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ロータリー搭載車ってじつは“マツダ”だけじゃなかった! 最後はメーカーが回収し破壊した幻のプロトタイプ 奇跡的に生き残ったシトロエン「M35」とは

予想落札価格は約480万円〜640万円前後と現実的なオネダン

 クラシックカーのオークション市場には時折、単なる古いクルマ、という枠を超えて、自動車メーカーの壮大な挑戦と挫折の歴史を物語る「走る実験室」のような貴重な個体が登場します。

 2026年8月に米国で開催されるブロードアローオークションの「ザ・クエイル・オークション」に出品される1970年式のシトロエン「M35」は、まさにそんな歴史の証人と言える1台です。

 提示されている予想落札価格は3万ドルから4万ドル(日本円で約480万円〜640万円前後)と比較的現実的な数字ですが、このクルマが持つ歴史的価値と希少性は予想金額をはるかに凌駕しています。

 このM35は、シトロエンが1960年代後半から1970年代初頭にかけて、未来のパワートレインとして世界中から注目されていた「ヴァンケル・ロータリーエンジン」の可能性を模索するために開発した公道走行可能なプロトタイプです。

 シトロエンはドイツのNSU社と合弁会社「コモトール」を設立し、専用の995ccシングルローター・ロータリーエンジンを開発しました。

 この新エンジンをテストするための車体として、大衆車「アミ8」のプラットフォームをベースに、フランスの名門カロッツェリア「ウーリエ」が手がけた美しい2+2のクーペボディを組み合わせたのです。

 さらにシトロエンの代名詞であるハイドロニューマチックサスペンションや前輪ディスクブレーキも装備され、同社の先進技術が凝縮された贅沢な小型クーペが誕生しました。

オークションに出品される予定の1970年式シトロエン「M35」(c)2026 BROAD ARROW Auctions
オークションに出品される予定の1970年式シトロエン「M35」(c)2026 BROAD ARROW Auctions

 シトロエンはこのクルマを一般に市販するのではなく、年間走行距離の多い忠実なシトロエンのユーザーを厳選し、長期モニター契約という形で貸し出しました。

 貸し出されたユーザーは、日々の運転経験を直接シトロエンのエンジニアリング部門にフィードバックする役割を担い、リアウィンドウには「このシトロエンM35ロータリーエンジン・プロトタイプは、シトロエン顧客の手によって長期テスト中です」というステッカーが貼られ、実験車両であることをアピールしていました。

 しかし、ロータリーエンジン特有の燃費の悪さやオイル消費の問題がネックとなり、プロジェクトはわずか2年で打ち切られます。

 当初は500台の製造を予定していましたが、実際に完成したのはわずか267台にとどまりました。

 さらにシトロエンは、実験終了後にこれらの車両のメンテナンス費用を抑えるため、大半の個体を顧客から買い戻してスクラップにしてしまったのです。メーカー自らの手で破壊を免れ、現在世界に生き残っているのはわずか50台から100台程度と推定されています。

 今回出品されるシャシ番号124番の個体は、フランスのドロドーニュ地方で初期の時代を過ごし、長年プライベートコレクションで動態保存されていたため、極めて優れたオリジナルコンディションを保っています。

 2015年には著名なアメリカの「ミューリン自動車博物館」の創設者であるピーター・ミューリン氏に買い取られて渡米し、同博物館の名だたるフランス車のコレクションたちとともに展示されていました。

 カタログ作成時の走行距離はわずか1万8704kmを示しており、2025年の鑑定レポートでも「エクセレント」の最高評価を受けています。シトロエンの誕生証明書も付属するこの奇跡の生き残りは、自動車の技術革新に挑んだメーカーの情熱を今に伝える、コレクター必見の文化的遺産です。

Gallery 【画像】シトロエンに“ロータリーエンジン”搭載車があった! 56年前の「M35」を見る(28枚)

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