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「マセラティの黒歴史ビトゥルボ」が壊れても壊れても愛される理由

壊れても壊れても愛しい「ビトゥルボ」の系譜とは

 こうして予想以上のヒットを収めたマセラティ・ビトゥルボは、ピーク時には年産5000台以上のセールスを記録。経営危機に瀕していたマセラティのV字回復に大きく貢献するかたわらで、その好調を維持するべくファミリーを続々と増やしてゆくことになった。

  • ホイールベースを短縮したスパイダー。後期型は「スパイダー・ザガート」と改名された

●マイナーチェンジと信頼性回復に明け暮れたモデルライフ

 まず1983年には、ホイールベースを86mm延長した4ドア版「425」が登場する。425は、イタリア国内向けには2リッター(420と呼ばれた時代もあり)、海外向けには2.5リッターのV6ツインターボを搭載する一方、ダッシュパネルのデザインを刷新。有名なアーモンド型の金時計と、イタリアを代表するニットブランド「ミッソーニ」製のシート生地も採用していた。

 また、1984年にはビトゥルボよりもひと回り大柄な4座クーペ「228」も誕生。425のプラットフォームを流用し、後に輸出向け「222」や「カリフ」にも搭載される2.8リッター版ユニットを先行採用し、旧世代の「キャラミ」に代わる高級クーペと期待された。

 さらに同じ1984年にはビトゥルボ系初のオープンモデル「ビトゥルボ・スパイダー」も設定される。カロッツェリア・ザガートが架装するボディは、2シーターのプロポーションをスタイリッシュなものとするために、425とは逆にホイールベースは2400mmに短縮されていた。

 ところがセールス的な成功やファミリー増殖の一方で、この時代のビトゥルボとその係累は慢性的な品質問題に悩まされ、近年では「マセラティの黒歴史」とまで呼ばれている信頼性の低さから、デビュー時の人気は下降を余儀なくされてしまう。

 実は筆者自身も「E」や「ES」などのグレード名のつかない初期型、1984年国内登録の2.5リッター版ビトゥルボを所有していた時期が1年ほどあるのだが、8年落ちの中古車として手に入れた段階から、リア・クォーターウインドウの窓枠やその周囲、あるいはノーズ周辺にも錆が進行し、一部は腐食まで起こしてしまっていた。

 しかもV6エンジンのヘッドガスケットが破損し、シリンダーに冷却水が侵入してしまったところでギブアップ……、という苦い思い出もあるので、今や語り草となっているこのクルマの信頼性については、痛いほどに理解しているつもりである。

 とはいえ、当時のマセラティとて手をこまねいていたわけではなく、1980年代後半の世界的好景気を迎えて、ビトゥルボ系に大きな改良を施すことになった。

  • 「430」および「222」で提示された新しいインテリアは、2代目ギブリや4代目「クアトロポルテ」などにも踏襲された

 1986年には電子制御インジェクションを採用した「ビトゥルボSi」に代替わりしたのち、2年後の1988年には「ビトゥルボ」名の消滅した「222」に進化する。

 222では、直前に登場した4ドア版「430」ともどもグリルの形状が丸みを帯びたほか、それまではビニールレザーで覆われていたダッシュパネルがアルカンターラ張りとされるなど、インテリアのクオリティも向上。メカニズム面でも「メッカニカアッティーヴァ」、「レンジャーデフ」などの新機軸を採用し、輸出仕様222Eのエンジンは2.8リッターにスケールアップされるなど、変更は多岐にわたるものとなった。

 そして1992年に、ビトゥルボ/222系をベースとしつつもボディを完全にリニューアルし、完全なクーペスタイルとした2代目「ギブリ」が登場。さらに1994年には、430系をベースにマルチェッロ・ガンディーニのデザインによる先鋭的な4ドアボディを組み合わせた「クアトロポルテIV」などの後身モデルが誕生したことにより、あとを譲るかたちでフェードアウトすることになったのだ。

* * *

 今なお「世界一壊れるクルマ」なる不名誉な称号を拭い去れないでいるマセラティ・ビトゥルボ・ファミリーだが、かつて初期型ビトゥルボで手痛い目に遭ったはずの筆者を含めて、これら一連のマセラティを本気で嫌う人は、少なくともイタリア車愛好家のなかでは皆無に等しいような気もしている。

 マセラティ・ビトゥルボとその係累はいかにも1980-90年代イタリアンらしい、なんとも愛すべきクルマたち。そしてその特質は、これまで伝え聞いてきたアレッサンドロ・デ・トマソその人の気質をも思わせる気がするのである。

Gallery 【画像】生誕40周年を迎えた「ビトゥルボ」を振り返る(14枚)
「2段あたため」レンジがすごすぎるっ!? 最新レンジを徹底紹介

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