VAGUE(ヴァーグ)

007のボンドカー「DB5」にワゴンがあったって!? アストン総帥デイビッド・ブラウン卿が作らせた60年前の「DB5シューティングブレーク」が高値落札 どんなクルマ?

紳士の遊び心が生んだ世界に12台しかない奇跡のステーションワゴン

 世界的なオークションハウス、RMサザビーズが2026年7月に開催した「ウッドコート・パーク・オークション」において、アストンマーティンの歴史の中でも極めて異彩を放つ、そして極めて希少なモデルが注目を集めました。それが、1966年式アストンマーティン「DB5 シューティングブレーク by ラドフォード(シャシ番号:DB5/2014/R)」です。

 映画『007』シリーズでジェームズ・ボンドの愛車として世界的に有名になった名車「DB5」をベースに、英国の名門コーチビルダーであるハロルド・ラドフォード社が優美なステーションワゴンへとコンバージョンを施した、わずか12台しか存在しない幻のファクトリー公認カスタムモデルです。

オークションに出品され、約1億8000万円で落札された1966年式アストンマーティン「DB5 シューティングブレーク by ラドフォード」Tom Gidden(c)2026 Courtesy of RM Sotheby's
オークションに出品され、約1億8000万円で落札された1966年式アストンマーティン「DB5 シューティングブレーク by ラドフォード」Tom Gidden(c)2026 Courtesy of RM Sotheby's

 この特別なモデルが誕生した背景には、当時のアストンマーティン会長であるデヴィッド・ブラウン氏のプライベートな不満がありました。

 熱心なスポーツマンであったブラウン氏は、普段からポロの競技機材や狩猟用の道具を愛車に載せて移動していましたが、美しいクーペボディのDB5ではそれらの道具が収まりきらず、さらに同伴する猟犬がコノリー製の上質なレザーシートをかじってしまうという悩みを抱えていたのです。

 そこでブラウン氏は、DB5のエレガンスや優れた走行性能を一切損なうことなく、高い積載力を備えた「シューティングブレーク(狩猟用ステーションワゴン)」の開発を指示しました。

 当時、アストンマーティンのファクトリーは通常のDB5クーペの生産に追われていたため、製造はロールス・ロイスやベントレーのカスタムなどで高い実績を持っていたハロルド・ラドフォード社へと委託されることになりました。

 ラドフォードによるモディファイは、フロントガラスから後ろのボディを丸ごと作り直すという非常に大がかりなものでした。

 DB5の特徴である超軽量な「スーパーレッジェーラ」のチューブラー製ルーフ構造を一度カットし、スチール製のカスタムフレームを組み合わせてルーフラインを後方までストレートに延長しています。リアにはガスダンパー付きの一体型ハッチゲートを新設し、後部座席を折りたたむことで広大なラゲッジスペースを生み出すことに成功しました。

 これほどの実用性を手に入れ、全長が市販モデルより約10cm伸びたにもかかわらず、その心臓部には4リッター直列6気筒のオリジナルエンジンがそのまま維持されました。最高速度はクーペ同様に240km/h(150mph)に達し、「世界最速の多目的車」として当時のセレブリティたちを魅了したのです。

 今回出品された個体は、シルバーのボディにグレーのウールツイードとブラックレザーを組み合わせたクラシカルな内装を持ち、ブラックの「Webasto」製フォールディング・パノラミック・サンルーフが備えられています。

 さらに、同一のエンジン番号(マッチングナンバー)を保持したオリジナルの状態を保っており、過去20年近くにわたり1つのファミリーの手で大切に維持されてきました。その間、105000ポンド(約2200万円)以上もの費用をかけた丁寧な整備が施された、非常に極上なコンディションのまま今回のオークションに姿を現しました。

 アストンマーティンの品格と英国的なカントリーライフのスピリットが見事に融合したこの至高の1台は、事前予想落札価格として80万ポンドから100万ポンドと案内されていましたが、コレクター間の熱い競り合いの末に、84万8750ポンド(日本円で約1億8000万円)で落札されました。

Gallery 【画像】これが世界で12台しか作られなかったアストンマーティン「DB5」のワゴンです。写真で見る(26枚)
シチズン「プロマスター」新作 “海の男”をうならせた頼れる1本

VAGUEからのオススメ

海と向き合い、自らを再起動する――プロセーラーが語る、シチズン「プロマスター」で“限界を超える”意味とは【PR】

海と向き合い、自らを再起動する――プロセーラーが語る、シチズン「プロマスター」で“限界を超える”意味とは【PR】

RECOMMEND