場を背景に、HEKAをスマートベッド領域のAIマットレスとして位置づけている。睡眠を計測するウェアラブルやアプリとは異なり、寝ている身体そのものを支えるマットレス側が動く点が特徴だ。
同社は2013年にAIマットレスを米国で開発し、2018年に量産化したと説明する。さらに225件の知的財産、230万件規模の睡眠データ、専用チップやアルゴリズムを強みとして掲げている。
内部には、体圧を検知するセンサー、クラウドモーションアルゴリズム、HEKAトラックスリープチップ、超静音エアダイナミックシステム、スマートエラスティック柱構造などが組み合わされる。
重要なのは、アプリやリモコン操作を前提にしていないことだ。ユーザーは細かく設定するのではなく、電源を入れて横になるだけ。あとは体圧を検知し、AIが自動で調整する。家電の進化が「操作を増やすこと」ではなく「操作を消すこと」に向かっていると考えれば、HEKAの発想は現在のスマート家電の延長線上にある。

身体の下で、マットレスがゆっくり形を変える
実際にHEKAに横たわってみると、確かに一般的な高級マットレスとは違う感覚があった。柔らかく沈み込むのではない。身体の重い部分を受け止めながら、圧が抜けている部分を下から支えるように動いていく。

仰向けになると、体圧を可視化するデモ画面では腰から臀部にかけて圧が集中していた。しばらくすると、臀部側を少し受け止めつつ、腰や背中の下にある隙間を埋めるようにマットレスが動く。派手な動きではなく、気づくと身体の下の形が変わっているという感覚に近い。
横向きになると、今度は肩と腰にかかる圧が目立つ。すると再び調整が入り、肩を受け止めながら腰まわりを支える。寝姿勢が変わっても、マットレス側が再び身体を読み直すというわけだ。

この体験自体は非常に面白い。従来の寝具選びで語られてきた「硬い」「柔らかい」とは別の軸にある。HEKAが売っているのは寝心地そのものというより、体圧に応じて支え方を変えるアルゴリズムなのかもしれない。
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