ホンダのキーパーソンが語る! 新型「シビックタイプR」はなぜ困難な情勢下でも開発を止めなかったのか?
VTECターボエンジンはさらなる出力アップを達成
新型シビックタイプRのエンジンは、先代に搭載された2リッターの“VTECターボエンジン”の骨格をベースに、ターボチャージャーなどを刷新。最高出力は従来の320psから330psへ、最大トルクは同400Nmから420Nmへそれぞれ向上させている。

ちなみに、出力アップを果たした心臓部に対応すべく、フロントグリル開口部の面積を大きくしたり、ラジエーターの有効開口面積を先代比で48%拡大したり、ボンネットに設けたフードベントから熱を排出するエアフローレイアウトを採用したりと、冷却性能の向上を図っている。
一方、新型シビックタイプRは、コーナリング時の限界性能やブレーキフィーリングなど、走りに関するあらゆる部分の性能が磨き上げられている。
サスペンションには、先代モデルと同様、電子制御式のショックアブソーバーをセット。タイプRといえば、かつては快適性を捨ててストイックに速さを求めた硬い足が定番だったが、最新モデルはスイッチ操作でコンフォートな乗り心地に切り替えることができる。
柿沼さんは「最新のタイプRは乗り手を選ばない“第2世代”のタイプRであり、乗り手を選ぶ(運転しづらくクセがある)スーパーカーを誰もがドライブできる存在としたことに意義がある」と語る。
このほかシビックタイプRは、究極のシフトフィールを目指してシフトレバーの構造を新設計したり、クラッチのフライホイールを軽量化することでレスポンスを向上させたり、エキゾースト系の工夫によって駆動力レスポンスに呼応する気持ちのいいエンジンサウンドを実現したりと、フィーリング面においても数々の進化を果たしている。
●“量産FF車最速”の称号奪回に期待
そうした性能面とは関係ない話だが、新型シビックタイプRにはオーナーを喜ばせるための演出が盛り込まれている。それは、真っ赤なフロアカーペットの復活だ。
かつてタイプRといえば、赤いフロアカーペットというのが“お約束”だった。近年、そのお約束は姿を消してしまっていたが、新型シビックタイプRで見事に復活を果たしたのだ。ドライバーを高揚させ、普通のクルマとはひと味違うことを直感的に伝えてくるこの演出は大歓迎。やはりこれぞ、タイプRのインテリアだ。
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意外に知られていない事実だが、グローバル市場で4万7200台を売り上げた先代シビックタイプRは、歴代のタイプRの中でもっとも多くの販売台数を記録したモデルであり、北米市場では日本の約3倍の台数を売り上げた。おそらく新型シビックタイプRは、世界的なスポーツカー人気の高まりを受け、先代モデルを超える人気を得ることになるだろう。
そしてもうひとつ、新型シビックタイプRで楽しみなのが、市販車開発の聖地とされるドイツ・ニュルブルクリンクでのタイムアタックだ。現在、ルノー「メガーヌR.S.」が持っている“量産FF車最速”の称号を奪回することを期待したい。そのために柿沼さんをはじめとする開発陣は「困難な状況下でも開発を止めず、己と向き合った」のだから。
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