ズボラ万歳! 肉も魚も“裏返さない”、焼きそばも見張らない タイガー「グリシア」が変える“焼く”の常識
「焼く」が59%なのに、なぜ自動調理家電は煮込み中心だったのか?
「これは、めちゃくちゃいい!」。10月15日に開催されたタイガー魔法瓶の新製品発表会で、「マルチグリルクッカー GRISIA〈グリシア〉CLX-A400」を見て、率直にそう感じました。理由は明快。毎日の料理で最もよく使う「焼く・炒める」を、ほぼ機械任せにできるからです。
肉を焼く、魚を焼く、野菜を炒める、焼きそばを作る。タイガーが2026年9月に実施した調査(回答者728人)では、最もよく行う調理方法の約59%が「焼く・炒める」でした。ところが焼き料理は、焦がさないように見張り、火加減を調整し、ときには食材を裏返さなければならない。簡単そうで失敗もしやすい、実に厄介な調理なのです。

自動調理家電の市場が縮んだ理由は「日常使い」の壁にあった
発表会でタイガー魔法瓶の調理ブランドマネージャー、福富博史氏は、自動調理家電市場がコロナ禍から縮小傾向にあると説明しました。煮込み中心で日常のメイン料理を作りにくい、洗う部品が多い、置き場所がない。こうした課題が買い替えや新規需要を妨げてきたという分析です。
たしかに、便利でも週に数回しか使わない家電では、キッチンの限られたスペースを確保しにくい。炊飯器や電子レンジのように「毎日そこにある家電」になるには、普段の食卓で使う頻度の高さが欠かせません。

第4世代は「常識キャンセル期」。調理工程そのものを減らす
タイガーは自動調理家電の進化を4世代に整理し、2026年を「常識キャンセル期」と位置づけています。時短や自動かき混ぜの次は、コンロや包丁を使うという当たり前の工程そのものを減らす時代だというわけです。
そこで同社が選んだのが、家庭料理で頻度が高い「焼く」の自動化。目指すのは、単なる調理時間の短縮ではなく、調理中に人間が張りついていなければならない時間を減らすことです。

上下のヒーターで「裏返す」をキャンセルする
GRISIAの核心は、上部のカーボンヒーターと下部のワイドIHヒーターを組み合わせた両面焼き構造です。上部の「二往復カーボンヒーター」は約2秒で発熱。所定のグリルチキン調理条件では、ふた内側のガラス表面温度が約400℃に達します。これは食材の中心温度を示す数字ではありません。
下からはIHがインナーポットを加熱し、上からはカーボンヒーターが食材表面を焼き上げる。上下左右前後の6方向から包み込む「全包囲加熱」により、ひっくり返さずに香ばしさと火通りを両立させる仕組みです。

炊飯器のIH制御とトースターの高温加熱が出合った
筆者が家電スペシャリストとして注目したのは、タイガーが培ってきた二つの技術の融合です。炊飯器で磨いた細かなIH制御と、トースターで培ったヒーター技術。それを温度・蒸気・周囲温度などを捉える5つの高精度センサーで制御します。
本体には50種類の自動メニューと14種類の手動メニューを用意。約1万通りの制御パターンを生かし、グリル、煮込み、炒め、トースト、低温調理、ノンフライなど1台16役に対応します。ヒーターを覆う耐熱ガラスも、遠赤外線の効果を生かしながら汚れを拭き取りやすくする工夫です。

焼きそばは麺、野菜、肉を重ねて、あとは待つだけ
発表会で実演された焼きそばの作り方は、驚くほど簡単でした。インナーポットに麺を敷き、カット野菜を重ね、最後に豚肉を広げて少量の水を加える。フライパンのように肉から炒めたり、麺をほぐし続けたりする必要はありません。
この日の実演は3玉分を自動メニューで約12分。加熱後にソースを混ぜれば完成です。もちろん、食材の重なり方など基本的な注意は必要ですが、調理中の見張りや混ぜる作業がないだけで、心理的な負担はずいぶん軽くなります。

チキンは皮目がこんがり。野菜もまとめて調理
もう一品の「彩り野菜とチキンのぎゅうぎゅう焼き」では、じゃがいもやブロッコリーなどの野菜を並べ、その上に鶏肉を皮目を上にして置きました。異なる食材を一度に加熱し、完成品では鶏肉の皮に焼き色がついていました。
ただし、冷凍肉と常温野菜を一緒に入れる場合などは、加熱時間によって野菜に火が通りすぎる可能性もあるとのこと。万能をうたうのではなく、対応レシピや基本の分量を守って使うことが、おいしく仕上げる近道です。

「ズボラな人」ほど使ってほしい! 家事の手抜きが新市場を生み出す
筆者がGRISIAを高く評価したい最大の理由は、いい意味で「ズボラな人にぴったり」だからです。細かい火加減や裏返すタイミングを考えず、食材を入れてスタートすれば、あとは機械に任せられる部分が多い。料理に慣れていない人ほど、そのありがたさを感じるはずです。
料理の上達には経験が必要ですが、毎日の夕食を作るために、誰もが料理人のような判断力を身につける必要はありません。GRISIAは「上手に焼くための技術」を家電側に移し、人間に要求する作業を減らしてくれます。

洗う部品は内鍋ひとつ。後片付けまでラクにする
さらに素晴らしいのが、お手入れの簡単さです。毎回洗う部品はインナーポットだけ。ふたの内側はフラットなガラス面なので、汚れを拭き取ればいい。油煙に含まれる油分を受け止めるため、キッチンペーパーをセットする油キャッチフィルターも備えています。
自動調理で楽をしたのに、最後に細かなパーツをいくつも洗うのでは意味がありません。調理中だけでなく、片付けまで含めて人間の負担を減らす設計こそ、毎日使う家電には重要なのです。

家事は手を抜いて、その時間で子どもと遊べばいい
筆者は先日、子育て家電を取材した際にも書きましたが、毎日の家事なんて、どれだけ上手に手を抜けるかが大切だと思っています。特に料理は、家族がおいしく食べられるものを用意できるなら、そこに至るプロセスは正直どうでもいい。
火加減を見張る時間があるなら、子どもと遊んでもいいし、自分の趣味を楽しんでもいい。疲れているなら休んだっていいのです。家事を頑張ることと、家族を大切にすることは、必ずしもイコールではありません。
子どもが料理に参加しやすいという利点もありますが、高温になる調理家電なので、使用時には大人の見守りと安全への配慮が欠かせません。手を抜くのは面倒な工程であって、安全ではないのです。

AI家電ではない。でも「フィジカルAI的」な価値がある
最近、筆者が関心を持っているのが、現実世界で人間の作業を代行するフィジカルAIの進化です。GRISIAはAI搭載をうたう製品ではありません。それでも、センサーが状態を捉え、機械が熱を制御し、人間が担っていた判断や作業の一部を引き受けるという点に、通じる思想を感じます。
重要なのは「AI」という名前ではなく、人間がやらなくていいことをどれだけ機械に任せられるか。その結果、暮らしにどれだけ自由な時間が戻ってくるか。家電の価値を測る物差しも、そこへ移っていくのではないでしょうか。

コンロキャンセルを超えて、新しい調理家電市場は生まれるか
GRISIAには自動調理家電の新しい需要を生む可能性を感じます。料理好きのための高機能家電にとどまらず、料理が苦手な人、面倒くさがりな人、忙しい共働き世帯、子育て中の家庭まで対象が広がるからです。
2026年11月21日発売で、想定売価は税込4万9500円。決して安くはありませんが、焼き調理に加えてトーストや煮込みなどをこなすことを考えれば、複数の調理家電を集約する選択肢にもなります。もちろん、実際の使用頻度や置き場所、料理の好みは家庭ごとに異なります。
それでも、日常の「焼く」をここまで自動化する発想は魅力的です。かつてロボット掃除機が掃除機を自分で動かす常識を変えたように、GRISIAも調理中は火の前に立つという常識を変えるかもしれません。ズボラ万歳。家事はもっと手を抜いていい。しかも、おいしさまで諦める必要はないのです。
製品概要
製品名:マルチグリルクッカー GRISIA〈グリシア〉
品番:CLX-A400
カラー:マットブラック
発売日:2026年11月21日
価格:オープン価格(想定売価4万9500円・税込)
加熱方式:二往復カーボンヒーター+ワイドIHヒーター
調理機能:1台16役
自動メニュー:50種類
手動メニュー:14種類
温度制御:約1万通りの制御パターン
センサー:高精度センサー5つ
調理人数の目安:2〜4人分
主な機能:両面焼きグリル、全包囲加熱、低温調理、ノンフライ調理、トースト、リベイク、煮込みなど
付属品:インナーポット、専用クックブック
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