知らなかった魚が、いつでも食べたい魚に。未利用魚サブスク「フィシュル!」が提供する新たなウェルネス料理の楽しみ方とは?
魚を食べる習慣を、無理なく取り戻す
魚にはたんぱく質をはじめ、種類によってビタミンやミネラル、DHAやEPAなどの脂肪酸が含まれる。
ただし、フィシュル!を健康食品や栄養補助食品として語るのは少し違う。魚種や部位によって栄養成分は変わり、味付けによって塩分なども異なるからだ。
それでも、ウェルネスという視点で見れば、フィシュル!には明確な価値がある。
最大のポイントは、魚を食べるまでの負担を減らしていることだ。
魚は食べたい。しかし、骨を取るのが面倒。生ごみのにおいが気になる。焼いた後のグリルを洗いたくない。仕事から帰ってから魚を捌く余裕はない。
健康に良いと分かっていても、調理の手間が食卓から魚を遠ざけている。
フィシュル!は下処理と味付けを済ませ、冷凍で届ける。商品によっては解凍してそのまま食べられ、炊き込みご飯やパスタ、サラダなどへ展開するアレンジレシピも用意されている。

「魚を食べてもらうには、魚を買って、捌いて、調理してください、ではハードルが高いんです。忙しい日は解凍してそのまま食べる。時間がある日は料理に使う。その人の生活に合わせて選べることが大事だと思っています」(円城寺氏)
円城寺氏の話から伝わってくるのは、魚を特別な日の料理にするのではなく、平日の献立へ戻そうとする姿勢だ。
ウェルネスは、栄養素の量だけで決まるものではない。
献立を考える負担が減る。肉料理ばかりだった食卓に魚が加わる。異なる魚種を食べることで、味や食感の幅が広がる。家族で魚の図鑑を眺め、会話が生まれる。
無理をせず、食事の選択肢が増えていく。その継続しやすさこそ、フィシュル!が暮らしにもたらすウェルネス価値だと感じた。
魚が変わる工場では、人の手が必要になる
福岡市内の加工工場では、複数のスタッフが大小さまざまな魚を包丁で処理していた。

大型魚の頭を落とし、うろこを取り、三枚におろす。別の作業台では、小さなフィレを一枚ずつ持ち上げ、骨や余分な部分を確認しながら形を整える。
多い日には10〜15魚種が届く。大きさも、身の硬さも、脂の状態も異なるため、一つの魚だけを大量に加工する専用ラインは使えない。
筆者はこれまで、冷蔵庫や炊飯器、エアコンなど、多くの家電工場を見てきた。最新の製造現場では、バーコードやセンサー、ロボットアームを使い、複数の製品を同じラインでつくる混流生産なども進んでいる。
しかし、魚は工業製品の部品とは違う。同じ魚種でも、一尾ずつ形が異なる。
どこまで切れば骨が取れ、どこを残せば食感がよく、商品としての歩留まりを高められるか。作業者は、包丁を持つ手の感覚で判断していた。

「魚を切る機械はあります。でも機械を使うには、魚をきれいな同じ形に整えなければいけません。そのために可食部を大きく切り落としたら、未利用魚を活用する事業なのに、新しいロスを生むことになります」(円城寺氏)
円城寺氏は、機械を導入すること自体を否定しているわけではない。
大きくて重い魚の皮を引く作業など、機械が人を助ける工程には取り入れる。一方、魚を見極める仕事は人が担う。機械の稼働率を上げるために商品をつくるのではなく、魚をおいしく、無駄なく使うために必要な道具を選ぶ。
その考え方は、製造業を長く取材してきた筆者にも納得できるものだった。
手仕事を残すために、データを使う
工場の一角に置かれたタブレットには、「調味液日報UIプロトタイプ」という画面が表示されていた。
フィシュル!では約40種類の味付けを扱う。どの調味液を、何パック分つくるのか。原材料を何グラム入れたのか。在庫はどこにあり、いつまで使えるのか。フィシュル!用なのか、OEM用なのか。

現在、円城寺氏を中心に、こうした製造情報をひとつにつなぐシステムを開発している。
「水産業界では、今でもFAXや紙の伝票が多く使われています。水を使う現場なので紙が便利だった事情もあります。でも、魚種が多くなるほど、紙だけでは誰が何を判断したのかが残りにくい。職人の技術をどう次の人へ渡すかまで考えると、情報の仕組みが必要になります」(円城寺氏)
デジタル化するのは、包丁を握る人の感覚ではない。

製造指示、在庫、調味料の投入量、歩留まり、期限、凍結、ラベル、出荷といった周辺業務だ。人が魚を見る時間を増やすために、情報を探したり、同じ内容を何度も紙へ書いたりする時間を減らしていく。
完全自動化ではなく、手仕事を残すためのDXである。
page
VAGUEからのオススメ
海と向き合い、自らを再起動する――プロセーラーが語る、シチズン「プロマスター」で“限界を超える”意味とは【PR】