家電は最後に置くものではない。インテリアのプロ・窪川勝哉氏が軽井沢アトリエで実践した「空間から逆算する家電選び」とは?
エアコンを隠さず、壁の素材として見せる
家電とインテリアの関係で、最も難しいカテゴリーのひとつがエアコンです。大きな開口部や美しい左官壁を設けても、高い位置に白い箱が付けば、そこだけ設備として目立ちます。
高級住宅や宿泊施設では、格子やルーバーで隠す方法も見られます。ところが窪川氏は、エアコンを隠しません。
「隠しすぎると、吸い込みや吹き出しにもよくない。だったら、堂々と取り付けられる、見てくれのいいエアコンを選べばいいと思いました」
選んだのは、以前の住まいでも導入していたダイキン「risora」と、その前面パネルを多彩な素材表現から選べる「The Art Line」です。
メイン空間には「ヴィンテージレザー」。穴蔵のような建築イメージ、土を思わせる壁、ヴィンテージ家具の温かさに合わせました。

「超新築のピカピカした家にしたかったわけではありません。家電にも、少し温かみを加えたかったんです」
主寝室には「ツイードのセピアグレー」。ベッド、カーペット、寝具など、布素材が多い部屋だからこそ、エアコンにもファブリックを思わせる表情を与えています。
別の空間には標準色の「ブラックウッド」を採用し、黒い階段の金属やスイッチ類につながるシャープな質感を選びました。

ここで合わせているのは、単なる色ではありません。レザー、ツイード、金属という「触覚の記憶」です。
ダイキンのエアコンが、空気の質だけでなく、壁の表情まで選択肢として提供し始めたことに、家電の競争軸の変化を感じます。
キッチンの「線」をそろえるMieleと、音をオブジェにしたCactus
造作キッチンには、Mieleのビルトインオーブン「H 2465 B 」、4口のIHクッキングヒーター「KM 7201 FR」、45cm幅のビルトイン食器洗い機「G 5644 SCi」が収まっています。

「妻が料理好きですし、ほかの家でも使い慣れていました。複数の機器が並ぶなら、同じブランドでそろえたほうがラインも統一できます」
黒いガラスのオーブンとIH、ダークなセラミック天板、収納扉の水平線がつながり、食器洗い機の前面には造作家具と同じ面材を貼っています。家電を隠したというより、キッチン全体をひとつの面として整えた、と表現したほうが近いでしょう。
選定時にはデザインだけでなく、運転後にドアが自動で少し開く「AutoOpen乾燥(オートオープン機能)」も重視しました。

「東京へ戻るとき、運転後も閉じたままになるのは避けたかったんです」
軽井沢と東京を行き来する生活だからこそ、カタログ上の多機能さではなく、留守にする場面まで想像して選んでいます。
そして、このアトリエで最も象徴的な家電が、Sit Back & Relaxのトールボーイ型オールインワンスピーカー「Cactus」です。

砂漠に立つサボテンを着想源にした細身のフォルムには、CDプレーヤー、Bluetooth、ワイドFMラジオ、USB・RCA入力、ワイヤレス充電などを集約。底面の柔らかな光は間接照明になり、天面にはCDジャケットを飾れます。窪川氏自身がデザイン監修を担当した製品です。
「昔ながらのトールボーイスピーカーの形は好きなんです。縦長なので、設置場所もコンパクトで済みますし。その中に、いま必要な機能をまとめました」
ここで窪川氏は、空間に合う家電を選ぶ側から、空間に置きたくなる家電をつくる側へ踏み込んでいます。家具、照明、オーディオの境界を曖昧にし、一台の中へまとめる。Cactusは、このアトリエで実践されている考え方そのものを製品化した存在にも見えました。

家電メーカーは、これから「暮らしの景色」を競う
軽井沢の森のアトリエに置かれた家電は、ブランドもカテゴリーも異なります。それでも空間に一貫性があるのは、窪川氏が同じ判断基準で選んでいるからです。
目立たせる必要のない設備は背景へ退かせる。見せる家電は、色だけでなく、形や素材を周囲と関係づける。そして、そこで誰が何をするのかを考え、必要な機能を決める。
Blueairは、人が集う、眠る、仕事をするという時間から選ばれていました。AQUAの冷蔵庫は、食品を保存する箱であると同時に、キッチンに木を加える素材でした。ダイキンのエアコンは、空気を調整する設備でありながら、壁の表情をつくっています。Mieleは料理と留守の時間を支え、Cactusは音と光をオブジェへ変えました。
家電は、完成した部屋へ後から押し込む道具ではない。
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