なぜ27億円にまで高騰!? 5台しか作られなかった63年前の「コルベット グランスポーツ」が米国オークションで“コルベット史上最高額”を更新した理由
米国モータースポーツを象徴する存在
2026年8月、米国カリフォルニア州モントレーで開催されたRMサザビーズ主催のオークションで、1963年型シボレー「コルベット グランスポーツ」が1870万5000ドル、日本円にして約27億円で落札されました。
RMサザビーズが事前に設定していた予想落札価格は1100万ドルから1300万ドルだったため、最終価格は上限を大きく上回る結果となりました。さらに、この落札によってコルベット史上最高額を更新しています。
なぜ、1台のコルベットがここまでの価格になったのでしょうか。
その最大の理由は、そもそも「普通のコルベット」ではないことです。
グランスポーツは、コルベットの生みの親のひとりとして知られるゾーラ・アーカス=ダントフの指揮によって、シェルビー・コブラなどに対抗するために開発された純粋なレーシングカーです。
しかも、製作されたのはわずか5台。そのうち今回落札されたシャシ003は、わずか3台しか存在しないクーペの最初の1台です。
市販車のスティングレイをベースにした単なる高性能仕様ではなく、軽量化のためにフレームやボディ、サスペンションなどを徹底的に作り直しており、標準的な1963年型コルベットが約3200ポンド(約1450kg)だったのに対して、グランスポーツは約1900ポンド(約861kg)まで軽量化されました。

さらに価値を高めたのが、そのレーシングヒストリーです。シャシ003はディック・ドーンによって1963年のSCCAで3度のクラス優勝を記録。その後、A.J.フォイトやジム・ホール、オーギー・パブストら、米国モータースポーツ史に名を残すドライバーたちがステアリングを握りました。
1963年のバハマ・スピード・ウィークにも参戦し、1964年のセブリング12時間ではクラス2位、1965年にもクラス3位を獲得しています。つまり今回の個体は、単に「希少な5台のうちの1台」なのではなく、実際にトップドライバーとレースを戦った個体なのです。
さらに現在のコンディションも評価されました。23年以上にわたって同じオーナーのもとで管理され、徹底したレストアを受けたうえで、1964年セブリング仕様のカラーリングに戻されています。
そして、もうひとつ見逃せないのが「米国で開催されたオークション」だったことです。
今回の舞台となったモントレーは、世界中のコレクターが集まる米国屈指のクラシックカー市場です。
2026年のRMサザビーズ主催モントレーオークションには39カ国から入札者が参加し、総売上は3億8000万ドルに達しました。100万ドル超で落札されたクルマは69台、500万ドル超が14台、1000万ドル超も6台に上っています。
つまり今回は、コルベットの価値を知り尽くした米国のコレクターに加え、世界中の富裕層が一堂に会する、極めて特殊なマーケットだったわけです。
しかも同じアメリカンレーシングカーであるシェルビー・コブラ・デイトナ・クーペが、グーディング・クリスティーズ主催のモントレーオークションで、直前に4290万ドル(約67億円)という、アメリカ車のオークション史上最高額で落札されたことも、グランスポーツへの注目を高めた可能性があります。
両車は1960年代の米国モータースポーツを象徴する存在であり、グランスポーツも「アメリカがフェラーリやシェルビーに対抗するために生み出したレーシングカー」という文脈で評価できます。
予想を大幅に超えた1870万5000ドルという価格は、単なる「希少なコルベット」という評価では説明できません。
5台しかない究極のコルベットであり、著名ドライバーによるレースヒストリーを持ち、さらに米国最大級のコレクターカー市場で競り合われたこと。そのすべてが重なった結果、今回のグランスポーツはコルベット史上最高額という新たな記録に到達したのです。
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