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「ザガート自ら手がけたレプリカ」見たことないポルシェ「356サンクション・ロスト」は6000万円オーバーの価値あり

失われたポルシェ「356ザガートが復活! オークションの評価はいかに?

 今回RMサザビーズ「LONDONオークションに出品された1960年型ポルシェ「356カレラ・ザガート・スピードスター“サンクション・ロスト”」および1960年型ポルシェ「356カレラ・ザガート・クーペ“サンクション・ロスト”」は、いずれも約60年前の年式を標榜しているものの、実際に製作されたのは数年前。2010年代後半のことである。

  • ポルシェ「356」もザガートの手にかかるとシャープで伸びやかなラインとなる(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's

●失われたザガート製ポルシェ、その復活のストーリーとは?

 2009年に逝去したエリオ・ザガートの息子で、辣腕ビジネスマンとして知られるアンドレア・ザガート氏の主導によって、ベース車両となるポルシェ356のコンポーネンツを集め、クロード・ストールズのため1958年に製作されたオリジナル車両を忠実に再現することになった。

 このプロジェクトは、もともとアメリカ人のコレクターのオーダーによるものだったそうだが、ザガートでは9台の限定生産を決定。クロード・ストールズ車を撮影した1958−1959年当時の写真や図面をスキャンした上で、現代的なフォトメトリックの過程を通じて、新造のアルミ製ボディを作成できるデジタルフォーマットを作成した。

 そしてこれらの9台について、ザガートでは一般的な「レプリカ」という表記を使わず、失われたモデルを公式に蘇らせるというコンセプトから「サンクション・ロスト(Sanction Lost)」と名づけた。

 この命名法は1990年代初頭に、アストンマーティン社のお墨つきのもと、「DB4GTザガート」を4+2台のみ復活させた「サンクションII/III」の故事にならって……、ということであろう。

 ちなみに筆者の記憶が正しければ、この9台のスピードスター「サンクション・ロスト」のうちの少なくとも1台は、日本国内の愛好家のもとに納車されている。加えて1959年当時はデザインスケッチのみが存在していたという、クローズドボディのクーペ版も9台が製作されることとなった。

  • リアフェンダーから伸びるレッドに塗られたフィンが特徴的だ(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's

 今回のオークションに出品されたザガート・スピードスター「サンクション・ロスト」は、1960年型のポルシェ「356Bクーペ」をベース車両として使用して、2016年に完成した。一方ザガート・クーペ「サンクション・ロスト」は、同じく356Bクーペの1961年型をドナーカーとして、2017年にザガート製のアルミボディを架装している。

 また、総計18台が製作されたポルシェ356ザガート「サンクション・ロスト」のうち、3台のみが希少なフールマン4カムユニットを搭載する「カレラ」仕様として作られたとの由だが、今回のオークションに出品されたスピードスター/クーペともに、そのカレラ仕様。

 極めて精巧かつ複雑なメカニズムで知られるフールマン・ユニットは、クラシック・ポルシェの分野では世界的に著名なデンマークのスペシャルショップ「ピーター・イヴェルセン」に委ねられたものという。

 この2台のポルシェ356ザガート「サンクション・ロスト」は、11月7日の競売ではともにビッド(入札)が伸び、スピードスターは45万5000ポンド、日本円換算で約6975万円。クーペは42万6875ポンド、すなわち約6544万円で無事落札となった。

 個体そのもののヒストリーはあくまでスタンダードの356Bであり、事実上の新造であるエンジンは、当然ながらマッチングナンバーではない。

 それでもこれだけの高値がついたのは、ファンの間では崇拝の対象であるザガートが「正しい様式」で製作したポルシェ356だったから、ということに尽きるようだ。

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