早くも受注停止に! 爆発的人気の日産新型「フェアレディZ」は日本が世界に誇るスポーツカー文化の象徴
新型フェアレディZは超一級品のスポーツカー
日産「フェアレディZ」が14年ぶりに新型へと刷新された。爆発的な人気と昨今の情勢を踏まえて受注が一時停止となるなど、話題に事欠かない注目の1台だ。

新型フェアレディZは、車両型式名がZ34型のまま(正確にはRZ34型)であることを根拠に“ビッグマイナーチェンジ”とする記述もあるが、それは利益を出すことが難しいスポーツカープロジェクトで日産社内の承認をとるための“方便”であり、実際には内外装、エンジン、トランスミッション、サスペンション等々、8割以上のパーツを新設計した完全なる新型である。
実際、乗ってみると、新旧モデルは完全に別モノだ。なかでも飛躍的に向上したのがエンジン性能とボディ剛性。これにより先代のあらっぽさは見事に消え去り、洗練された乗り心地と高度な操縦安定性、目の覚めるような速さ、そして最高のエンターテインメント性を備えた現代的スポーツカーへと進化した。歴代Zへのリスペクトを感じさせるデザインも秀逸だ。これはもう贔屓(ひいき)目なしに「世界に誇れる超一級品のスポーツカー」だと断言できる。
新型フェアレディZの魅力を語りはじめたらいくらでも語れるが、詳しい車両解説と試乗レビューは先に掲載した記事を読んでいただくとして、今回は新型Zが日本の自動車産業にもたらす文化的意味合いに焦点を当ててレポートしていこう。
●スポーツカーはまさに自動車文化の産物
“乗用車の終わるところにはじまり、レーシングカーのはじまるところに終わるクルマ”。こいつを古典的スポーツカーの定義とするならば、僕の考えるスポーツカーは少々異なる。レーシングカーの唯一にして究極の目的は先頭でチェッカーフラッグを受けることであり、いくらスタイリッシュでも勝てないマシンに価値はない(勝ちつづけているうちにカッコよく見えてくることは往々にしてあるが)。
それに対し、スポーツカーの存在理由はオーナーをワクワクさせることにある。たとえサーキットでのラップタイムが遅かろうと、そんなことは大した問題じゃない。重要なのはルックスやドライブフィールにどれだけのエンターテインメントが込められ、それがドライバーをどんな気分にさせてくれるか、なのである。
そう考えると、スポーツカーの価値がはっきりと見えてくる。芸術や娯楽など、生命を維持していく上ではとくに必要のない、しかし、もっとも人間らしい営みを“文化”と呼ぶのなら、スポーツカーはまさに文化の産物だ。地をはうような低い車体と強力なエンジンの目的は、ただただドライバーを歓喜の渦に巻き込むこと。そのためだけに、多くの人々がありったけの知恵を注ぎ込むのだから、考えようによってはこれほど文化的な乗り物はない。フェラーリ、ポルシェ、アストンマーティン、シボレー「コルベット」といった世界の名だたるスポーツカーが、モータリゼーションをリードし、自動車文化を育んできた西欧諸国から輩出されているのはこの文脈で説明できる。
日本はどうか。諸説あるが、日本初のスポーツカーといわれているのは、いまから70年前、戦後間もない1952年に発売された「ダットサンスポーツDC-3」だ。開発のきっかけになったのは「たとえ、もうからなくても自動車メーカーにはスポーツカーが必要だ」という考えだったという。これを主張したのが、後にフェアレディZの生みの親として知られる初代の米国日産社長、片山豊氏である。
1960年代に入ると、日本のスポーツカー文化は本格的に花開く。1964年にはホンダ「S600」、1965年にはプリンス「スカイライン2000GT」、トヨタ「スポーツ800」、ダットサン「フェアレディ1500(SR311)」、1966年には、ホンダ「S800」、1967年にはトヨタ「2000GT」、マツダ「コスモスポーツ」、1969年には日産から「スカイライン2000GT-R(ハコスカ)」と初代フェアレディZが登場するのだ。その後、1980年代の末以降には、日産が「スカイラインGT-R」、ホンダが「NSX」、マツダが「(サバンナ)RX-7」に「ロードスター」など、日本の自動車メーカーは常にスポーツカーをつくりつづけてきた。
ところが、環境問題や厳しさを増す騒音規制、SUVブームといったいくつかの外的要因によって、スポーツカーは冬の時代を迎えつつある。主だったところだけでも、メルセデス・ベンツ「SLC」、アルファロメオ「4C」、ロータス「エリーゼ」、「エキシージ」が生産を終了。アウディも「R8」と「TTクーペ」に次期モデルがないことをアナウンスしている。日本勢もNSXが販売リストから落ち、GT-Rも現在のところ受注がストップしている。
スポーツカーと分類することに異論はあるかもしれないが、ハッチバックに高性能エンジンを搭載したいわゆるホットハッチも減少傾向にある。このように、フェラーリ、ランボルギーニ、マクラーレン、ポルシェといったスポーツカーメーカーを除くと、購入できるスポーツカーの選択肢はかなり少ないのが現状だ。クルマを文化ととらえた場合、こいつはかなり寂しい状況である。
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