世界最軽量634gの次は“0.1mm”を詰める! FMVが「キーボードやマウスまで」本気で作る理由
0.1gまで削る――これがFMVという会社の“癖”なのかもしれない
2026年冬のFMV新製品を取材して、最初は正直、少々戸惑った。
新しいCPU、Copilot+ PC、AIアプリ、交換式バッテリー、新デザイン、5G対応、povoとの連携、さらにキーボード、マウス、ディスプレイまである。ネタが多すぎて、「今回のFMVは結局、何が一番新しいのか」がなかなか見えてこなかったからだ。
その中で、やはり一瞬で頭に残るのは「約634g」である。
14型ノートPCのFMV Note U「UX-L3」は、約634gという世界最軽量を維持する。その軽さは突然生まれたものではない。シリーズ登場以降、100以上の軽量化施策を積み重ね、コネクタ補強板金の形状を変えて0.6g、ヒートパイプを4mm短くして0.2g、フレキシブル基板を薄くして0.2~0.3g……。文字通り0.1g単位で重量を削ってきた。
ここまで来ると、もはや「軽いPCを作る」というレベルではない。

「十分軽い」で終わらない。FMVらしさは“その先”にある
普通なら「十分軽い」と判断する地点を通り過ぎて、さらにその先まで詰める。筆者 は長年、国内外の家電メーカーを取材してきたが、こういう開発には企業ごとの“性格”がかなり表れる。
ダイソンならモーターや流体力学を徹底して掘る。バルミューダなら体験価値から逆算する。ではFMVとは何なのか。
今回の製品群を見ていて、ようやくひとつの答えが見えてきた。
ユーザーが感じている小さな不便を見つけると、必要以上と思えるほど細部まで作り込んでしまう。
それがFMVというブランドの強さなのではないか。

PCメーカーなのに、なぜキーボードやマウスまで本気で作るのか
その仮説を強く感じさせたのが、新たに本格展開する「FMV Accessory」だった。
PCメーカーがキーボードやマウス、ディスプレイを販売すること自体は珍しくない。しかし、多くの場合はPCを補完する周辺機器という位置づけだ。
ところがFCCLは違う。
同社は「入力=Keyboard」「操作=Mouse」「表示=Display」をPCと切り離さず、PCを中心としたワークスペースそのものを設計するという考え方を打ち出した。

0.1mmを詰め、1億回打てるキーボードをつくる
象徴的なのが「FMV Keyboard X」だ。
狭いデスクでも使いやすいように、筐体周辺のスペースを0.1mm単位で詰める。一方で、日本語入力で重要なカーソルキーやキー配列は安易に削らない。さらに磁気スイッチ、ガスケットマウント構造、3段階のアクチュエーション調整、ラピッドトリガーまで搭載。磁気スイッチは物理接点を持たず、1億回以上の打鍵耐久をうたう。

マウスも「日本人の手」から作り始める
マウスも同様だ。
「FMV Mouse X」は、日本人の手の寸法データをもとに形状を検討。内覧会では、500人以上のデータを参照し、3Dプリンターによる試作を30回以上繰り返したという説明もあった。約70gという軽さだけではなく、親指が自然に届く場所へサイドボタンとホイールを配置し、センサー位置まで工夫している。
たかがマウス、と考えれば、ここまでやる必要はない。
しかし、634gのPCを作るために0.1gを追い込む会社なら、マウスを作れば握り心地をそこまで追い込む。キーボードを作れば0.1mmを追い込む。
製品カテゴリーが変わっても、やっていることは同じなのだ。

“旗型ディスプレイ”に見えた、日本メーカーらしい問題解決
個人的に今回最も気になった製品のひとつが「FMV Display V」だった。
特に面白いのが、画面を支柱の横に取り付ける「フラッグスタイル」である。横から見ると、確かに旗のように見える。
単なるデザイン上の奇抜さではない。
一般的なスタンドタイプでは、壁からディスプレイ前端まで約157mmの奥行きが必要になる。それをフラッグスタイルでは約99mmまで縮めた。さらに画面の高さを調整することで、下に最大16インチのノートPCを置くこともできる。
つまり発想の起点は、「日本の机は広くない」という非常に生活臭のある問題なのである。
今回FCCLは「日本の暮らしから考えるFMV」を掲げ、限られた住環境、通勤・通学、日本語入力、長期間の使用といった日本特有の利用実態を商品設計の起点に据えた。

「最新」より、まだ残る小さな不便を潰す
Note CにHDMI端子を搭載した理由も、まだ日本の学校や会社ではHDMI接続のプロジェクターが多く、変換アダプターを持ち歩くのが煩わしいというユーザーの声だった。
U59やNote Mではバッテリーをユーザー自身が交換可能にした。大学生なら3~4年次の就活や卒論のころに劣化したバッテリーを交換し、PCをメーカーへ預けることなく使い続けられる。
大画面のNote Aでは、Copilot+ PCという最新技術を搭載しながらDVDドライブも残す。FCCLの調査では大画面ノートユーザーの約7割がPCを5年以上使い、約30%が光学ドライブを重視しているからだ。
最新技術だけを見れば、どれも派手ではない。
しかし「実際にはまだ困っている人がいる」という事実から逃げず、ハードウェアで解決していく。この愚直さこそ、日本メーカーが本来得意としてきたものではないだろうか。

AI時代だからこそ「作り込み」が会社の価値になる
起業家として見ると、今回のFMVにはもうひとつ興味深いポイントがある。
AI PCの時代になると、CPUやNPU、OS、生成AI機能といった中核技術は、PCメーカーだけのものではなくなる。同じMicrosoftのWindowsを使い、同じIntel、AMD、Qualcommのプロセッサーを採用すれば、スペック表だけでメーカー独自の価値を作ることは以前より難しくなる。
実際、今回のFMVもNote Qを除くラインアップをAI PC化し、Note UではIntel、AMD、SnapdragonからCPUを選べる。
だからこそ筆者は、FCCLがアクセサリーまで手を広げたことに意味があると感じる。
AIそのものでは差別化しにくいなら、AIを使う「人間側」の体験を徹底的に磨く。
PCの重さ、キーの押し心地、マウスを握ったときの親指の位置、モニターが机を占有する奥行き、ACアダプターを鞄に入れたときの重量まで考える。
そう考えると、634gの世界最軽量PCと、0.1mmを追い込んだキーボード、30回以上試作したマウス、旗型ディスプレイは、すべて一本の線でつながって見えてくる。
世界最軽量PCの次にFMVが作り始めたのは、もう一台のPCではない。「PCを使う環境」そのものだった。
技術が成熟し、AIによってメーカー間の性能差が見えにくくなっていく時代だからこそ、「そこまでやるのか」と思わせる作り込みは、むしろ企業の大きな武器になる。
約634gという数字以上に、今回の新製品群から感じたのは、そのFMVらしい“執念”だった。
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