ドラム式洗濯機は “乾かない”し“置けない”!? シャープがドラム式の課題に向かい合った結果とは
ペンギンの羽毛を応用した「バブルジェット洗浄」
今回、シャープが発表したのは、洗濯容量12kg/乾燥容量6kgの「ES-12X2」「ES-12P2」と、洗濯容量10kg/乾燥容量5kgの「ES-10L2」、洗濯容量8kg/乾燥容量4kgの「ES-8L2」の計4機種だ。
なかでも分かりやすい新機能が、12kgモデルに搭載された「バブルジェット洗浄」である。
シャープのドラム式は、これまでも微細な水滴を高速噴射する「マイクロ高圧洗浄」を特徴としてきた。今回は、そのシャワーノズルに、ペンギンの羽毛構造を応用した「ネイチャーテクノロジー」を採用した。
ペンギンの羽毛には、小さな突起が無数に並んでいる。この構造が空気を保持し、水中で細かな気泡を生み出すことにシャープは着目。
新型では、ノズル内部のパーツに同様の突起構造を設け、水流と空気を細かくせん断することで、微細な水滴と気泡を洗濯槽内へ高速噴射する。

ES-12X2/ES-12P2が噴射する微細な水滴は毎秒150万個以上。従来機ES-12X1の毎秒100万個以上から約1.5倍に増加した。これにより洗剤液にマイクロバブルを発生させ、繊維の奥の汚れを浮かせたうえで、高圧シャワーによって弾き飛ばす仕組みだ。

ただし、「泡が多いから汚れが落ちる」とだけ理解するのは正確ではない。
バブルジェット洗浄は、マイクロバブルで汚れを浮かせる作用と、微細な水滴をぶつける物理的な力、さらに「もみ」「たたき」「押し」「こすり」「はじき」という5種類の洗い方を組み合わせたものだ。
泡だけで洗うのではなく、汚れを剥がしやすい状態にして、水流と衣類の動きで取り除く。そこまで含めて新方式の価値を捉える必要がある。
生き物の「形」ではなく、働きを家電へ翻訳する
自然界の構造や生物の動きを工業製品に応用する技術は、生体模倣技術や「バイオミメティクス」と呼ばれる。シャープはこれを「ネイチャーテクノロジー」と名づけ、さまざまな家電に採用してきた。
重要なのは、生き物の外観をそのまま再現することではない。今回もペンギンの羽毛と同じ素材を使っているわけではなく、羽毛に並ぶ突起が水と空気を細かく分ける働きを読み解き、量産可能な樹脂製ノズルへ置き換えている。
これは事業づくりにも通じる。表面的に成功事例をまねても、同じ成果は得られない。
なぜその仕組みが機能するのかを分解し、自社の技術や製品に適した形へ翻訳して初めて、模倣はイノベーションになる。
一方、毎秒150万個という数字だけで洗浄力のすべては評価できない。衣類の汚れには、皮脂、泥、食べこぼし、化粧品などがあり、洗剤や素材、投入量によっても結果は変わる。
バブルジェット洗浄が日常のどの汚れで効果を発揮するのかは、実機で検証したいポイントだ。

ドラム式の満足度を左右する“乾かない”問題
バブルジェット洗浄は新製品を象徴する技術だが、生活者が実感しやすい進化は、むしろ乾燥にあるかもしれない。
ドラム式を購入する大きな理由は、洗濯物を干す作業から解放されることだ。しかし、パーカーのフードやポケット、ジーンズの厚い部分だけが乾いていないことが多々ある。
乾燥終了後に再運転したり、室内に干したりするのでは、洗濯から乾燥まで自動化した価値が薄れてしまう。
上位モデルのES-12X2は「ふわカラハイブリッド乾燥」を搭載する。ヒートポンプで衣類から出る湿気を除き、必要に応じてサポートヒーターで衣類を温める方式だ。運転開始時に温度・湿度センサーで衣類の乾きやすさを判別し、運転中も乾燥状態を監視。その結果に応じてヒートポンプとヒーターを制御し、乾燥ムラを抑える。
ドラム式の満足度を左右する“乾かない”問題
バブルジェット洗浄は新製品を象徴する技術だが、生活者が実感しやすい進化は、むしろ乾燥にあるかもしれない。
ドラム式を購入する大きな理由は、洗濯物を干す作業から解放されることだ。しかし、パーカーのフードやポケット、ジーンズの厚い部分だけが乾いていないことが多々ある。乾燥終了後に再運転したり、室内に干したりするのでは、洗濯から乾燥まで自動化した価値が薄れてしまう。
上位モデルのES-12X2は「ふわカラハイブリッド乾燥」を搭載する。ヒートポンプで衣類から出る湿気を除き、必要に応じてサポートヒーターで衣類を温める方式だ。
運転開始時に温度・湿度センサーで衣類の乾きやすさを判別し、運転中も乾燥状態を監視。その結果に応じてヒートポンプとヒーターを制御し、乾燥ムラを抑える。

ここでいう「AI制御」は、生成AIが自由に運転方法を考えるものではない。センサーの検知結果に応じ、事前に組み込まれたプログラムから適切な制御を選択する仕組みである。
洗濯~乾燥6kg時の消費電力量は、ES-12X2が590Wh、ES-12P2が700Wh。国内の乾燥容量6kgクラスで業界最高水準をうたう。
注目したいのは、「乾きにくい衣類を減らしながら省エネを目指した」ことだ。カタログ上の消費電力量が小さくても、乾き残りのために追加運転すれば、時間も電気も余計にかかる。本当の省エネとは、一度の運転で目的を完了できることまで含めて考えるべきだろう。
洗濯機だけでなくサニタリー空間も快適に
新型4機種は、乾燥時に発生する蒸気を機外へ放出せず、内部で循環させる「無排気乾燥方式」を採用する。
これは省エネだけの技術ではない。洗濯機を置く洗面脱衣室は、住宅の中でも広さが限られている場合が多い。乾燥運転のたびに高温多湿の空気が排出されれば、室内が蒸し暑くなり、壁や収納への湿気も気になる。
シャープの資料では、無排気乾燥時の周辺温度上昇は約1.5℃、湿度上昇は約0%としている。設置環境によって結果は異なるが、洗濯機単体の性能だけでなく、周囲の空間まで考えた技術として評価できる。
家電はカタログ上の数値だけで完結しない。熱、湿気、音、振動、手入れまで含め、住宅や暮らしと関係している。無排気乾燥は目立ちにくいが、毎日使い続けたときに効いてくる進化だ。
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