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フェラーリの大変革完了間近! 静かな跳ね馬「SF90ストラダーレ」を飼うにはオーナーの意識変革も必要だった

静かなフェラーリは果たして価値があるのか?

 都心のとあるビル。地下4階から出発したが、密閉された空間を震わせるような音がしない。いななきのない跳ね馬の通過に、パーキングの利用者たちは一様に怪訝な表情をみせる。電気自動車? フェラーリの? などという会話が容易に想像できてしまいそうだ。

 面白いことに、これがまた以前のフェラーリ試乗ではなかった類の、つまりまるで別種の快感を呼び起こす。筆者はその昔、都心の閑静な住宅街の低層マンションに住んでいたことがあって、地下の駐車場に爆音系のモデルを飼っていたことがあるけれど、週末のイベントに向かうべく早朝にエンジンを掛けるということが苦痛でならなかった。深夜の帰宅も同じ。そこから解放されるだけでも有難い。

アセット・フィオラーノはサーキット走行のためのパッケージオプション。カーボンパーツなどの採用で、約30kg軽量化される(C)タナカヒデヒロ
アセット・フィオラーノはサーキット走行のためのパッケージオプション。カーボンパーツなどの採用で、約30kg軽量化される(C)タナカヒデヒロ

●1週間共にしてわかった静かなフェラーリの恩恵とは

 実際、1週間乗ってみて、静かなフェラーリの恩恵を存分に味わった。自宅の駐車場への出入りはもちろん、夜に友人宅へ乗りつけたときもご近所に迷惑をかけることはなかっただろうし、ホテルエントランスでの送迎もスマートだった。

 多くの人が無音に驚いてくれて、なかには期待を裏切った方もいらっしゃったとは思うが、概ね静かなフェラーリは歓迎される。そういう世の中に、もうすでになっているのだ。自分自身にのみ聞こえるサウンドならどんな音でも勝手に聞けばいいのだけれど、喜ぶ人がいるからといって爆音を強制的に聞かせるような行為は今やスーパーカーオーナーそのものの品位を問う行為となった。

 ハイブリッドモードで走るSF90は、街中でも峠でも、そして高速道路でも本当に静かだ。正直、エンジンが掛かってもドキドキすることはない。もはや官能サウンドとはいえない。だからむしろできるだけ電気を使って走りたくなるし、目的地での静かな走りのために効果的な使い方を考えたくなるし、もっと充電したいとまで思ってしまう。間違いなく、これまでの跳ね馬とは違うアピール力を備えていた。

 高速道路のロングドライブにはマネッティーノのWETモードが最適だ。フェラーリのミドシップカーというと、「BB」や「テスタロッサ」を除けばGTはどちらかといって不得意分野だった。それがどうだ。ドライバーを妙に刺激することなく、実に淡々と走るではないか。ハンドルがずしりと重くなり、ノーズが動きたがらない。低重心も効いて、路面ビタビタの安定感たっぷりなクルージングを披露する。

 それでいて、いざ踏み込めば十分に周りをリードできるポテンシャルをもちろん秘めている。時おり気分転換にモードをRACEに変えて楽しんでみたりはするものの、すぐに得心してWETへと戻りたくなってしまうのだ。1000馬力に達するマシンだとはまるで思えない、洗練された走りをみせてくれた。

 それじゃ、エンジンと電気モーターの最強ペアダンスのお楽しみはどうするんだって? 流石に1000馬力を公道で解放するわけにはいかない。けれども少しくらい試してみたい。空いた頃合いを見計らってeマネッティーノをコルサにセットし、踏んでみた。

 まずはリアのモーターによってアシストされ、まるで大排気量自然吸気エンジンのようにシームレスでパワフルな加速をみせる。シフトチェンジの直後など内燃機関の不得意域をモーターのトルクがカバーしていて、実に洗練された加速フィールだ。5000回転を過ぎたあたりからはフロントモーターも駆動して4WDとなる。もうそこからのフィールは劇的をとおり越して恐怖さえ感じるものだった。

 ひとたびその実力を知ってしまえば、もうそれ以上、試す必要もなくなるというものだ。行儀の悪い「プリウス」も、せっついてくる「プロボックス」も、横暴な「アルファード」も気にならない。跳ね馬、喧嘩せず。ハイブリッドモードに戻して、走行車線をゆっくりクルージングしたくなる。随分と従順で洗練された馬というわけだった。

 そんなフェラーリなど意味がない。そうおっしゃる向きもまだまだたくさんおられるだろう。そこは価値観の違いというもので、新しい世界の扉を開こうとしているフェラーリを拒否したって一向に構わない。90年代の「F355」がベラボーに高い中古車相場になっていることをみれば、そういう人は依然として多いのだろう。

 けれども1週間、SF90と付き合ってみて思ったことは、ひとつ。これからのスーパーカーはまさしくこの道を歩む。なんならBEVのフェラーリだって十分に成立すると確信した。

 フェラーリにしたところで、エンジンが全て、というものでもなかった。それを教えてくれるのがSF90だった。今後の電動化にも期待できそうだ。

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