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マツダのキーパーソンが証言「CX-60」はなぜプレミアム路線、マルチシリンダー、大排気量を選んだのか?

ライバルと互角に戦うための後輪駆動ベース

 上級の仕立てとなる内外装デザインも話題を呼んでいるCX-60だが、ハイライトはやはりメカニズムだ。

 ラージ商品群が縦置きのパワートレインを採用したのは、「ライバルと位置づけるプレミアムブランドと横並びで比べた際、競争力があり、それでいて将来の環境性能や安全規制にも対応できるよう、理詰めで検討した結果です」と語るのは、車両開発・商品企画を担当し、商品本部長を務める執行役員の松本浩幸さん。

 確かに運動性能を考慮した場合、マツダの選択は理に適っている。後輪駆動ベースのクルマは前後の重量バランスに優れる上、発進時にリアタイヤへ荷重が移動するというクルマの基本原理を考えれば、荷重の掛かる後輪へ駆動力を伝えた方が、ムダなく効率的に走らせられる。大パワー&大トルクとなるラージ商品群のモデルであればなおさらだ。

 そこで気になるのは、縦置きパワートレインを採用する新シャシの開発にて莫大なコストを投じた結果、車両価格が跳ね上がるのではないか、ということ。しかし松本さんは「すべての領域でモデルベース開発を浸透させて試作車の数を減らすなど工夫したことで、ラージ商品群の開発費は前世代のモデルに比べて25%低減できています」と胸を張る。まだ明らかにされていない正式価格の発表が楽しみだ。

ラージ商品群が縦置きのパワートレインを採用したのは、「ライバルと位置づけるプレミアムブランドと横並びで比べた際、競争力があり、それでいて将来の環境性能や安全規制にも対応できるよう、理詰めで検討した結果」だという
ラージ商品群が縦置きのパワートレインを採用したのは、「ライバルと位置づけるプレミアムブランドと横並びで比べた際、競争力があり、それでいて将来の環境性能や安全規制にも対応できるよう、理詰めで検討した結果」だという

 一方、パワートレインは、先行して発表された欧州仕様が2.5リッターの自然吸気4気筒エンジンに136psの高出力モーターを組み合わせたPHEV(プラグインハイブリッド)をメインとしていたのに対し、日本向けは48Vで駆動するモーターをプラスしたマイルドハイブリッド版の3.3リッター直列6気筒ディーゼルターボを前面にアピールする。

 しかし省燃費のディーゼルターボとはいえ、イマドキ3.3リッターの直列6気筒エンジンなど時代錯誤にも思える。ところがこの設定は、「ユーザーの上級志向に応えるなら4気筒より6気筒、その方がプレミアムなイメージが強いし……」なんて安易な考えから導き出されたものではない。開発陣によると、あくまで理詰めで選択された数値だという。

 マツダの開発陣は、同社のクルマづくりに一貫する「ドライバーの意のままの走り」を実現するには、車両重量が2トン前後となるCX-60の場合、最大トルクが550Nmは必要との結論に達した。その上で、環境性能を高次元でバランスさせるには、3.3リッターがベストの排気量だと導き出したという。

 もちろん、ターボチャージャーの過給圧を高めれば、より小さな排気量でも550Nmを発生させることができる。しかしそうすると、燃費や排出ガス性能の悪化が避けられない。さらに、3.3リッターがベストな排気量だとしても、それを4気筒で成立させるには1気筒当たりのシリンダー容積が825cc前後となるため、燃焼効率や冷却損失、ガソリンエンジンとの部品や技術の共用化などを考えると都合が悪い。その点、3.3リッターの直列6気筒なら1気筒当たりの容積が550cc前後となり、さまざまな課題をクリアするのに好都合だったというのである。

●必然だった大排気量6気筒エンジン

 一方、CX-5などに積まれる2.2リッターディーゼルターボと同じ手法を用いれば、3.3リッターでは675Nmを得られる計算になる。しかし、CX-60に搭載される新しいディーゼルターボは、トルクをあえて550Nmに抑えてきた。「実はこれが、燃費とクリーンな排出ガスをクリアするためのポイントなのです」と話すのは、パワートレイン開発と統合制御システムの開発を担当する執行役員の中井英二さん。

 トルクを厚くするには、燃料をシリンダー内により多く噴射してやる必要がある。しかし、燃料を過不足なく燃やすためには、噴いた燃料に見合うだけの空気が必要となる。その点、新しい3.3リッター直6ディーゼルターボは最大トルクを550Nmに抑えることで「シリンダーに送る空気の量に余裕が生まれ、燃料と空気がよく混ざる環境をつくることができました」(中井さん)という。これにより、理想に近い燃焼状態を追求でき、燃費と排出ガス性能の良化にもつながった。

マイルドハイブリッド仕様の3.3リッター直列6気筒ディーゼルターボは、日本仕様の社内測定値で最高出力254ps、最大トルク550Nmを発生。あえてトルクを控えめにすることで、燃費とクリーンな排出ガスも実現できた
マイルドハイブリッド仕様の3.3リッター直列6気筒ディーゼルターボは、日本仕様の社内測定値で最高出力254ps、最大トルク550Nmを発生。あえてトルクを控えめにすることで、燃費とクリーンな排出ガスも実現できた

 さらに、大排気量エンジンが苦手な低回転域での燃費効率を向上させるべく、マイルドハイブリッド機構をプラス。その威力は絶大で、カタログ記載のWLTCモードにおいて、1.8リッター4気筒ディーゼルターボを積む“Bセグメント”SUVのCX-3と同等の数値(19.0km/L)をマークするという。この優れた燃費には、中井さんが開発を指揮した低抵抗のトルクコンバーターレス8速ATも有効に働いていることは間違いない。

 一見すると、時代遅れの感もある大排気量の6気筒エンジンを採用するCX-60。しかし、モーターのアシストを得て低回転域から力強さを発揮するCX-60の3.3リッター直6ディーゼルターボは、重量級SUVを強力かつ効率よく走らせるための必然だったのである。

Gallery 【画像】独創のアイデアを形にしたマツダ「CX-60」の日本仕様を写真で見る(16枚)
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