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30万円オーバーのドラム式洗濯乾燥機となにが違う? ニトリの新「約10万円ドラム洗乾」を家電のプロが試してわかったこと

乾燥はヒートポンプではない。だが、そこだけで判断するのは早い

 では、30万円オーバーのドラム式洗濯乾燥機と何が違うのか。最もわかりやすいのは、乾燥方式です。

 本機はヒートポンプ式ではなく、ヒーター式です。乾燥時間や省エネ性、衣類への熱負担という点では、高価格帯のヒートポンプ式モデルに優位性があります。ここは価格差として理解しておきたい部分です。

 一方で、本機には低温乾燥コースが用意されています。低温乾燥コースは衣類の縮みやいたみが気になるときに使う機能で、約60℃の温風でじっくり乾燥するものとされています。

 実際に、黒いTシャツと靴下で試してみました。低温乾燥は洗濯から自動でそのまま使うのではなく、一度洗った衣類を取り出し、その後あらためて低温乾燥をかける流れです。運転時間は2時間以上。通常乾燥と比べると、どうしても時間はかかります。

低温乾燥を試すため、黒いTシャツと靴下を一度洗ったところ。低温乾燥は洗濯から自動で続けて使うのではなく、洗濯後の衣類を再びドラムに戻して乾燥させる流れになる
低温乾燥を試すため、黒いTシャツと靴下を一度洗ったところ。低温乾燥は洗濯から自動で続けて使うのではなく、洗濯後の衣類を再びドラムに戻して乾燥させる流れになる

 仕上がりを見ると、黒いTシャツは裾部分がわずかに短くなったものの、肩まわりや首まわりは大きく崩れず、普段着として十分着られる状態でした。靴下にも多少の縮みは見られましたが、着用には支障のないレベル。

 つまり、低温乾燥だからまったく縮まないわけではありませんが、通常乾燥と使い分ける価値はあります。

低温乾燥後の黒いTシャツと新品の同じTシャツを重ねて比較。裾にはわずかな縮みが見られたが、肩まわりや首まわりは大きく崩れず、普段着として十分着られる仕上がりだった
低温乾燥後の黒いTシャツと新品の同じTシャツを重ねて比較。裾にはわずかな縮みが見られたが、肩まわりや首まわりは大きく崩れず、普段着として十分着られる仕上がりだった

 ここは誤解してはいけないところです。ヒートポンプ式の上位モデルと同等の衣類ケアを期待する製品ではありません。大切なおしゃれ着を何でも乾燥まで任せる、という使い方は慎重であるべきです。

 ただ、タオルや下着、普段着を中心に、日常の洗濯乾燥を任せるなら話は別です。通常乾燥ではタオルがふかふかに仕上がり、部屋干しよりもパイルが立ち、肌触りも良好でした。

 乾燥容量は5kgなので、10kg分をすべて乾燥するのではなく、乾燥まで任せたいものを選んで使う。そう考えれば、かなり現実的です。

同じ枚数のタオルを重ね、乾燥方法による仕上がりの違いを比較。右側が乾燥機で仕上げたタオルで、ふくらみが出やすく、肌触りもやわらかい
同じ枚数のタオルを重ね、乾燥方法による仕上がりの違いを比較。右側が乾燥機で仕上げたタオルで、ふくらみが出やすく、肌触りもやわらかい

30万円オーバーのドラム式と何が違うのか

 ここで改めて、30万円オーバーの大手メーカー上位モデルと何が違うのかを整理してみます。

 まず、高価格帯モデルには、ヒートポンプ乾燥、大風量乾燥、シワ抑制、AI制御、スマートフォン連携、自動お手入れ、細かなセンサー制御などが搭載されることが多い。

 乾燥時の電気代、衣類へのやさしさ、乾燥後のシワ、運転音や振動の質、長期的な利用に対する安心感も含め、そこには価格なりの理由があります。

 一方、ニトリの10kgモデルは、それらすべてに同じレベルで対抗する製品ではありません。スマホ連携もありません。AIが洗濯を最適化してくれるわけでもありません。発売から時間が経っていないため、長期的な安心感についても、現時点で断定的に評価することはできません。

 しかし、ここが重要です。

 洗濯10kg、乾燥5kg。洗剤・柔軟剤自動投入。温水洗浄。通常乾燥と低温乾燥。左右開き。上面給水。コンパクトな設置性。これらは、多くの家庭がドラム式洗濯乾燥機に求める中心的な価値です。

幅約60cm、奥行約59.5cmの本体は、通常の防水パンにもすっきり収まるサイズ。10kgクラスながら過度に大きく見えず、導入しやすい設置性も本機の強みだ
幅約60cm、奥行約59.5cmの本体は、通常の防水パンにもすっきり収まるサイズ。10kgクラスながら過度に大きく見えず、導入しやすい設置性も本機の強みだ

 つまり、ニトリの10kgドラムは、30万円の上位機をそのまま10万円にした製品ではありません。むしろ、ドラム式洗濯乾燥機に必要な機能を見極め、日常生活で使う部分を残した実用機です。

 成熟した市場では、すべての機能を足し続けるだけではなく、「どこまで削っても価値が残るのか」を見極める力が重要になります。

 ニトリは家具やインテリアで培った“生活者目線の価格感”を、白物家電にも持ち込んでいます。これは単なる低価格戦略ではありません。生活者が本当にお金を払いたい機能を再定義する戦略です。

排水フィルターは前面下部から取り外して確認できる。乾燥機能を使うと糸くずやほこりがたまりやすいため、定期的な確認は必要だが、手入れする場所はわかりやすい
排水フィルターは前面下部から取り外して確認できる。乾燥機能を使うと糸くずやほこりがたまりやすいため、定期的な確認は必要だが、手入れする場所はわかりやすい

家電のプロとしての結論。“妥協品”ではなく、目的を絞った実用機

 結論から言えば、ニトリの10kgドラム式洗濯乾燥機は、かなりよくできています。

 もちろん、誰にでも最適な一台ではありません。乾燥の省エネ性を最重視する人、シャツのシワをできるだけ抑えたい人、スマホ連携やAI制御を活用したい人は、上位モデルを選ぶ理由があります。

 しかし、タオルや下着、普段着を洗濯から乾燥まで任せたい。洗剤を毎回量る手間を減らしたい。家族分をまとめて洗いたい。部屋干しの量を減らしたい。そこが目的なら、本機で十分満足できる家庭は多いはずです。

 今回試して感じたのは、消費税込み9万9900円という価格で、ここまで機能と使いやすさを整えていることへの驚きでした。自動投入は注ぎやすく、タンクも外しやすい。温水洗浄は汚れ落ちがよく、通常乾燥ではタオルがふかふかに仕上がる。低温乾燥も、衣類に合わせて使い分ける価値がありました。

ドアパッキンまわりは、水滴や細かな糸くずが残りやすい部分。運転後にさっと確認しておくことで、乾燥まで使うドラム式洗濯乾燥機を清潔に保ちやすい
ドアパッキンまわりは、水滴や細かな糸くずが残りやすい部分。運転後にさっと確認しておくことで、乾燥まで使うドラム式洗濯乾燥機を清潔に保ちやすい

 家電は、もはや“高いものほどいい”だけでは選べない時代に入っています。自分の生活に必要な機能は何か。逆に、なくても困らない機能は何か。その見極めこそが、これからの家電選びの本質です。

 30万円オーバーのドラム式洗濯乾燥機とニトリの10万円ドラムは、確かに違います。でも、その違いがすべての家庭にとって必要かといえば、そうではありません。

 ニトリの10kgドラム式洗濯乾燥機は、“安いから我慢する家電”ではなく、“自分の暮らしに必要な機能を選ぶ家電”です。そこにこそ、いまの時代の空気があるのだと思います。

Gallery 【画像】ニトリの新「10kgドラム式洗濯乾燥機」のスゴみを写真で見る(21枚)
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滝田勝紀
滝田勝紀
VAGUE家電統括プロデューサー
モノ雑誌の編集に15年以上携わり『デジモノステーション』編集長を歴任。現在は家電スペシャリストとして、国内外の最新テクノロジーを長年取材。All About家電ガイドやMakuakeエバンジェリスト、楽天ROOM公式インフルエンサー(フォロワー56万人超)など幅広く活動する。海外取材経験も豊富で、欧州家電メーカー本社や世界最大級の見本市「IFA」への造詣も深い。また、Z世代向けメディア運営やPR会社経営の傍ら、インテリアスタイリスト窪川勝哉氏とのユニット「𝒾𝓃𝒞𝒶𝒹𝑒𝓃𝓏𝒶」で家電開発も手掛ける。機能とデザインの両面から、心地よい暮らしのあり方を提唱している。

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